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第57話 王都に凱旋だ。



 ユエと話した数日後。

 僕達は出立の準備を終えて、いよいよ王都へ凱旋する時が来た。

 僕達は幌馬車に乗って、先発隊から順次城を出る。

 城代の人が城の外に出て、僕達を見送ってくれた。

 馬車に揺られながら、僕達は竜騎兵団の合流地点に向かう。

 城を出て五日したところで合流できると言われたので、クラスメート達は別れた人達と再会できる事を喜びながら話していた。

 そんな中、僕は一人思っている事を口に出さずにいた。

(こんな空気の中、竜騎兵団に向かったクラスメートの人達の何人かが死んだの言えないなぁ)

 僕の肩に今も止まっているモリガンが教えてくれた。

 正直、本当かどうか怪しいところだが、神様が言うのだから嘘ではないと思う。

 僕が言わなければ、合流したらいずれ知る事になるだろう。

 でも、僕の口からは言えなかった。

(ああ~、どうしよう・・・・・・・)

 そう悩んでいたら、隣に座っている村松さんが声を掛けてきた。

「イノッチ、どうしたの? 元気ないけど」

「う、うん、ちょっとね」

「うん? 何か疲れる事でもあったの?」

「そうゆう訳ではないよ」

「じゃあ、悩み事?」

「まぁ、そうだね」

「悩みがあるなら聞くけど」

 村松さんがそう言うと、逆隣に座っているマイちゃんが僕を袖をつかむ。

「そうだよ。悩みがあるなら、幼なじみのあたしに、言うべきだよ」

 何か、幼なじみのあたしの所、すっごく強調してない?

 そう思っていたら、今度は村松さんとマイちゃんが僕を挟んで睨み合いを始めた。

「サナダッチさ~、いいかげんイノッチに構うの止めたら。幼なじみというだけで構われた、イノッチも辟易するよ」

「ふっふふん、そこが分からないようじゃあ、セナもまだまだね。ノッ君はあたしがいないと駄目なのよ。まぁ、そこは付き合いが浅いセナには分からないだろうけどね~」

 僕を挟んで、口論は止めてください。

 というか、マイちゃん。何時の間に、村松さんの事をセナと言うようになったの?

 二人の口論をどう宥めようかと思っていたら、僕の正面に座っている椎名さんが、二人の間に居る僕を引っ張り出した。

「うっふふ、猪田君、そんな醜い人達の争いなんかほっておいて、わたしと一緒にお話しましょう」

「えっ、でも」

「いいからいいから」

 椎名さんは僕を自分の隣に座らせようとしたが。

「ノブ、そこよりもわたしの膝を枕にして、寝たらどうだ? 少し疲れているようだし」

 ユエが僕の腕を掴んで引っ張りだした。

 ああ、また睨み合いが勃発した。

「張さん、わたしは猪田君と話をしたいの、邪魔しないでくれるかな?」

「そっちこそ、ノブは疲れているのだ。ならば、疲れを取る為に少し休ませるべきだろう。邪魔をするな」

 今度はユエと椎名さんが睨み合いだした。

 僕は内心、溜め息を吐いた。

 城を出てから、このやり取りはもう何度も見た。

 いい加減、喧嘩を止めて皆仲良く出来ないのかな?

