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第62話 料理の試作で王宮に向かうとは

 昨日の使用人達の騒動で、厨房が使えなくなったので仕方がなく、僕は王宮の厨房で試作する事になった。料理を試作する為に王宮に行くなんて、正直、僕って何者なのだろうと思う。

 まぁ、今はそれよりも作る料理の試作をしなければ。

 馬車に乗って、王宮に向かう。

 乗っている馬車には、僕の他に使用人の人達で名前を、ヴェルデドゥールさん。ジュ―リロさん。ビヒモンさん三人乗っている。

 僕の護衛と料理の助手をしてくれるそうだ。

 ヴェルデドゥールさんとジュ―リロさんは昨日、試作した料理を食べてくれた人達だ。

 ビヒモンさんはもう一人のメイドさんと、エリザさん護衛とかしているそうだ。

 三人を見比べてみると、顔を作りがなんとなく似ているなと思った。

「三人は姉妹なんですか?」

 気になったので、僕は思い切って尋ねた。

「そうだピョン。わたしたちは姉妹だピョン」

 語尾にピョンとか言っている人初めてみたな。

 まぁ、人それぞれの個性だから気にしないであげよう。

「へぇ、誰が姉なんですか?」

「わたしの隣に座っている緑色の髪をした女性がヴェルデドゥールが四女で、わたしは五女だピョン」

「五女? じゃあ、六人姉妹なんですね」

「ぶっぶ~、全員合わせて七人姉妹ですピョン」

「随分、多いんですね」

「まぁ、わたし達は特別だからだピョン」

 特別?

 まぁ、七人姉妹はなかなか居ないから、特別かもしれないな。

 そう思っていたら、ジュ―リロさんの頭をヴェルデドゥールさんがグーで殴った。

「それについては、大旦那様がお話する事だ。お前が話す事ではないぞ」

 ? それはどうゆう意味なのだろう。

 僕は訊ねようとしたら、馬車が王宮に着いてしまった。


  王宮に着き、馬車を降りるが、誰も出迎えに来ていない。

 まぁ、当然だよな。

 別にVIPという訳ではないのだから、そんな扱いを受ける訳がない。

 ぶっちゃけ、そんな扱いされたら対応に困る。はっははは。

 と、まぁ、内心で笑っていたら、一緒に付いてきたヴェルデドゥールさん達が降りて来た。

「・・・・・・・誰も来ていないわね」

「そうですねピョン」

「・・・・・・事前に言っていたのか?」

 あっ、初めてビヒモンさんの声を聞いた。

 結構、ぶっきらぼうな感じで話しをするんだな。

「昨日、確かに連絡をした筈ですが」

「でも、来ていないピョン。これは所謂、伝達ミスじゃないかピョン」

「そうかもしれないわね」

 何だ? ヴェルデドゥ―ルさん達は何を話しているんだ?

 そう思っていたら、前から誰かがやって来たぞ。

 誰が来たのだろうと思っていたら、何か立派な官服を着た初老のオジサンがやって来たぞ。

 走って来たのか、僕達の所まで来ると、はーはーっと息を荒く吐いていた。

「お、お待たせ、して、も、申し訳、ござません・・・・・・・・」

(この人、誰だろう?)

 何処かで見た事があるのだが、どうも思い出せない。

 誰だっけと思い出そうとしたら、オジサンが息を整えて、綺麗な敬礼をした。

「お初に目に掛かります。わたしは副侍従長を務めております。モリア・フォン・テーイと申します」

「あっ、初めまして。僕はイノータ・ノブヤスと言います。・・・・・・・うん? 副侍従長?」

「はい。わたしのような者には、身に余る役職ですが。陛下の命令により拝命しております」

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「イノータ様、どうかしましたか?」

 はっ! 衝撃的な事を聞いて意識を遠くにやってしまったようだ。

 まさか、侍従長が出迎えてくれるなんて、あまりに有り得ない事に、気を失ってしまった。

「じ、じじいじじ、じじゅうちょう、で、ですか?」

「はい。 副侍従長ですが」

 何か、頭痛がしてきたぞ。

 侍従長って王様の身の周りの世話をする人の中で、一番偉い人だろう!

