第19話 行動あるのみ
今年最後の投稿です。
皆様、良いお年を
それなりに高い宿に入った。
部屋は二人部屋一つと個室が三つしか残っていないと宿の主人が言ったので、どういう部屋割りにするか話し合った所。
「此処は公平にじゃんけんで決めようでは無いか」
ユエがそう言うとリリムと椎名さんが同意とばかりに頷いた。
流石に反対しようと思ったが、三人の気迫に押されて言葉が出なかった。
ミリア姉ちゃんは首を傾げていた。
「……じゃんけんってなに?」
「ああ、そうか。ミリア姉ちゃんは知らないか。魔国ではこういう場合はコイントスで決めるからな」
僕はミリア姉ちゃんにじゃんけんのルールを簡単に教えた。
説明を聞いた姉ちゃんは感心しながら指を動かしていた。
「説明は終わったか? では」
ユエが何か〇メハ〇波でも放ちそうな構えを取り出した。
「ふふふ、負けないわよっ」
椎名さんも両手を重ねて龍の口の形を模した構えを取り出した。
「わたし、じゃんけんは強いんですよ」
リリムは投球フォームの様な構えを取り出した。
あれ? じゃんけんだよね? 戦うとかする訳じゃないよね?
「これがジャンケンの構えなんだ。へぇ~」
三人が変な構えを取るのでミリア姉ちゃんも悪乗りしだした。荒ぶる鷹のポーズを取りながら感心していた。
「ミリア姉ちゃん。信じないでください」
じゃんけんする度にそんなポーズを取っていたら、只の痛い人だよ。
「リウ。始めようよ~」
四人が変な構えを取るので、頭を痛めつつ僕も拳を軽く握った。
「「「最初はグー。じゃんけん」」」
と僕達で言った後で出したのは僕とミリア姉ちゃんはパー。ユエと椎名さんとリリムはグーを出した。
「やった。わたしのかち~」
ミリア姉ちゃんは初めてじゃんけんをして勝てた事が嬉しいのか喜んでいた。
「不覚っ。拳に力を入れ過ぎたっ」
「何で、グーを出すのよっ」
「お前だって出しているだろうっ」
リリムは心底悔しそうな顔をしており、ユエと椎名さんは「負けたお前が悪い」とか「じゃんけんをする様に言って負けた貴女が悪い」とか言って口喧嘩していた。
やれやれ、事あるごとに口喧嘩するなこの二人は。
「リウ。疲れたから早く部屋にいこう」
「はいはい」
ミリア姉ちゃんが部屋に行こうと促すので、三人を放って僕達は宿の主人から鍵を貰い部屋へと向かった。
用意された部屋はそこそこ大きく綺麗であった。
「う~ん。ちょっと固いけど、こんなものか」
ミリア姉ちゃんはベッドに飛び込んだ。それで思っていたよりもベッドのマッドが固い事に不満そうな声をあげる。
「仕方がないよ。旅先のベッドなんだから」
寧ろ払った値段で柔らかかったら、チェックアウトをした時に法外な値段が取られるのでは?と思ってしまうな。
「う~ん。確か……ところで、リウ」
ベッドにゴロゴロと転がるミリア姉ちゃんが訊ねて来た。
「なに?」
「これからどうするの?」
「ああ、そうだな」
此処まで来たのだから、一目見るぐらいはしても良いな。
だが、そうなると」
「ダンジョンに入らないといけないのか」
「そうなるね。魔国ではなかったから、どんな所か楽しみだね~」
まぁ否定はしないな。
「魔国にもあったら僕も行っていただろうな」
「はぁ? 何を言ってるの。そんなの無理に決まっているじゃん」
「どうして?」
それは僕の実力が足りないという事か?」
「イザ姉とロゼ姉がリウをダンジョンに行かせると思う?」
「……あ~」
あの二人なら反対するな。
というか、イザドラ姉様だったら僕が行くと言ったら、先んじて潰すかも知れないな。
そう考えて居ると何処からか寝息が聞こえて来た。
何処からか聞こえるのだろうと、首を動かしていると隣のベッドでミリア姉ちゃんが眠っていた。
さっきまで普通に話していたのに。
自由人だなと思いつつ、僕も一眠りする事にした。