 四人をどう宥めようと考えていたら、服の裾が引っ張られた。

「ねぇ、子豚、王都に帰ったら、屋敷に子豚の部屋を作ろうと思うのだけど、どんな部屋にしたい?」

 エリザさんが僕の顔を見ながら、笑顔で言ってきた。

「どんな部屋って、というか僕は屋敷で暮らすの決定なんですか?」

「当たり前じゃない。子豚はまだ魔法の制御が完全ではないのだから、完全に制御できるまで屋敷に滞在は決まっているわ」

「でも、今屋敷で使っている部屋で十分だと思うのですが」

「あの部屋は来客用だから、あの部屋に居ても落ち着かないでしょう。だったら、部屋を新しくして作って、子豚が落ち着いて暮らせる部屋にした方がいいじゃない」

 何という金持ちの発想だ。

 まるで、某国の王妃様のように「パンがなければ、御菓子を食べればいいじゃない」みたいな発想だ。

 エリザさんの言葉に嵌めると「部屋が落ち着かないなら、新しく部屋を作ればいいじゃない」だ。

 流石に、そこまで厚かましくなれないな。

 と思っていたら、先程まで口論していた声が静かになった

 周りを見ると、先程まで口論していた四人が、凄い目付きでエリザさんを見ている。

「へぇ・・・・・・・」

「ふぅん~」

「ふっ」

「・・・・・・・・・・」

 皆さん、顔は笑っているのに目が笑っていませんよ‼

 ていうか、椎名さん、目のハイライトが無くなっています。

 喧嘩はするなとは言わないけど、ここでするのは止めましょう。

「あ、あの」

「いい機会だ。ここで魔法師団実力を知るのも一興だな」

「そうだね。あたしも賛成だよ。ユエ」

「あったしも~、いっそ最後まで立っていた人を勝ちにしない?」

「ほう、面白そうだな」

「ちなみに賞品は?」

「イノッチを一日自由に使える券」

「「「その、話乗った‼」」」

 エリザさん、貴方師団長なのに、何でそんな事をするのですか。

 それに僕を一日中自由に使えても、荷物持ちか何か作るしか出来ませんよ。

 と、椎名さんがさっきから静かだなと思い見てみたら、顔を俯かせて体を震わせている。

 何か、様子が変だな?

「ユキナッチ、どうかした?」

 椎名さんの様子が変な事に気付いた村松さんが、椎名さんに声を掛けた。

「・・・・・・・・る・・・・・・」

「うん? 何か言った?」

「いいわ。このチャンスで、邪魔な虫を断ちを根こそぎ駆除してあげるって言ったの」

「「「「ほうっ‼」」」」

 わわわ、皆の戦闘意欲が上がりだしたぞ。

 でも、今は行軍の途中だから、止める事は出来ない。

 ここは冷静になるように言わないと駄目だ。

「皆•••冷静に」

「御者、今すぐに馬を止めなさいっ」

「はっ、はい。直ちに」

 御者の人が慌てって馬を止めた。

「外を出たら広い平原があるから、そこで戦いましょう」

「いいだろう」

「さて、あたしも頑張ろうっ」

「あたしは魔法が使えないけど、簡単に倒せると思わないでね」

「ふっふふふ、ふふふふふふふふふふふ」

 皆、自分の得物を構えながら、馬車を降りて行ってしまった。

 数分後。

 平原から凄い大きな音が聞こえて来た。

 その戦いを見た僕は「最終戦争も真っ青なくらいな戦いだ」と思った。

 僕の他のもその戦いを見た人は同じ事を思っただろう。

 結果、五人は八時間にも及ぶ戦いをしたが、誰も立っている人は居なかった。

 五人共、倒れたので引き分けだ。

 その戦いの余波で、渡る橋が寸断された。お蔭で合流する出来る日が三日延びた。

 流石にこれは駄目だろうと思い、僕は五人を説教した。


  合流予定日を三日過ぎてから合流したが、竜騎兵団方々は怒る様子はなかった。

 ただ、団長じゃなくて副団長のシャダムと言う人が対応したのが、不思議だったが、向こうにも事情があると思い、僕達は事情を聞かなかった。

 副団長の話を聞いた後は、分かれていたクラスメート達と合流した。

その場で敵との戦闘になった際に、天城の扇動で青山君達が深追いしてしまい死んでしまったことが西園寺君から知らされた。遺体はもう燃やして、残っているのは遺髪だけだそうだ。

 僕と椎名さん以外は皆、その話しを聞いて驚き、そして涙を流した。

 その場には、天城君は居なかった。

 敵との最後の戦いで天城君に流れ矢が当たったそうだ。

 その矢は毒が塗られており。解毒は済んだのがだ、後遺症で寝込んでいるそうだ。

(モリガンが言っていたのは、本当だったんだ・・・・・・)

 言っていた通りに、クラスメート達が死んだのには驚いたが、事前に聞かされていた所為かショックは少なかった。

 だが、クラスメート達はまだ衝撃から立ち上がる様子はない。

(こんな時に、天城君が居たら・・・・・・・・・)

