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第4話 転移して次の日

 部屋を出て行ったユエは直ぐに戻って来た。

 そんなに歩き回るつもりはなかったそうで、この建物がどんな構造なのか見たいだけだそうだ。

 ユエが戻ると、直ぐにライデルがメイド達を連れて来た。

「本日はこのままお休みしても構いません。用意した部屋へはメイド達が案内させます」

「あの、王様に謁見などしなくていいのですか?」

 天城君が訊いてきた。

 その顔を見ると、一言物申したいと言う顔だ。

「いえ、本日は王は他の国と折衝に出ていますので、会う事はできません」

「いつ頃会えますか?」

「そうですね。2~3日中に帰ってくる予定です」

「分かりました」

「では、夕餉についてはメイド達に申し付けて下さい。では、わたしは用事がありますので、これで」

 ライデルは僕達に一礼をして、部屋から出て行った。

「では、ライデル様の代わりまして、私達が皆様方の相手はお部屋にご案内いたします。どうぞ、私達の後についてきて下さい」

 メイドの一人、着ている服が他のメイド達の服と比べて着けている小物が派手なのでメイド長だと思う。その人が声を掛ける。一人に一人のメイドが案内するようで、部屋には数十人のメイド達が居る。

 メイド達を見て、だらしない顔をする男子達に女子はますます視線を冷たくする。

 そして、メイドの案内で一人ずつ部屋から出て行った。

 僕も出て行こうとしたら、椎名さんが近寄って来て、小さい声だが僕の耳にしっかりと聞こえる様に耳打ちした。

「メイドさんに手を出したら駄目だから・ね」

 僕はその言葉を聞いた瞬間、背筋に悪寒が走った。

 思わず椎名さんの顔を見ると、彼女は僕の顔を見て首を傾げる。

(幻聴? 僕も突然のこんな事になって混乱しているのかな?)

 そう思いながら、メイドさんの案内で部屋を出る。

 部屋を出て廊下を歩きながら、首を動かさないようしながら見回す。

 自分達が呼ばれた建物と同じ素材で出来た廊下を見て、僕はこれはドッキリではない事を理解した。

(ライデルと言う人が言い分を信じるのは駄目だろうな。でも、他に帰れる方法は分からない。さて、どうしたものかな・・・・・・)

 歩きながら考えていると、用意された部屋の前に着いた。

「こちらが貴方様の部屋になります」

 そう言ってドアを開けてくれた。

 中を見ると、広い部屋にベッドなのど家具が置かれていた。

 壁は白く塗装され、床は木材だ。

 この部屋の間取りと、家具などの使用方法などを訊いた。

 用があったらこれを鳴らしてくれとベルを渡され、メイドさんは一礼して出て行く。

 誰も居なくなったので、僕はベッドにダイブするように倒れた。

(はぁ、これからどうなることやら)

 ベッドでゴロゴロしながら、元いた世界の事を思い出していた。

 家族の事を思い出していると、ふいに一人の男の顔を思い浮かんだ。

(そう言えば、あいつは巻き込まれてなかったな、良かった)

 あいつとは仲の良い友人で名前を黒川照之くろかわてるゆきの事だ。

 中学の頃は同じクラスだったのでよく一緒に遊んだ。

 自称情報通で、よく分からない情報を教えてくれた。

 曰く、椎名さんが美化委員をしているのは、何かを収集する為だとか。

 曰く、ユエと僕が同じクラスになるのは、学校にかなりの額の金を寄付しているからとか。

 曰く、マイちゃんは顔の良い男子を取り巻きにしているが、本命は別にいるとか。

 そんな情報もらってどうしろと?

 意外に博識で話しが上手く陽気でムードメーカみたいな奴だった。

 もう会えるかどうか分からないのかと思うと、少し寂しい。

 そんな思いにふけっていると、ドアが叩かれた。

 どうぞと言うと、僕を案内してくれたメイドさんが入って来た。

 夕飯が出来たのでどうすると訊いてきた。

 少し考えたいので、食事は部屋まで運んでくれと頼んだ。

 メイドさんは「かしこまりました」と言って部屋を出て行く。

 出て行ってから数十分後、カートに料理を乗せてやってきてくれた。

 異世界の料理なので、僕達が食べている物とは違うかもしれないと覚悟していたら、出された物は見た目はお店などに出されている洋食と変わらなかった。だが、青いソースとかピンク色の飲み物とかも出て来た。勇気を出して口に入れてみたら、涙が出る程辛かったり、胸やけがするほど甘かった。

 食べた後に訊いたが、僕が口に入れた物は、味が足りない時や口直しの時に一口だけ食べる物だったそうで、止めようとしたら、僕が口に入れたので止めれなかったそうだ。

 初めて見るので好奇心で手を出した僕が悪い。反省。

 食べ終わると、ウトウトしてきた。

 今日は嵐のような一日だったので精神的にも疲れていたのだろう。僕はその眠気に任せてベッドに倒れ込むとそのまま眠りについた。

 

 

 僕は眠りに着いてどれくらい時間が経ったが分からないが。

 ガサガサ・・・・・・という衣ずれの音で僕は覚醒した。

 視線の合わさらない目でボーッとしていると、視界に端に椎名さんが居る事に気づいた。

(あれ? どうして僕の部屋に椎名さんが?)

