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第65話 拝啓 お父さん、お母さん、貴族になりました。

 近衛兵団に料理を振舞ってから翌日。

 僕は、自分で作った魔法を近衛兵団の人達に教えている。

 補佐として、エリザさんが手伝ってくれた。

 本人曰く、子豚一人だとちゃんと出来るか心配だから、特別にわたくしが手伝ってあげる。

 と言われて、僕は頭を下げてお願いしますと頼んだ。

 それでエリザさんと一緒に魔法を教えている。

 僕が実際に魔法を見せて、僕の説明できない所は、エリザさんが代わりに教えてくれるという感じで教えている。

 最初は上手く出来なかったが、教えていく内に慣れていった。

 そうして、教えている内に魔法も上手く使える人が出来てきた。

 炎と水の魔法を適性がある人は『無色の波動砲』を教えて、風と土魔法の適性がある人は某暗黒の破壊神に出て来る自称美形主人公が使っている魔法を教えた。

 魔法名は〇地爆裂だと先の魔法と同じく問題が有りそうなので、こっちの世界風に変えた。

 それで出来た魔法銘は『破滅の災害カタストロフ・ディザスター』と名付けた。由来はカッコいいと思う言葉を適当にくっ付けたら出来た名前です。

 でも、この魔法を使う所を選ぶな。

 近衛兵団に教える前に一度、試しに使ったけど、凄い威力が出た。

 後には破壊された惨状しかなかった。

 周囲の被害が酷いので、あまり使用しないようにしようと決めた。

 余談だが、侯爵だけその現場を見て凄い興奮していた。

 近衛兵団の人達はその魔法を見て、皆目を点にしていた。

 まぁ、気持ちは分かる。


 で、取りあえず、基礎訓練として両手に魔法を出して、それを一定の出力になるまで制御してもらう。

 それが出来たら、今度は融合させる。

 意外にこれが難しいのだ。

 何せ、どちらかの魔法が強すぎたら、上手く融合できず消滅する。

 基礎の訓練は出来ても、この訓練で多くの人が躓いている。

 中に挫けそうな人も居たが、そんな時には一息ついて、茶と茶菓子と楽しんでもらう。

 ちなみに毎回出て来る菓子は違うので飽きさせる事はない。

 文字通りの飴を貰って奮起してもらい、訓練を再開させる。

 そうして訓練開始から、数週間後。

「『我は放つ、無色の波動砲』」

「『大地と大気の力よ。今、その力を交わらせて一つとせん。破滅の災害』」

 バビュウウウウウウッ!

 ドッッッガンンンンンンンッ‼

 それぞれ放たれた魔法が、大地を破壊する。

 うん。僕が創った魔法だけど、他人が使っても凄まじい威力だな。

「ふむ。イノータが使わなくても、凄い威力だな」

「ですな。それにしても凄まじい魔法ですな」

 王都を出て、周囲に何も無い所で近衛兵団の魔法を披露会を行われた。

 その会には勿論、王様、近衛兵団を指揮している第一王女様、それと何故か第二王女様、宰相、後各軍団の団長と副団長。更に大臣の人達が数名来ていた。

 僕はエリザさんの傍でその魔法の披露会を見ている。

 最後の一人が魔法を披露して会は終わった。すると、王様が立ち上がる。

「見事であった。このような素晴らしい魔法を使える臣を持つ事が出来た事を、神に感謝しよう」

「「「「恐れ入ります。国王陛下」」」

 近衛兵団の人達が跪いて、言葉を述べた。

 訓練が終わる頃には、皆さん自信を徐々に取り戻してきたのか、元気な姿を見せてくれた。

 そんな元気な姿を見て、ご満悦のようだ、嬉しそうに顎髭を撫でている。

 撫で終わると、次は僕に目を向けた。

「イノータよ。こちらに参れ」

「は、はい」

 僕は椅子から立ち上がり、王様から少し離れた所で跪いた。

「お主のお蔭で、我が臣達が自信を取り戻したようだ。感謝する」

「はっ。恐縮です」

 大した事はしていなけど、ここはそう言って置こう。

「この素晴らしい功績により、お主に男爵の位を授けよう」

「は、はいっ?」

 あれ、本当だったの?