 そんな人が、僕を出迎えに来るとか、普通に有り得ないだろうっ‼

 実は、ドッキリかと思い、首を動かして回りを見る。

「? どうなさいました?」

「・・・・・・これって、ドッキリですか?」

「ドッキリ? 何ですか。それは?」

 侍従長の人は意味が分からず、首を傾げさせてしまった。

 ですよね~、この世界の人でドッキリの意味が分かる訳ないよな。

「いえ何でもありません」

「はぁ、左様ですか」

「それよりも、侍従長前もってこの時間に来ると連絡を入れておいたのに、どうして出迎えが遅れたのでしょうか?」

「はっ、それにつきましては、こちらの不手際でございます。どうかご容赦を」

「不手際だからと言って、許される事ではありません。」

 ヴェルデドゥ―ルさんは厳しく叱責しているが、正直僕は気にしていない。

 それに、遅れたといってもほんの少しだ。叱責する事でも無いと思う。

 なので、ここは助け船を出す。

「ヴァルデドゥ―ルさん、もういいですから」

 僕がそう言うと、ヴァルデドゥ―ルさんは叱責を止めて、僕を見る。

「しかし、イノータ様。遅れた事は事実です。そこは厳しく言うべきです」

「僕としては、そんなに怒る事でないと思います。なので、もうその辺で」

「ですが」

「そんなに眉間に皺を寄せていたら、折角の可愛い顔が台無しですよ」

「・・・・・・・・はいっ?」

 いきなり、そんな事を言われて意味が分からず、頭にハテナマークを浮かべるヴァルデドゥ―ルさん。

 だが、直ぐに僕が言っている意味が分かった様で、段々顔を赤くする。

「な、なななななっ、なにを・・・・・・・」

 あっ、可愛いって言われ慣れてないんだ。意外だ。

 そうか。よく見たら、可愛いよりも綺麗だと言える顔だから、綺麗だと言われていても、可愛いと言われた事はないんだろうな。この反応を見るに。

「ヴァルデ姉様を照れさせるとか、流石は大旦那様が見込んだお方だピョン」

「だな。お嬢様もあんな調子でデレさせたんだろうぜ」

 何か、ジュ―リロさん達が、何か言っているようだが、声が小さすぎて聞こえない。

「・・・・・・はっ、コホン。イノータ様がそこまで仰るのではあれば、ここまでいたしましょう」

「はっ、ありがとうございます」

 モリアさんは恐縮しながら頭を下げる。

「それでは、ご案内いたします」

「はい。お願いします」

 僕達はモリアさんの案内で、厨房に向かう。

 途中、使用人の人達に会うと皆、僕を見るなり頭を深く下げる。

(あれ~、僕って何かしたかな?)

 全然思いつかないぞ。

 そう考えていたら、厨房の前まで来た。

 モリアさんが無言でドアを開けてくれた。

 僕達が入ると、厨房には誰も居なかった。

 あるのは、ピカピカに綺麗な厨房設備だけだ。

「あの、どうして、誰も居ないのですか?」

 今の時間だったら、昼食を作る時間では?

 その疑問には、モリアさんが答えてくれた。

「こちらは第二厨房になります。こちらはパーティーや食事会をする時以外は使いませんので、どうぞお好きにお使い下さい」

「はい?」

 僕はてっきり厨房の一部を借りて試作すると思っていたの。

 なのに、第二厨房を丸々使っていいとか、どんだけだよっ!

「食材は事前に用意しておりますので、どうぞ好きなだけお使い下さい」

 もう、何でもありだな。

  僕はこの状況に慄く。

 異世界人とはいえ、この対応に言葉が出なかった。

(正直、料理を作りに来ただけなんだけどな・・・・・・・・)

 それだけなのに、どうしてこんな待遇なのだろうと思う。

 料理の試作で王宮の厨房を借りるのも有り得ないのに、その厨房を丸々借りれるなんて、有り得なさ過ぎる。

「イノータ様、どうかしましたか?」

「い、いえ、何でもありません」

「では、わたしはこれで」

 モリアさんが一礼して、厨房から出て行く。

「あっ、ちょ」

 一足違いで、扉が閉まった。

 本当に使っていいのかなと聞きたかったのに。

「イノータ様、早く料理の試作を行ないましょう」

 何だろう。ヴェルデドゥ―ルさんの声がどうもウキウキしている気がするのは気のせいだろうか?

 まぁ、ここまで来たんだから、試作をするしかないか。

 僕は料理の試作に掛かった。

 とりあえず、保存庫に置いてあった食材を全て使って、試作を行なった。

 



 

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