第63話 よし、これで準備完了だ。
「これで、どうでしょうか?」
僕は試作に試作を重ねた料理を、王宮の厨房を預かる料理長に試食してもらう。
まさか、試食までに三日も掛かるとは思わなかった。
でも、お蔭で満足いくものが出来た。
これで、料理長から文句がなければ、これを作って食べてもらう事になる。
僕は料理長をジッと見る。
料理長は試作した料理を食べながら目を瞑る。
料理を味わっている。
「どうですか?」
「モグ、・・・・・・・文句ない出来だ」
「あ、ありがとうございますっ」
僕は深々と頭を下げる。
「よし、これでどうにか出せるぞ。早速食材を発注しよう」
「お待ちください。イノータ様」
そう声を掛けるのは、ヴェルデドゥールさんだ。
あっ、 頬にクリームが付いてるぞ。
さっき、試作を手伝ってくれたお礼に、生クリームを使ったお菓子を作った。
生クリームをホイップして凍らせて、薄いスポンジの上に乗せてそのまま少し置いた物だ。
某料理漫画に出てくる。双子のイタリア人料理人が作ったドルチェを真似た物だ。
アーモンドの部分は作れなかったが、他の部分は出来た。
ちなみにレモンカードの所は、こっちの世界でもレモンに該当する柑橘類があったので出来た。
それのクリームがヴァルデドゥールさんの頬に付いていた。
言うべきか言わざるべきか考えている間にも、ヴァルデドゥールさんは話を続ける。
「そのようなこまごまとした事は、わたし達が行います。なので、イノータ様は食材が届くまで、ゆっくりとしてください」
「は、はい」
「では、わたし達は発注元に向かいますので、イノータ様はここで暫くお待ちください」
そう言って、ジューリロさんを連れて行ってしまった。
とりあえず、僕は一休みしようと、椅子に座る。
「ガツガツガツガツ」
先程出したデザートをもの凄い勢いで食べているビヒモンさん。
気に入ってくれたようだ。
その食べっぷりを見て、僕は思った。
「そう言えば、マイちゃん達に会ってないけど、元気にしているかな?」
王宮に来たから会えるかと思ったけど、全然会う気配がない。
どうしてだろう?