 ていうか、誰も反対しないのか?

 と思い、周りを見ると誰も何も言わない。

「後日、爵位を授ける式を執り行う。楽しみにしておれ」

 そう言って王様はその場を後にする。その後を第一王女様と宰相達が追っていく。

 第二王女のセリーヌ様は皆さんに着いて行かず、僕の所まで来た

「男爵叙爵おめでとうございます。イノータ様」

「あ、ありがとうございます」

 そうとしか言えなかった。

「これから大変でしょうが、頑張って下さい」

「は、はい」

「では、御機嫌よう」

 セリーヌ王女はそう言って、その場を後にした。



「・・・・・・・・・・・・・」

 僕はドキドキしながら、待合室に居る。

 全身が緊張で震えている。

(ほ、ほほほほほ、ほんとうに、きぞくになる、なんて・・・・・・)

 予想すら出来なかった事に、震えが止まらなかった。

 まずい。戦場に出た時よりも緊張している。

 少し、落ち着かないと。手を伸ばしてコップに入った水を飲む。

 フー、でも、全然震えが止まらない。寧ろ、更に震えだした。

「いい加減落ち着きなさい。子豚、まるで生まれたての子鹿みたいに震えているわよ」

 エリザさんが優雅に茶を飲みながら窘めている。

 何で、エリザさんが待合室に居るのかというと、叙爵する際には誰か介添人が必要らしい。

 それも爵位を持った人の。

 最初、侯爵に頼んだら、是非娘にしてほしいと言われてする事になった。

 実際、エリザさんは子爵の位を持っているので、問題はない。

 介添人には問題はないのだが、問題は僕にあった。

 貴族の家の出ではないので、叙爵の式に着る服やら礼法とか何も知らない。

 急遽、仕立て屋さんやら礼法を教える人を招いて色々としてくれた。

 服の採寸を測ったり、足の運び方かたから跪き方、果ては服の着方まで徹底的にレクチャーされた。

 お蔭で毎日大変だった。

(貴族って意外に大変なんだな~、僕も貴族になるから、そう言った事にも慣れないといけないのかな)

 正直慣れたくないなと思う。

 コンコン。

 むっ。そろそろ、式の準備が整ったのかな?

