閑話 エイプリルフール
今回の話は第三者視点です
これは、まだリウイが魔国に居た頃の話。
まだ領地を任せる前、姉達と共に城で暮らしていた頃。
前世の記憶を思い出しながら、勉学に励んでいたある日。ふと思った事があった。
(こちらの世界で前世の世界の風習を根付くだろうか?)
前世の時から好奇心旺盛で、興味ある事はとことん調べるという性格は生まれ変わっても変わる事はなかった。
一度、そう思うとリウイは試さずにはいられなかった。
そう思い部屋を見ると、乳母子のアルティナが部屋を掃除している所であった。
丁度良いとばかりに。リウイはアルティナに話しかけた。
「ねぇ、ティナ」
「なに?」
「ティナは僕の事をどう思っているの?」
「はぁ? そ、そんなの・・・・・・す、好きに決まっているじゃない。って、何を言わせているのよ。馬鹿っ」
顏を赤くし照れ隠しの様に怒るアルティナ。そんなアルティナにリウイは微笑んだ。
「そうか。でも、僕は嫌いかな」
微笑みながら言われたので、アルティナは言葉の意味を理解するのに時間が掛った。
時間が経つうちに、言葉の意味を理解して表情が死んでいくアルティナ。
「な~んて、嘘だよっ。……って、ティナ?」
リウイが嘘だと言ったが、ティナは目に涙を溜めながらプルプルと身体を震わせていた。
「う、う~、りういのばかあああああああああっ」
大声をあげて泣きながら部屋を出て行くアルティナ。
まさか、此処まで効くとは思わなかったリウイ。
慌ててアルティナの後を追い掛けた。
「ふ~ん。エイプリルフールね。人間の国にはそんな風習がある国があるんだ」
後を追い掛けて、追いついたリウイはアルティナにそう言った事の理由を話した。
多分、この世界の全ての国にこんな風習があるとは思えないので、ある国があると教えながら。
若干目が赤いのは泣き止むまで目を擦っていたからだ。
「でも、嘘だからって、あんな事を言うのはどうかと思うわよっ」
「ごめんなさい」
アルティナが睨むので、リウイは頭を下げて謝った。
「でも、何か面白い風習ね。誰かを嘘をついて驚かすというのも、ねぇ、誰かにしてみない」
「誰かにって、誰に?」
リウイが訊ねると、アルティナは指差した。
アルティナが指差した先は城内にある東屋で、其処にはリウイの姉達が茶会をしている所であった。
「リウイの姉さん達を驚かすとか面白そうじゃない」
「う~ん。確かに。でも、どんな事を言えば驚くかな?」
リウイの中では大抵の事で騙される事がないという印象が強い姉達。
騙すにしても、余程の事でなければ騙されないだろうと思っていた。
「そんなの簡単よ。耳貸しなさい」
アルティナが自信満々に言うので、どんな事を言うのだろうと思い耳を傾けるリウイ。
話を聞き終えたリウイは東屋へと向かった。
其処に居たのはイザドラ、フェル、ミリアリアの三人であった。
リウイが歩いて来るのが見えたのか、ミリアリアが目を向けた。
「あれ? リウだ」
「リウイもお茶を飲みたくなりましたか?」
イザドラが手招きするので、リウイはその傍まで行く。
「姉さん達、茶会をしている時にお邪魔してごめんなさい」
リウイが邪魔した事を謝ると、四人は首を振る。
この頃、リウイは姉達の事は「~姉さん」と言っていた。
「可愛い弟が来たのだから、気にする事ではないわ。ウ~ちゃん。さぁ、此処に座りなさい」
ヘルミーネは首を振り、フェルは自分の膝に座る様に手招きした。
「フェルよりも、わたしの方が良いですよ。リウイ」
イザドラは自分の膝の上に乗る様に言うが、リウイは首を振る。
「いえ、お邪魔しても悪いので、伝えたい事を伝える為に来たので」
「伝えたい事?」
「何かしら?」
イザドラ達は何を伝えたいのだろうと思いつつ、リウイを見る。
「実は、先程父上の使者が来て、僕に許嫁が出来たので、明日連れて来るそうですっ」
笑顔で言うリウイ。
それを聞いたイザドラ達は目を丸くした。
「……そんな話、聞いておりませんが?」
イザドラは初耳とばかりに訊ねた。
「僕も先程聞いて、驚きました」
リウイも初めて聞いたとばかり驚いていた。
「そうですか。ふぅ…………すいません。ちょっと、所用を思い出したので、席を外しますね」
イザドラがカップを置いて、皆に一礼し東屋を出て行った。
(あれ? 思っていたよりも反応が薄い)
リウイとアルティナの中では、大声をあげて驚くだろうと思っていたのだが、皆静かなので拍子抜けしていた。
「ねぇ、イザ姉は何処に行ったと思う?」
「間違いなく御父様の元でしょうね。父上、朝日を拝めるかしら?」
フェルがそう言うと、ミリアリアは笑った。
「あははは、流石に殺さないよ。多分、当分は起き上がるのも無理だと思うけど」
「……えっ?」
フェルとミリアリアの話を聞いて、逆にリウイが驚いていた。
その日。
リウイ達の父であるオルクスがイザドラの拷問を受けた。
拷問した理由については、本人は「勝手に可愛い弟に許嫁を作った事の抗議」と言っていた。
その話を聞いたロゼティータがイザドラを説教しながら、どうしてこのような事をしでかしたのか訊ねると、リウイがそう言ったのを聞いたと言うので、今度はリウイとアルティナが説教される事となった。
数時間に及ぶ説教を受けたリウイ達は、もう二度とエイプリルフールはしない事を心に決めた。




