第21話 ダンジョンに行く前に
三人を宥めるのに時間が掛ったが、何とか宥める事が出来たので、僕達は宿を後にした。
宿に後にした僕達は歩いていたのだが、ダンジョンにはどう行けばいいのか分からなかった。
そう思っていると、歩いている人を見つけた。
「すいません。少しお聞きしても良いですか?」
「はい?」
「ダンジョンに入りたいのですが。どう行けばいいのですか?」
僕がそう訊ねると、訊ねられた人は僕達を見て、直ぐに何を言っているのか察したのか頷いた。
そして、今朝見た列を指差した。
「あの列が何か?」
「あれは、ダンジョンに入る為の手続きをする連中が並んでいるんだよ。あの列に並べば、ダンジョンに入る事が出来るぞ」
そう訊いて僕達は列を見た。
今朝見た時は驚いたけど、何の為に並んでいるのか分かった。
「教えてくれてありがとうございます」
「いや、頑張ってな」
僕が礼を述べると、訊ねた人は手を振って何処かに行った。
教えられた通り、僕達は列に並ぶ事にした。
宿から見て思ったが、長い行列だと思っていたが長かった。
僕達が列に並ぶ為に最後尾に行く為に、かなりの距離を歩かされた。
そして、ようやく最後尾に着いたので並んだ。
並んでいると、少しずつだが列は進んでいたが、今日中にダンジョンに入れるのか不安になってきた。まぁ、今日中には入れるだろうと思う。多分。
「おいおい、もうかなり並んでいるぞっ」
「マジで? ああ~、お前が寝過ごすからっ」
「うるせえ。そう言うのなら、お前が酒場で女を口説いて、そのまま俺達に何も言わないで何処かにふけこんで探すのに時間が掛ったからだろうっ」
後ろの方から怒鳴り声が聞こえてきたので、振り返った。
其処には柄が悪い三人組が居た。
武装している所を見ると、恐らくダンジョンに挑む人たちなのだろう。
「おい、静かにしろよ」
「へいへい…………おっ」
「どうした?」
「見ろよ。前に居る奴ら」
「うん? あ~」
柄が悪い人達が僕達に視線を向ける。
その視線から、何か良からぬ感じがするな。
それを察したのかミリア姉ちゃんが柄が悪い三人に近付く。
「ねぇ、わたし達を見ているけど、何か用?」
「あ、ああ、そうだな」
「見た所、お宅らはダンジョンは初めてだろう? じゃあ、俺達が教えてやろうか?」
男達がニヤニヤしながら言うと、ミリア姉ちゃんは少し考えていた。
しかし、長年ミリア姉ちゃんを見ているから分かる。あれは考えている様に見えて、何も考えていないんだ。
「ん~、いらないや」
ミリア姉ちゃんがそう言うと、男達はムッとした。
「おいおい。それは無いだろう」
「ダンジョンは素人が簡単に行けるとこじゃあねえぞ」
「まぁ、此処は俺達に任せておけば良いぜ」
そう言って男の一人がミリア姉ちゃんの肩に手を掛けようとしたが。
「触るな」
ミリア姉ちゃんは笑顔で男の腕を掴み握り潰しそうなぐらいに力を込めた。
「ぎゃああああっ、いて、いてええええっ」
男は腕を握られて悲鳴をあげた。
「おいっ」
「てめえ、なにしや」
仲間が苦しんでいるのを見て、男達は得物に手を掛けた。
それを見てミリア姉ちゃんは笑みを浮かべた。
その笑みは獲物を前にした肉食獣の様であった。
「あ~、得物を抜いちゃったんだ。じゃあ、これはせーとーぼうえーって奴だね」
ミリア姉ちゃんはそう言って、男の腕を圧し折った。
「ぎゃあああっ」
「五月蠅いよ」
ミリア姉ちゃんは平静な声で男の顔を殴った。
男は鼻を潰され、赤い血を流したが、意識はあるようで両手で鼻を抑えた。
「あははは、此処の所、大して動いてないから、だんじょん?に入る前の肩慣らしをさせてねっ」
そう言ってミリア姉ちゃんは狂笑しながら男達に襲い掛かった。
安らかに眠り給え。南無。