第66話 貰える領地について調べよう
さて、叙爵の儀を終えた僕は、まずは図書室に向かう。
これから行く事になるであろう。場所の地形、特産、周辺状況を調べないと思ったからだ。
で、図書室に着くと地図と資料を探す。
「ええと、この国の地図と、ターバクソンの地形を記した資料っと・・・・・・」
僕は図書室に入り探していたら、ミルチャさんが居た。
「あれ、ミルチャさんじゃないですか。お久しぶりですね」
「え、ええ、おひさしぶりね」
うん? 何か挙動不審だけど大丈夫かな?
「ミルチャさんはここで何をしていたのですか?」
「わたし、わたしは、・・・・・・・し、仕事に使う資料集めに」
「ああ、そうなんですか。大変ですね」
ここ図書室は結構広い。だから、欲しい資料を探すのも大変だろうな。
「そう言えば、男爵の位を授かったとか、おめでとうございます」
ミルチャさんにおめでとうと言われて、僕は素直に喜ぶ。
「ありがとうございます」
「領地は貰えたと訊きましたが。何処を貰ったのですか?」
早耳だな。それとも、異世界人が爵位を貰ったというのは珍しいから広まったのかな?
いずれ、分かる事だし、隠す事でも無いので、ミルチャさんには文字とか教わったので言ってもいいだろう。
「貰った領地はターバクソンです」
「・・・・・・・・・・・ターバクソン?」
目をパチクリさせながらミルチャさんは聞いてきた。
「はい。ターバクソンです」
「・・・・・・あの僻地で、亜竜が多く生息している事が唯一の有名な所の・・・・・・」
ああ、叙爵の儀に参列していた人達がすっごい辺鄙な所だと言っていたけど。
「イノータ様。正直に申し上げますが、あのような所を貰うくらいなら、領地は返還された方が良いと思います」
「そうなのですか?」
「はい。何せ亜人族の領地に近く、領地の殆どが山という所です。昔は金やら銀やらとれたそうですが、今は廃坑になって久しく、亜竜が多く生息している事以外特に名産と言える物がない土地です」
「ふむふむ。つまり、鉱山はあったのですね?」
「はい。廃坑になったそうですが」
「そうですか。じゃあ、色々と出来そうですね」
「はぁっ⁉」
何を言っているんだこの人みたいな顔で、僕を見るミルチャさん。
さて、話しを聞いて出来る事の一つが分かった。他にも出来る事を知る為、資料を探して調べないと。
「じゃあ、資料を探しますので、失礼しますね」
僕は一礼して資料を探す。
呆然としていたミルチャさんが途中から気を取り戻したのか、手伝ってくれた。
何でも「どんな事をするのか気になりました」と言って。自分の仕事もあるのに手伝ってくれるなんて、良い人だな。
そう言えば、一応貴族になったのだから家臣とか必要だろうな。
そこの所は屋敷に帰ったら侯爵と相談しよう。
僕は集めるだけ集めた資料を持って、屋敷に向かう。
流石に王都に屋敷は持っていないので、侯爵の屋敷だ。
馬車の停留所に行くと、ビヒモンさんが馬車の傍に立っていた。
僕を見つけると、一礼する。
「お待ちしておりました」
「すいません。資料集めに手間取って」
「いえ、では屋敷に向かいましょう」
馬車の扉を開けくれたので、僕が入る。
ビヒモンさんも後に入り、僕と対面の席に座り「だせ」と御者に声を掛ける。
馬車は屋敷に向かって進みだした。
屋敷に着くまでの間に、集めた資料を一通り目を通す。
馬車の揺れにはまだ慣れない中、耐えながら資料を見る。
(ええっと、・・・・・・・・・まずは、領地の約六割が山になっていて、金、銀、銅、鉄等の鉱脈はあったが、全て廃坑になったと。他には『ミルキー・シープ』と言われる魔物から毛を刈って毛織物として使われている。後、亜竜が多く生息しているので王国の直轄領になっていると)
ふむ、今分かっているのはこれ位か。後は現地に行って調べればいいか。
鉱脈が途絶えたとしても、まだ何処かにあるかも知れないし、こっちの世界の知識又は技術では使用方法が分からなくても、色々あるかもしれない。
その上、廃坑になったとはいえ、鉱山だったのなら〝ぼた〟が出るだろうな。
〝ぼた〟とは選鉱する際に出て来る価値のない岩石や粗悪な石灰の塊の事だ。それを魔法で上手く錬成すれば、金になると思う。多分。
鉱物ではないので分からないが、でも某片手と片足が義手と義足だった錬金術師が似たような事をしたから行けると思う。
(それにこの前、物質錬成の魔法を開発したし)
出来るかなと思い、試してみたら出来たから正直驚いていた。
ぶっちゃけ、出来なくてもおかしくないと思っていたので出来て、ラッキーぐらいにしか思っていない。
(この魔法の事、まだ誰にも話してないんだよな。う~ん、何時頃話そう)
今日は侯爵とエリザさんは屋敷には居ないそうだ。
何でも、僕の領地に来てくれる人を探すのに奔走しているそうだ。
(本当にありがたいな。人脈の点で言えば、殆どないみたいなものだし。僕が声を掛けても誰も来てくれないだろうけど、侯爵達が声を掛けたら何人かは来てくれるだろう)
一人、多くて五人かなと思っている。
その領地までの移動手段等は侯爵達が屋敷に戻ってから決めよう。
(あっ、そいえば。マイちゃん達に会ってないけど、いいのかな?)
叙爵が終わり、謁見の間の前には四人共居なかったので何処かに行ったのかなと思った。
でも、領地を貰えるという事はしばらくの間は、顔を見る事がなくなる。
なので、近い内に一席設けておかないと駄目だな。
じゃないと、今度は何をするか分からない。
(拗ねて王都で大乱闘なんてされたら、今度は泡吹いて倒れるかもしれないな)
そう思いながら、屋敷に着くまで資料に目を通し通し続けた。