 そう思いながら、顔を動かす。

 顔を動かしたのを見て、椎名さんは僕の顔をしげしげと眺める。

「瞳に力がないから、まだ寝ているのよね? 一応起きているか確認してみよう」

 椎名さんは顔の前で手を振る。僕は何の反応もしない。

 反応がないので、寝ていると思っているらしい。

 椎名さんは僕の顔をマジマジと見て恍惚とした顔をしている。

「ああ、ああ、猪田君の寝顔♥ もう、これを見ているだけで、わたしはもう♥ ちょっと触ってもいいよね? ねぇ、いいよね?」

 誰に訊いているいるのか分からないが、椎名さんは僕の頬をツンツンと突っついた。

「凄い弾力っ、何時までも突っついていたなぁ、起きてないからもう少ししよう♥」

 椎名さんはそう言って僕の頬を飽きる事無く突っつく。

(これは、夢かな?)

 今日は色々な事があったので、肉体と精神共に疲れている。なので、こんなあり得ない夢を見るのだろう。そうじゃないと、あの椎名さんがこんなことをする訳ない!

(普段は誰にでも優しくてお淑やかな人が、寝ている僕にこんな事をする訳が無い! 夢だ。これは夢に違いない!)

 だが、突っつかれている頬は椎名さんの指の感触を感じている。

 女の子に頬を突っつかれるのを嬉しいと思いながらも、それと同じ位に怖いと思った。

 椎名さんは何が目的で僕の部屋に入ったのだろう?

 僕はどうしようと思っていると、椎名さんは僕の頬を突っつくの止めた。

「これ以上したら起きちゃうよね。今日は部屋がどんな状態か確認しに来ただけだし、今日の所はここで帰ろう。猪田君の寝顔も見れたし♥」

 椎名さんは顔を近づけて来る。

「猪田君も男の子だから、メイドさんを部屋に連れ込むかなぁと思っていたけど違ってよかった♥ 本当に連れ込んでいたら、わたし・・・・・・・・・・・」

 そこから小声になったので聞き取れなかった。

 椎名さんは僕の頬にキスをしてきた。

「本当は唇にしたいけど、寝ている時にしても感動が薄れるから、今日はここにするね♥ そのうち、ちゃんとしようね♥」

 椎名さんはそう言って、音もなく姿を消した。

(・・・・・・・これは、夢だな。あの優しい子が僕の頬にキスするわけないよなぁ・・・・・・)

 僕は再び意識を暗転させた。



 翌朝。

 小鳥がさえずる声が聞こえ、朝日が部屋に差し込んでいた。

 僕は意識を半覚醒になった。

「・・・・・・・・あと五分」

 そう言って僕は布団に潜った。

 そうしたら、ドアがノックもせずに開いた。

「おっはよう~~、ノッ君、良い朝だよ!」

 マイちゃんが起こしにきたようだ。

 僕は朝に弱いので、マイちゃんが何時も起こしにくる。これが僕の家の朝の風物詩だ。

 僕の両親たちも心得ているのか、マイちゃんに家の合鍵をわたして好きな時に家に上がっても良い様にしていた。

「もう、ノッ君、こんなに良い朝なのに、まだ寝ているの? いいかげん起きてよ!」

 マイちゃんは布団を引きはがしに掛かるが、僕が全力でそれを防ぐ。

「あと五分だけ寝かせてよ。マイちゃん~」

「駄目。今日は何かする事があるから、早く起きないと」

「zzzzzzzz」

 僕は夢の世界に旅立った。

「そう、そんなに起きたくないんだ。じゃあ、仕方がない」

 マイちゃんは僕の耳に顔を近づけて、口から思いっきり息を吸う。

「おっきろっっっっっっ‼‼」

 耳元に大きい声を叫ばれて、キーンとした。

 そこで、僕は完全に覚醒した。

「お、お、お、おはよう、まいちゃん・・・・・・」

「おはよう、ほら、早く顔を洗って、昨日集まった部屋に行こう。何かライデルさんが話があるそうだよ」

「あ、ああ、わかったよ」

 僕は耳を抑えながら、洗面所に向かった。

 ここの世界は化学の代わりに魔術が発達している。生活のライフラインは魔術道具で支えられているので、思っていたよりも生活水準は近代的だ。

 この洗面所にしたっても。ノズルを捻ると水が流れる。温度を設定した場合、棚についている三つある色が付いたボタンを押せば熱くなったり冷たくなったりできるそうだ。

 僕は顔を洗うと、タオルに手を伸ばそうとしたら、マイちゃんがタオルをわたしてくれた。

「ありがとう」

「どういたしまして、ほら、早く行こう」

 マイちゃんは僕の手を引っ張って行く。

 昨日の部屋を行こう廊下を歩いていたら、前から椎名さんがやってきた。

 椎名さんはマイちゃんと僕が手を繋いでいるのを見て、一瞬顔を顰めた。

 でも、直ぐに笑顔を浮かべたので、見間違いだと思った。

「おはよう、猪田君、真田さん」

「おはよう、椎名さん」

「・・・・・・おはよう」

 僕は椎名さんの顔を見る事が出来なかった。

 昨日、あんな夢を見たので恥ずかしくて顔を見られない。

 俯いている僕を見て、椎名さんとマイちゃんは首を傾げる。

「は、早く行こう。何か大事な話かもしれないから」

 僕はそう言って、二人を置いて先に進んだ。

「あ、待ってよ。ノッ君」

 マイちゃんは慌てて僕の後を着いて行く。

 椎名さんも少し遅れてついてくる。

 


 

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