 取りあえず中に通すか。

「どうぞ」

 そして、入って来たのはマイちゃん達だった。

「ふむ。馬子にも衣裳と言ったところだな。ノブ」

「ユエ、それは酷いよ。確かに似合っているかないかと言われたら、少し言うの悩むところだけど」

「二人共、猪田君に失礼だよ」

 ああ、何か久しぶりにマイちゃん達の声を聞いた気がする。

 正直に言って、落ち着く。

 このやり取りを聞いていたら、緊張していたのが嘘みたいに消えていく。

「貴方達、子豚は男爵になるのだから、馴れ馴れしく話し掛けるのは止めなさいね」

「ふっ、そちらの世界でどれだけ凄い地位を得ようと、ノブはノブな事に変わりはない」

「その通りね。むしろ邪魔じゃないかしら、猪田君には自由に動けた方が良いと思うわ」

「言えてる~、というか、今から叙爵式スッポかして、何処かに行かない? ノッ君」

「いやいや、それは流石に」

「ええ~、久しぶりに会ったんだからいいじゃない。むしろ幼馴染権限で、叙爵式をスッポかす事を許可します。だから、どっか行こうよ」

 それは、駄目だからと言おうとしたら。ユエが口を挟む。

「マイ、流石にそれはまずいだろう。向こうの王様の好意で叙爵させてもらえるのだ。それは受けるべきだろう」

 流石はユエだ。うんうん。

「だが、それを貰っても別に爵位を返還しても問題はないであろう。というか返還しろ」

「ゆえええええええええええっ‼」

 君は何と言う事を仰っているのですか⁈

 誰が聞いているか分からない所でっ。

「流石にそれは失礼だから、この場で置手紙を残して何処かに国に逃げ込んだ方が良いと思うな。そうしたら、色々と自由だと思うし」

「いやいや、それも駄目でしょう」

「貴方達ね、そんな事したら、不敬罪でどこまでも追いかけられるわよ。それこそ地獄の果てまで」

「ふん、もしそうなっても、わたし達が居ればこの国の軍隊相手は簡単にのせるだろう」

「確かにそうだね。あたしもそう思う」

「むしろ、この国の軍団を壊滅させてから、国外に脱出したほうがいいかも」

「貴方達ねっ」

 流石に怒り出すエリザさん。

 そうしたら、今度は四人で口論が始まった。

 僕は溜め息を吐いていたら、袖を引っ張られた。

「イノッチ、男爵叙爵おめでとう」

「ありがとう。村松さん」

 ほぅ、ようやく、ちゃんとおめでとうの言葉を貰った気がする。

「えっへへ、でも、イノッチが貴族か。何か悪徳貴族とか似合いそうな気がする」

「うん。何だろう。村松さんが僕の事をどう思っているか良く分かった気がするよ」

「あっはは、半分は冗談だから」

 笑いながら、僕の背中を叩く。

 今の言葉、残り半分は本気と言う事だよね?

 聞いたら、何かダメージくらいそうだから聞かないけど。

「あのさ、貴族になった記念にさ、一つお願いがあるんだけど。いいかな?」

「何? 出来ることならするけど」

「あたしの事、瀬奈って呼んでくれると嬉しいな~、ていうか呼んで」

「え~、言わないと駄目?」

「駄目」

「じ、じゃあ、瀬奈さんでいいかな」

「う~ん、呼び捨てでいいのに。まぁ、そこがイノッチの良い所か、仕方がないから、それで許してあげましょう」

「「「「何が許してあげるだって(ですって)」」」」

 おお、今まで口論していた四人がこっちを見ている。

「えっ、名前で呼ばれるくらいいいじゃん。別に」

「良くないっ。わたしだって、まだ下の名前で中々呼ばれないのに」

「じゃあ、いい機会だから、呼んで頼んだら?」

「えっ、で、でも。それはそれで恥ずかしい/////////」

「「「「うわっ、面倒な女ね」」」」

「い、いいでしょう。別にっ」

 そう仲良く話していたら、またノックされた。

 今度は誰が来たのだろう。


 ノックをされたので僕がドアの所に行き開けると、そこに居たのは第二王女のセリーヌさんだった。

「御機嫌よう、イノータ様」

「え、えっと、御機嫌麗しゅうございます。殿下?」

「クスクス。別にそんな畏まった事をしなくていいですよ。まだ、叙爵された訳ではないのですから」

「そ、そうなのですけど、でも、今の内に言えるようになっておこうかと思いまして」

「殊勝な心構えですね」

「その、王女様はどうしてここに?」

「式の準備が整いましたので、わたしが呼びに来ました」

「えっ? 何で王女様が呼びにくるのですか?」

「暇でしたので」

「いや、普通に有り得ないでしょう」

 つい素で突っ込んでしまった。

「と言うのは冗談で、異世界人を貴族にすると言うので、呼びに行かせる者にも気をつかっただけです」

 所謂、あれか。わたしはこの人を厚遇していますよと内外に示すパフォーマンスみたいなものか。

 僕は納得して、まだ口論している五人に声を掛ける。

「お~い、式の準備が整ったようだから、そろそろ行こうよ」

 しかし、そう声を掛けても口論は終わる気配はない。

 寧ろヒートアップしている様に見える。

 どうしたものかなと思っていたら、セリーヌさんが部屋に入って来た。

「皆さん、口論を止めないとわたしがイノータ様と一緒に先に行きますよ?」

 そう言うと、ピタッと口論が終った。

(おお、流石は王女様。伊達に王族ではない)

