ジュ―リロの暗躍
厨房を出たわたし達は、ヴェルデ姉様を先頭にして、食材の受注に向かうピョン。
この王宮には国内から選りすぐりの食材が届きはするが、それでも品質は一定していないピョン。
例えで言えば、同じ種類の肉でも味が違うのだピョン。
これは別に変ではないピョン。この世界ではイノータ様が言う、牧場と言える物がそんなにないピョン。
精々、馬や魔物を人が乗れるように調教する所か、卵を生産する所、乳を搾る所を差して言うが、正直肉や魚を食べる為に飼育又はようしょく? と言うのはしていないピョン。
何故なら、この世界では食べれる魔物はそこいらに居るピョン。なので、食用に育てるという風習はないピョン。
だからだろうか、王宮に届けられる食材は、微妙に食感と味わいが違うピョン。
イノータ様曰く「同じ魔物でも、食べる餌、住む環境によって味も食感も変わるから」と言ってたピョン。最初、言っている意味が分からなかったピョン。
でも、試作した料理を食べていたら、微妙に違うのが分かったピョン。
前の試作と同じ種類の肉を使ったのに、何故か固かったり味が淡泊なものがあったりしたピョン。
その試作した料理を食べたイノータ様は「自然で育ったのだから、少し味にバラつきがあってもおかしくない」と言っていたピョン。
なので、わたし達は近衛兵団達に出す食材を厳選して発注しなければならないピョン。
試作した結果、王都より南に三十キロほど行ったフィリアの森に生息しているマーブル・ヴェールが一番美味いという事が分かったピョン。
そこに居るマーブル・ヴェールの肉を発注して、更に食材を厳選すれば問題なく、美味しい物が出来るだろうピョン。
まぁ、わたしは肉よりもデザートをお腹いっぱいに食べたいピョン。
特にさっきみたいなデザートが良いピョン。
あれは何度でも食べたい物だピョン。
アイスクリームみたいに舌で溶けるのにフワフワした食感。土台のすぽんじ? というふんわりとしながら噛むと甘い食べ物。同時に取って口に入れたら極上の食感だピョン。
更にそれだけではなく、アイスみたいな白いモノとケーキとの間に黄色いペーストみたいなモノが塗られていたピョン。
味が柑橘系の味がしたので、柑橘類を使ったものだとは分かったピョン。
それのお蔭で、後口が爽やかで味の余韻を楽しめたピョン。
(ああ、あれは本当に美味しかったピョン。また、頼んだら作ってもらえるかなピョン)
そう思っていたら、前から王宮に仕えるメイド達がやってきたピョン。
メイド達が道を譲ってくれたので、わたし達はすんなり通れたピョン。
でも、横にそれたメイド達は肩を震わせていたピョン。
それは、笑いを堪えているからだピョン。
何せ、今のヴァルデ姉様の顔には食べたデザートの白いクリームが付いているのだピョン。
本人は気付いていないし、わたしは面白いので教えてないピョン。
(・・・・・こんなに面白い姉だと思わなかったピョン)
そう思っていたら、わたしの後ろに気配を感じたので振り返った。そこに居たのは、王宮に仕えているメイドだ。
見た目は王宮に仕えているメイドだが、本当はわたしが造った人間に擬態できるスライムだピョン。
粘液生命とも言われる存在で、御当主様が人口生命体を作る技術を用いて、わたしが作り出した手駒だピョン。
王宮内にも、御当主様に敵意を抱いている者達は沢山居るので、御当主様達の身を守る為にわたしは密かに(御当主様とお嬢様は知らないが、わたし達姉妹と御曹司は知っている)王宮に潜り込ませているピョン。
「異世界人達は今日は何処で訓練しているピョン?」
「はっ、本日は野外で王都近くの平原で野営訓練をしております。帰るのは夕方になると思います」
「そう。引き続き監視するピョン」
「御意」
そう言って、そのメイドは音もなくわたしから離れたピョン。
ふぅ、これで料理の試作は何事もなく終わるピョン。試作の間は異世界人達に会わせないように、色々と工面した甲斐があったピョン。もし、会わせたら何で試作するのか訊いてきて、妨害するかもしれないと思ったからだピョン。
後は、この料理を近衛兵団に食べさせて王様の命令は完了だピョン。そうしたら、イノータ様は晴れて貴族になるピョン。
男爵と爵位としてはは低いが、今はそんな所でいいと思うピョン。
(後は、徐々に外堀を埋めて、イノータ様とお嬢様が自然とくっ付くようにすれば、・・・・・・)
その未来図を予想したわたしは、思わず笑みを浮かべたピョン。
余談だが、発注依頼をしようと商人の所に行ったピョン。
その時、商人がヴェルデ姉様の頬を見て「顔に白いモノがついておりますよ?」と言ってきたピョン。
姉さまは、顔を赤くしながら慌ててハンカチで顔を拭いたピョン。
わたしは笑いを堪えながら見ていたピョン。
後で、しこたま怒られたけど。気付かない姉様にも問題があるピョン。
ヴァルデドゥ―ルとジュ―リロが発注に行っている間。
猪田「この残ったレモンカードもどきは、パンに塗っても美味しいし、紅茶に入れても美味しいですよ」
ビヒモン「・・・・・作り方教えてくれ」
猪田「いいですよ。まずは」
後日。
侯爵屋敷の朝食時。
ビヒモン「~~~♪」
ヴァルデドゥ―ル「あら、ビヒ。貴方、その黄色いモノはなに?」
ジュ―リロ「クンクン、これは、この前、作ったデザートに塗られたペーストと同じ匂いがするピョン」
ビヒモン「当然、イノータ様から作り方を教えて貰って、あたしが作った」
ヴァルデドゥ―ル、ジュ―リロ「「少しくれないかしら(ピョン)」」
ビヒモン「嫌だ。これはあたしが作ったから、あたしが食べる物」
ジュ―リロ「お姉ちゃん権限で、少し頂戴だピョンっ」
ヴァルデドゥ―ル「わたしはその上の姉の権限で、ジュ―リロよりもくれるわよね?」
ビヒモン「イヤ」
そして、三つ巴の姉妹の戦いが始まった。
直ぐにエリザが来て、戦いは終わったが、そんなに暴れる位美味しいのかと思い、エリザは一口分だけ貰い食べると、直ぐに猪田に作り方を習いに行った。
簡単に作れるので、使用人達が食べても余るくらい出来てしまった。
なので、おすそ分けと久しぶりに話がしたいと思い、エリザは作ったレモンカードを持って、友人のセリーヌ王女に会いに行った。
セリーヌ王女もそれを食べて大変気に入り、家族にも分けたそうだ。
バアボル王も味が大層気に入った様で、後日、この料理を自分の名前から一字取って『バレモン・ペースト』と名付け、王室御用達の一つにしたそうだ。