 彼の根拠の無い自信は、時に人の感情を逆なでする時はあるが、こうゆう、皆が沈んでいる時にあの自信から来る元気さは、皆を立ち上がらせる力になる。

 僕は無理だから、ここはユエか椎名さん又はマイちゃんや西園寺君に立ち上がるように言って貰うしかないな。

 僕が頼もうとしたら。

「皆、青山達が死んだのは悲しいけど、ここは無理にでも立ち上がらないと駄目だよ」

 マイちゃんが皆に声を掛ける。

 その声を聞いて、顔をあげる皆。

「でもよ・・・・・・・」

「ここで皆が落ち込んでも、青山君達は戻って来ないんだよ」

「「「・・・・・・・・・・・」」」

 皆、何も言えなかった。

「だから、皆、立ち上がって青山君達の分も生きて、そして日本に帰ろう!」

「・・・・・・・・そうだな。生きて帰って、あいつ等の分も生きてやるっ」

「そうだ。その通りだっ」

「やるぞ。俺達も‼」

 皆、先程の沈んだ空気を払い、元気になった。

 流石はマイちゃん。皆を元気づけるの上手いな。

「凄いな。マイちゃん」

 僕が何気なく言った言葉が聞こえたのか、胸を張りながら鼻息を荒くする。

「ふっふ~ん、これくらい、わ・た・し・なら簡単だよ‼」

「そ、そうだね」

 僕はそうとしか言えなかった。

 まぁ、実際そうだからいいんだけどね。

 今日は合流して、この野営地で一夜あかして、明日王都に出発すると先程、エリザさんに言われ、僕達は解散した。

 翌日。

 竜騎兵団と共に王都に凱旋した。

 僕達は幌馬車に揺られながら、一路王都に向かう。

 不要

城門に着くと、馬車の幌が外された。

 何で、外すのだろうと思っていたが、それは城門をくぐると分かった。

 城門をくぐると、道の端には王都に住んでる人達が歓声と共に出迎えてくれた。

 幌を外された馬車から、僕達の姿がさらされた。

 住人達は僕達を見て喜びながら、万歳してくれた。

(これを見せる為に、幌を外したんだな)

 それが分かると、僕は笑みを浮かべながら、道の端にいる人達に手を振る。

 僕達の存在を内外に知らしめるために。

 


閑話

合流地点に先に着いた竜騎兵団。

竜騎兵団団長「遅い」

シャダム「我らと違って、機動力と言える物がないので、少しくらい遅れるのはしかたがないのでは?」

竜騎兵団団長「そう思って待っているが、もう夕方になるのだぞ‼ いくら何でも遅すぎるわ!」

シャダム「向こうにも、何かトラブルがあったのかもしれません」

竜騎兵団団長「だったら、遅れる旨を伝令でも何でもいいから、寄越すだろうが!」

シャダム「向こうにも、何か理由があるのでしょう」

竜騎兵団団長「ええい、これだから七光りは」

 その日の夜。

竜騎兵団団長「グ~」

竜騎兵団部隊長A「・・・・・・誰もいないな?」

竜騎兵団部隊長B「ああ、ダイジョブだ」

竜騎兵団部隊長C「この団長、俺達の憧れであるエリザ様を侮辱しやがった」

竜騎兵団部隊長A「判決は?」

竜騎兵団部隊長B「死刑」

竜騎兵団部隊長C「死刑」

竜騎兵団部隊長A、B、C「「「我らの憧れを侮辱した罪は、その命で償え!」」」

シャダム「お前達、何をしている⁉」

竜騎兵団部隊長A「む、副団長」

竜騎兵団部隊長B「止めないでください。副団長」

竜騎兵団部隊長C「こいつは俺達を怒らせた」

シャダム「お前達の気持ちは分かるが、殺したら後が面倒だ。半殺しにしろ」

竜騎兵団部隊長A、B、C「「「おおおお、流石は副団長」」」

シャダム「コホン。この場では、副団長ではなく、閣下と呼ぶように同志よ」

竜騎兵団部隊長C「失礼いたしました。エリザ様親衛隊隊長閣下」

シャダム「よろしい。それと、わたしも加わってもいいか?」

竜騎兵団部隊長A、B、C「「「どうぞどうぞ」」」

シャダム「では、さっそく」

開けて朝。

シャダム「団長は寝返りで、ベッドから落ちてしまい怪我をされた。団長には怪我の回復に努めてもらいたいので、団長に報告する事項があったら、わたしに報告するように」

竜騎兵団各部隊長、全団員「「はっ、承知しました」」

シャダムは団員達に報告を終えた。だが、一人の部隊長がシャダムに近付く。

竜騎兵団部隊長A「閣下、今夜のエリザ様を讃える会は、何処の陣幕で行いますか?」

シャダム「今夜はわたしの陣幕で行う。時間は夜になったら、各自自由に来るように」

竜騎兵団部隊長A「はっ、同志に伝えておきます」

部隊長はその場を後にした。

実はエリザ本人は知らないが、非公認ながらエリザ様親衛隊と言われる秘密の集まりがあった。

エリザを崇め、讃え、見守り続けるという掟を守る紳士達によってできた集まりだ。

この集まりに入っている者は、全王国軍の六割にも及ぶ。

中でも一番多いのが、ここ竜騎兵団だ。団員の二割はエリザ様親衛隊の隊員だ。

今宵もエリザの魅力を多くの人に伝える為、親衛隊員たちは集まる。

シャダム「今宵もエリザ様の魅力を世に広める為に」

竜騎兵団に所属しているエリザ様親衛隊全隊員「我らの憧れに、祝福を」

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