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第59話 王女様と友達になりました

 王様の命令で、僕は近衛兵団に教える事になったが。

 正直に言おう。全然自信がない!

 人に教えるのも上手くないに、魔法を教えるなんて、先輩芸人から無茶ぶりを命令された後輩芸人並みに難しいじゃないか。

 それに加えて、躁鬱状態の人達を自信を取り戻させろなんて、どんだけだよっ‼

(貴族になる気はないけど、失敗したらどうしよう~)

 ああ、頭が痛い。

 何か良い考えがないものかと考える。

 そう考えて歩いていたら、前から見慣れない人が歩いていた。

 見た感じTHEお姫様と言う人だ。

 カールした金髪。優しそうな目元。気品のある顔立ち。

 そして、白を基調としたドレス。

 後ろに護衛みたいな人もいるから、貴人のようだ。

 僕は道の端に寄って、そのお姫様を通した。

そのお姫様は僕を不思議そうに見ている。

(何で見ているんだろう? ・・・・・・・ああ、この服が珍しいからか)

 この世界の衣料技術では作る事も出来ない生地で作られているから、実はこの服の生地をどうやったら作れるのか、王国で研究しているとエリザさんから聞いた事がある。

 だから、僕の服を見ているのだろう。

 でも、そんなにジッと見られるのは、少々気恥ずかしいな。

(と言うか、この人、何で動かないのだろうか?)

 このお姫様のような人は、僕をジッと見て動かないでいる。

「あ、あの・・・・・・」

 このまま見つめ続けられるのは、流石に問題だと思い声を掛ける。

「あら、ごめんなさい。あまり見た事のない顔だったので、つい」

「いえ、気にしていませんから」

「そうですか。私はセリーヌ・テシュオス・ロンバルディアと申します。貴方は?」

「僕は猪田信康です。イノータと・・・・・・・ロンバルディア?」

 それって、確か王族のファミリーネームでは?

 すると、もしかして・・・・・・。

「あの、失礼ですが。王族の方ですか?」

「はい。私は第二王女です」

「・・・・・・・・し、失礼いたしましたっ‼」

 僕は慌てて跪いた。

 偉い人だと思っていたけど、まさか王女様とは思わなかった。

「王女様とは知らず、非礼の数々、お詫びいたします‼」

「いえいえ、私も名乗っていなかったので、お気に慣らさらずに」

「はぁ、そうですか」

 でも、跪いたまま答えた。

「貴方はイノータ様でしたね。話はエリちゃんから聞いております」

「はい? エリちゃん?」

 誰だ。それ?

「エリゼヴィアと申したら分かりますか?」

「あ、ああああっ」

 エリゼヴィアさんだから、エリちゃんか。

 正直、エリザさんにピッタリなニックネームだ。

「エリちゃんとはお友達でして、ここの所、貴方の話ばかりしています」

 エリザさんが僕の話を王女様にしているのに驚く事よりも驚いた事がある。

(エリザさん、友達いたんだ・・・・・・・)

 正直、ボッチだと思っていた。

「少しお話を聞きたいのですが、よろしいですか?」

「えっと・・・・・・・・・」

 正直、休みたいのだが、王族のお願いを無下にするのも悪いなと思う僕。

「・・・・・・・・分かりました。お付き合いします」

「じゃあ、少し先に空中庭園がありますから、そこでお話をしましょう」

 セリーヌ王女様の後を僕は付いて行く。


  僕は第二王女様と共に、空中庭園に来た。

 事前に来る事が分かっていたのか、テーブルと椅子が用意されていた。

 王女様が椅子に座った。

「どうぞ、お座りください」

 王女様にそう言われて、僕は座った。

 対面の位置で座った僕に、王女様は微笑みながら話しかけてくる。

「エリちゃんが言うには、イノータ殿は多才な才能を持っていると聞いています」

「いやぁ、買い被りですよ。正直、知識だけあるので、その知識を活かしてくれるエリザさん達には助かっています」

「まぁ、謙遜ですか?」

「いえいえ、本心ですよ」

「異世界人の方々は謙虚な方が多いのですか?」

「それは、ちょっと僕にはわかりませんね」

 我が強いのが何人も居るので、正直謙虚だと言い難い。

 王女様が異世界の事で色々と訊ねて来たので、僕は知っている事を話した。

 和やかに話していると、不意に王女様が真面目な顔をしだした。

(ああ、今までの雑談は、これを訊くための時間稼ぎか)

 この世界に来てから、貴族の社交辞令などを見ていた所為か何となくだが、王女様が本題を話すのをそらしている気がした。

 僕は何を言うのだろうと身構える。

「イノータ殿」

「はい。何でしょうか?」

「イノータ殿は甘い御菓子を作る事が出来るとエリちゃんから聞いています」

「はぁ、確かにそうです」

「今度で良いのですが。その・・・・・・・」

 これは、作ってほしいと言いたいのかな?

 まぁ、それくらいならいつでも出来るから、いいかな。

「その、今すぐ甘い物を食べたいので、作ってもらいますか?」

「今ですかっ!」

 まさか、今作れとか、何という無茶ぶりだ。

 ここの王族は人に無茶ぶりを振る家系なのか?