 素直に凄いと思った。

 多分、僕が同じ事を言っても効果はないだろう。

「そうね。早く行きましょうか。子豚」

 先程うって変わって、淑女のような雰囲気を出しながら歩くエリザさん。

 こんな事も出来るんだと思う。

「じゃあ、あたし達も一緒に行って良い?」

 マイちゃんは笑顔で聞いて来る。

 というか、目が笑っていない。

 何か、駄目って言われても付いて行くわよと言う顔をしている。

「ええ、構いませんよ。ですが、謁見の間の前までですよ。それ以上は、貴方達は入れません」

「どうしてっ?」

「この国では、貴族の叙爵の儀には爵位を持つ者しか参加できないのです。ですので、貴方達は入れません。ちなみにわたしは王族なので入れます」

 四人共、声にこそ出さないが、ええ~という顔をしている。

 うん。これは式に参加したかったんだな。

 決して、式に参加してぶち壊そうと考えてはいないと思う。多分。

「う~、どうしても?」

「どうしてもです」

 王女様がキッパリ言うので、四人共無理だと分かったのだろう。

 渋々だが頷いてくれた。

 誰かが小さい声で「っち、式をぶち壊そうと思ったのに・・・・・・」と言う声が聞こえた気がしたけど、多分、空耳だろう。

 うん。きっと、そうだ。

 セリーヌ様を先頭に、僕の横にエリザさんが、その後にマイちゃん達が続く。

 待合室から少し歩くと、謁見の間に着いた。

「では、お供の人達はここまでです。後はわたし達で行いますので」

 セリーヌ王女様にそう言われて、不満そうな顔をしながら頷くマイちゃん達。

 そして、セリーヌ王女様が謁見の間の前に居る衛兵に声を掛ける。

「叙爵の儀に参加するイノータ・ノブヤス様をお連れに致しました」

「はっ、ご苦労様です」

 そして、衛兵が深く息を吸う。

「叙爵の儀に参加する。イノータ・ノブヤス様、御入来!」

 衛兵が声を上げると同時に門が開いた。

 そして、セリーヌさんが横にずれて道を譲った。

 先に僕が入れと言う事だろう。

 ゴクリと唾を飲み込んで、僕は歩き出す。

 その後をエリザさんが続く。

 謁見の間に入ると、赤い絨毯の両側には近衛兵団の人達や正装した宮臣達が並んでいる。

 僕は震える足に力を入れて、取り乱す事無く進みだす。

 絨毯の上を歩き、石段から十歩ほど離れた所で立ち止まり跪く。

 エリザさんも僕の左斜め後ろで跪く。

 僕達が跪くのを見て、王様は宰相を見て頷いた。

 宰相は王様が頷いたのを見て、厳かに口を開く。

「これより、叙爵の儀を行なう」

 宰相がそう言うと、近衛兵団の人達が腰に差している剣を抜いて直立させた。

 そして、宮臣の一人が豪華な装飾で覆われた剣を持ってきた。

「イノータ・ノブヤス」

「はっ」

 バアボル陛下が宮臣が持ってきた剣を手に取り、剣を抜いて僕の肩に剣を乗せる。

「汝は、この国に多大な貢献をした。よって、その功績に報いる為に、余はここに汝を男爵に封じる事とする。イノータよ」

「はっ」

「その知識、その身に宿る力を、我が国の栄光の一端となるがよい」

「はっ。全身全霊を掛けて、この国に忠誠を誓います」

「うむ。汝にターバクソンの地を授ける。これより、汝はイノータ・フォン・ターバクソン男爵と名乗るが良い」

 王様がそう宣言すると、近衛兵団の人達と宰相の人達以外、驚いていた。

「あの山しかない土地を?」

「昔は鉱山があったそうだが、廃坑になったと聞く」

「王は土地を与えて、飼い殺しにするつもりのようだな」

 何か、色々と聞こえてくる。

 話を聞いた感じ、僕が貰った土地はどうやら結構人が住むのは不便な所だと言う事が分かった。

(まぁ、どんな土地かは後で聞いてもよう)

 僕はそう思い、後は儀式が終わるまで跪く。

 




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