第28話 食事に誘われたので
エリザさんに引っ張られる様に連れていかれた先には、大きなテーブルが置かれていた。
数十人が座っても問題ないほどの幅があった。
そのテーブルに上座にエリザさんが座る。僕は引っ張られた勢いのまま、右隣の席に座った。
良いのかなと思い、僕達から少し遅れて付いて来たヴィオレットを見た。
ヴィオレット達は無言で頷いた。
何故かアズウクレとジュ―リロの二人は笑顔で親指を立てた。
指を立てたと思ったら、今度は親指を人差し指と中指の間に挟んで握りだした。
誰だ。二人のそのサインを教えたのは⁉
ヴェルデドゥ―ルが二人の仕草を見るなり拳骨を見舞った。
あんたもその意味を知っているのかいっ。
「……あの子達、変なサインをしていたけど、何なのかしら?」
エリザさんは分からないのか首を傾げるだけであった。
流石に意味は分からなかったか。ほっとする様な昔と変わらない天然な所に呆れる様な気分であった。
少し遅れてユエ達も追い付いて来た。
僕達が席に着いたのを見て、三人は僕の近くの席に座った。
それを見たヴィオレット達は給仕をしだした。そこだけは昔と変わりないな。
僕達の前に皿が置かれるとカトラリーが置かれた。
そして、今度は大皿がドンっと音を立てて置かれた。
それは数百人分はあるマンガ肉が盛られていた。
何時焼かれたのかは分からないが、プスプスと音を立てていた。
美味しそうな匂いが鼻腔を漂う。
手を伸ばそうと思ったが、流石にエリザさんが手を出すのが先だと思い、僕はジッとエリザさんを見た。
「……貴方達も食べたら」
エリザさんが肉を取ると、僕達に勧めてくれたので、僕達も肉を手に取った。
齧り付くと、昔エリザさんの家で食べた味付けであった。
懐かしいなと思いながら咀嚼していると、エリザさんが話しかけてきた。
「……り、リウイ? これからあなたはどうするの?」
取った肉を豪快に齧り付き咀嚼するエリザさん。
少し咀嚼すると、一気に飲み込んだ。
飲み物を取らずに飲み込むので、喉を詰まらせないか心配であったが、問題なかった。
「どうするって言われても。エリザさんに会えたので、このまま姉さん達が居る所に戻るだけですね」
「そうなの。ふ~ん」
エリザさんはそう答えつつ、何か考えていた。
「……嫌な予感がする」
「奇遇ね。わたしも」
「我が主は生まれ変わっても女たらしな所があるな」
ユエ達がヒソヒソと何か話しているけど、小声なので聞こえなかった。
その後、僕達は雑談を交えながら食事を続けた。