第23話 入るなり
目の前にドラゴンが居るのを見て、僕はどうして此処に来たのか思い出す。
ダンジョンに向かう人たちの列に並ぶ事、数時間後。
ようやく入り口に到達した。
入り口には受付があり、列に並んでいる人達は其処で受付の人に少し話をして、から受付の奥にある道を進んで行った。
ダンジョンに入る為に受付しないといけないのか。
「……ふむ。受付があるのは、恐らく入った者達の人数確認と出てこなかった者達の捜索をするという所か」
ユエは受付がある理由を自分なりの考えで呟いた。
「だろうね。でも、ダンジョンと言うから、入った人達が出て来なかったら、そのままにされると思ったよ」
ダンジョンと言うので、ダンジョンに入った人達が何らかの理由で出る事が出来なくなり、無くなった場合は、遺体はそのままダンジョン内の魔物に食われるか、ダンジョンに吸収されるのかと思った。ダンジョンに吸収されるというは、流石にゲームの中だけか。
そんな事を思っていると、僕達の前の人が受付を済ませてダンジョンに入って行った。
「次の方、どうぞ」
受付に向かおうとしたが、誰かが裾を引っ張った。
誰だと思い振り返ると、裾を引っ張っていたのはユエであった。
「どうしたの?」
「誰をリーダーにするか決めていなかったからな。誰にする?」
「ああ、そうだね」
見た目的に僕は無理なので、ユエかリリムか椎名さんか。
「……じゃんけんで決めて」
「そう言うと思って、昨日の内に決めておいた」
「早いねっ」
「まぁ、こうなるかも知れないと思ってな。ミリアリア殿が居れば、ミリアリア殿に任せるつもりであったが、居ないのであれば仕方がない。此処は不肖、わたしがしよう」
ユエがそう言うと、椎名さんとリリムは不満そうな顔をしていたが文句を言わなかった。
文句を言わないという事は、ユエがリーダーに決まった事を承諾したという事か。
どんな方法で決めたのかは知らないが、まぁ、決まったのであれば良いや。
「じゃあ、任せたよ」
「任せろ」
ユエがそう答えると、受付に向かった。
受付の人と少しだけ話すと、僕達の元に戻って来た。
「もう入って良いそうだ」
「ミリア姉ちゃんはどうしたらいいのかな?」
「ミリアリア殿は一人で入ってもらう事になるな。まぁ、ダンジョン内で合流すれば良いだろう」
「成程」
なら、良いか。
そう思い、僕達はダンジョンへ入って行った。
山を改造して作られたからか、薄暗く全体的にゴツゴツしたつくりであった。
初めてダンジョンという物に入るからか、辺りをキョロキョロと見回していた。
「リウイ様。手を繋ぎますか?」
「要らない」
幾ら暗いからって、手を繋げる訳ないだろうに。
そう思いながら、道を進んでいると、つま先に何かが引っ掛かった。
何だと思い足元を見た。
其処には、何かの平べったい石が道に埋まっていた。
地面から少しだけ出ているので、それがつま先に引っ掛かったのだと思い、特に気にする事なく、その石を踏んだ。
その瞬間、その石に魔法陣が浮かび出した。
声を上げる暇もなく、魔法陣は飲み込んで消えた。