「え、えっと、・・・・・・・今すぐは」

 無理と言おうとしたら、王女様がすっごく残念そうな顔をする上に、後ろに控えている護衛や使用人達が凄い目で僕を見ている。

 まるで、王女様の命令に従わないなんて、いい度胸しているな。お前っ‼ と言っているようだ。

 その視線の圧力に負けて、僕は王女様の願いを聞く。

「・・・・・・今すぐはちょっと、少し時間を頂けませんか」

「はいっ! 待ちます‼」

 パアッと花が咲いたような笑顔をされたら、変なもの作れないじゃないか。

 とりあえず、僕は使用人の人に案内してもらい、厨房に向かう。

 厨房に向かうと、料理人の人達が、僕を見て怪訝な顔をしたが、案内でついてきた使用人の人が、料理長に説明してくれたので、厨房の一部を貸してくれた。

 僕は食料が置いてある所に向かい、お願い通りの甘い物を作れる食材を探す。

(とりあえず、小麦粉と卵とバターと砂糖だな)

 それらを探していたら、生クリームも見つけた。

 何でも、最近は簡単に作れるようになったので、手に入りやすくなったそうだ。

 遠心分離機で作ったのかな? まぁ、いいや。

 で、果物を見ていたら、赤くて大玉トマトくらいに大きい実を見つけた。

 料理人に訊いてみたら、果物の盛り合わせに使われる果物だそうだ。

 見た目、トマトなのにと思い一個味見で食べてみたら、味がイチゴだった。

 切って断面を見たが、イチゴの中身にそっくりだった、違ったのは、白い部分はなかった。

 この果物の名前は「ポモベーリト」と言われているらしい。

 小さいのもあると言うので、それも使う事にした。

(後は調理器具を見て、何を作るか考えよう)

 僕は使える厨房の所に材料を持っていく。

 持っていく際、面白いものが目に付いた。

 それはダッチオーブンだ。それを見た瞬間、僕は作る物を決めた。

 そのダッチオーブンを借りて、僕はショートケーキもどきを作る事にした。

 まずしたのは、バターと牛乳を鍋に入れて火にかける。

 その間に、卵を混ぜる。途中で砂糖を入れながらひたすら混ぜる。混ぜていたら、角が立つようになる。そこに温めたバターと牛乳を入れて混ぜて、事前にふるいにかけた小麦粉を入れて掻きまわす。

 かきまわした生地を、ダッチオーブンの中にいれて、オーブンの中に焼く。

 この厨房にスポンジケーキを焼く型はないだろうから、ダッチオーブンで代用した。

 ケーキを焼いている間、生クリームに砂糖を入れて角が立ちまで混ぜる。

 混ぜ終わったら、持ってきた大きいポモベーリトを横二等分にしてから輪切りにする。小さいのは四等分にする。

 ポモベーリトが切り終わると、オーブンに入ったケーキを見た。

 うん、竹串を刺したけどついてないから、大丈夫だ。

 僕は網の上にケーキを置いた。直ぐに取れるように、ダッチオーブンには油を塗って置いたので問題なく取れる。

 出したケーキ少し置いて生地を落ち着かせてから、横三等分にしてデコレーションする。

 まずホイップした生クリームを塗り、その上に切った大きいポモベーリトを敷き、その上に生クリームを塗り、等分したケーキを置いて、また生クリームを塗って繰り返す。

 等分したケーキを全て積むと、今度は残ったクリームをケーキに全体に塗る。

 それにより、白いケーキが出来た。

 絞り袋がないので、切った小さいポモベ―リトを乗せるだけだが、これで完成だ。

「後片付けは後でするので、そのままにしておいてください」

「あ、ああ、分かりました」

 さて、行くとしますか。

 作業に夢中で気付かなかったけど、何か僕の周りに人が沢山居たな。暇なのかな?

 僕はケーキに覆いを被せて、王女様が居る所に向かう。

 庭園に着くと、王女様がワクワクしているのが、少し離れていても分かった。

 僕はテーブルに皿を置いて、覆いを取った。

「まぁ、こんなに白い食べ物は見た事がありません。何という菓子なのですか?」

「イチゴいや、違う。ポモベリートケーキです」

「では、さっそく、頂きましょう」

 僕を案内してくれた使用人の人が切り分けて、毒見だろうか、皿に盛りフォークで一口分に切り分けて口に入れた。

「~~~~~~~‼⁈」

 ケーキを食べるのは初めてなのか、その甘さにウットリしていた。

 王女様も毒見した使用人の顔を見て羨ましい顔をした。

 そして、自分用に切り分けたケーキを、フォークで一口分に切り分けて口に入れた。

「~~~~~~~‼‼⁉」

 王女はケーキの甘さに驚き、うっとりした。

 その顔を見て、結果は分かっているのだが、一応聞いておく。

「お口に合いましたか?」

「・・・・・・(コクコク)」

 口を開けたくないのか、無言で頷く王女様。

 それからは、王女様とケーキを食べながら談笑をした。

 僕は一切れしか食べてないけど、王女様は殆ど食べたのには驚いた。

「イノータ殿、いえ、さん」

「はい?」

 今、さんで呼ばれなかった?

「これからは、わたしの事をセリーヌと呼んでくださいね。わたしもイノータさんとお呼びしますから」

「え、ええええっ⁉」

「また、時間がありましたら、このケーキみたいなものを作って下さいね」

 それ、暗に甘い物を食べたい時はお呼びしますと言っているような気がする。

 

 猪田とセリーヌが話していた時。

 エリザ「・・・・・クチュンッ!」

 カドモス「風邪ですか?」

 エリザ「そんな訳ないでしょう。それよりも、早くお父様の所に行くわよ」

 カドモス「はっ」

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