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第17話 こういうのを作ってよ

 副都を出てそれなりに移動し、時刻は夜になろうとしていた。

 近くに町は無かったので、今日は野営となった。

「ユエ~、布を引っ張って」

「分かった」

「チャンチャン。ペグを頂戴」

「セナ。その呼び方は止めろと言っているだろう」

 マイちゃん達はテキパキとテントを準備していた。

「……味付けはこれで良いかしら?」

「……ふん。案とも間の抜けた味ですね。塩が足りませんよ」

「それじゃあ、味が下品になるでしょう。これで良いの」

「い~え、これでは足りません。もっと塩を」

「ちょっと、止めなさいよ」

 リリムと椎名さんが調理しているが、何か凄い揉めている様に見えるな。

 これは口を出した方が良いかなと思い、調理している所にいってみた。

「どうかしたの?」

「リウイ様。いえ、お気になさらずに」

 リリムが笑みを浮かべつつ、椎名さんを横目で見る。

「どうも、この者が作る料理はイマイチでして、これでは龍にならなくても嫁の行き手などは無かったでしょうね」

 鼻で笑うリリム。

「何を言っているの。貴方の味付けが下品だから、そう言っているだけでしょう」

 自分の味付けを非難をされて怒る椎名さん。

 そんなにイマイチな味付けなのかなと思いながら、お玉で掬い味見した。

「……上品な味付けだな」

 前世の世界風で言えば京風と言うべきかな。醤油とか塩味よりも出汁の味と香りが味あわせてくれる感じだ。

 これは、リリムの味付けと合わない筈だ。

 リリムはどちらかと言うと、濃い味付けを好むからな。まぁ、身体を動かす人の好みだから仕方がないと言えば仕方が無い。

「なになに、どうしたの?」

「見た所、半端者に味付けに難癖つけられたのか?」

 テントを張り終えたのか、マイちゃん達がやって来た。

「あながち間違いではないけど、試しに飲んでみて」

 僕はそう言ってお玉でシチューを掬うと、マイちゃんが受け取り味見をした。

「……う~ん。塩味が足りないね」

 マイちゃんは味見するなりそう言うと、リリムは頷いた。

「どれ……いや、これで良いだろう」

 ユエもお玉で掬い味見すると問題ないと言う。それを聞いて椎名さんは不承不承んがら頷いた。

「ええ~、塩味が足りないでしょう」

「これで十分であろう。野営とはいえ、あまり濃い味付けの物を食べると、塩分過多で血圧が上がるぞ。マイ」

「でも、これは物足りないって」

 今度は四人で味付けで口論になった。

 これは下手に係わると面倒な事に成るなと思いながら見ていると、肩を叩かれた。

「村松さん」

「セナで良いって言っているのに。ウ~君は固いね~。まぁ、其処が良い所だけど」

 そう言って村松さんは頭を撫でてきた。

 前世の同級生に子供扱いされるのは、変な気分だな。

「こっちは良いから、あっちをどうにかした方が良いと思うな」

 そう言って村松さんが指差した先には、ミリア姉ちゃんが今まで見た事がない真剣な顔でイザドラ姉上から貰ったバックパックを見ていた。

「あ~。あれはね。どうしたら良いだろうね」

 姉上も善意でくれた物だからな、その上で味の感想も聞きたいと言っているから捨てる事も出来ないからな。

「一緒に食べたら?」

「う~ん。どうしよう」

 流石にあの味付けを味あわせるのは可哀そうだと思う。

 僕達の場合は、ソフィーが辛味を緩和する物を用意してくれたが、流石に此処では用意してないからな。

 かと言って、一緒に食べるのもな。

「まぁ、ミリア姉ちゃんなら何とかするだろう」

「そうだね。ねぇ、暇だから、ゲームしない?」

「良いけど、何をするの?」

「ババ抜き」

「良いね。久しぶりにやるか」

 僕は村松さん用のテントに入りババ抜きをする事にした。 


 数時間後。


 四人はなんやかんやと揉めながらも、夕食が出来たようなので食べてみた。すると。

「あれ? 味付けが変わった?」

 先程味見した時は、もっと出汁の味がしたけど、今食べている者は甘いんだけど、ちゃんと塩味三感じる事が出来た。

 胡椒も入れているのか、後口でピりっと辛味があった。

「うん。良い味だ。僕好みだ」

 顔を綻ばせながら食べていると、ミリア姉ちゃんが驚いていた。

「嘘だ! ……あっ、ほんとだ」

 ミリア姉ちゃんは匙で掬い口の中に入れると、美味しいので驚いていた。

「良い味付けだね。誰が作ったの?」

 シチューは誰が作ったのか訊ねると、マイちゃん達は一斉にミリア姉ちゃんを見た。

「ミリア姉ちゃんが?」

「結局、シチューの味付けで揉めていたら、ミリアリア様が着て『此処はわたしに任せなさい』と言うのでお任せしました」

 リリムがそう言うので、僕はミリア姉ちゃんを見る。

「え、ああ、うん。そうだよ~」

 何か視線を合わせてくれないのは、何故だろうか?

 …………ああ、もしかしてっ。

「まさか、姉上が作ったシチューを出したの?」

「えっ⁉ 何で分かったの?」

「何かそんな気がしたんだ。それにしても……」

 改めてシチューを味わった。

「普通に美味しいけど、何で?」

 最初に食べた時はあんなに辛かったのに。

「時間が経って辛味が抜けたとか?」

「あ~」

 そう言われて納得した。

「うん。この味付けは良いね。僕好みだ。どうして、姉上はこんな風に作れないのかな?」

「激辛好きだから仕方がないんじゃない」

「確かにそうだね」

 僕は美味しく食べていると、何故かマイちゃんが戦意を滾らせた顔をしていたが、何故?

 リウイ達が夕食を食べているのと同じ頃。

 イザドラが作ったシチューがまだ残っているというので、ロゼティータ達も食べる事となった。

 下手に他の者に食べさせたら、魔国の威厳に係わると思ったからだ。

 そんな思いで食べてみたが。

「何じゃ。美味しいでは無いか」

 最初食べた時に比べると辛味が格段に弱まったのでロゼティータは驚きつつも満足そうに頷いた。

「本当にね~」

 フェルも同感なのか頷いていた。

「……美味しい」

 ヘルミーネも味付けに文句ないのか匙を動かす手を止めなかった。

「う~ん。時間を置いた事で辛味が抜けた様ですね。やはり、土地が変わると調味料の味も変わるのですね」

 作ったイザドラは味付けに不満そうな顔をしていた。

(((どうして、最初からこういう風に作れないのだろう?)))

 ロゼティータ達は心底そう思った。

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