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第13話 料理が出来るのが、こんなに怖いとは

 イザドラ姉上に押される様に僕達は食堂に案内された。

 食堂内は嗅いだだけで涙が出そうな位に辛い匂いが充満していた。

 鼻が良い種族の者達は布で顔を抑えながら食堂から逃げて行った。

 ……それを僕達が食べるのかと思うと、恐怖しかない。

「ささ、座って待っていて下さいね。直ぐに持って来るので」

 姉上に促される様に僕達は席に着いた。

 そして、姉上は厨房へと向かった。

「……今なら逃げれるかのう?」

「残念な事に無理よ」

 フェル姉は入り口を見た。其処には出て行かない様に扉が閉められているだけではなく、見張の者達も立っていた。

 何か、覆面に酸素ボンベみたいな物しょっている様に見えるのは気の所為だろうか?

「……姉上は激辛好きだからな。甘くしても良いと言っても、その加減が分からないからな」

 ヘル姉さんの言葉に僕達は頷いた。

 何度か辛みを抑えてと言っても、凄く辛い料理を出すのだ。

 本人曰く、かなり辛みを無くしましたよと言っていたが、それでも普通の檄辛ぐらいの辛さだ。

「何時だったか、あ奴と一緒に食事した時『もう少し辛くしても良いですね』と言って懐から自分で調合した辛味調味料を山の様に掛けてたのじゃが。空気で目が沁みた時があったのじゃ」

「会食とか公式の場の時は礼儀なのかそういうのが掛けないけど、私的の場だったら姉さんこれでもかと言うぐらいに掛けるからね」

「……正直、味覚オンチなのではと思った事が何度もあったよ。僕」

 僕がそう言うと姉さん達は無言で頷いた。

「お待たせしました」

 姉上の声が聞こえたので、僕達は声がした方を見る。

 其処にはカートに載せられた大鍋がドンを乗っていた。

 蓋をされているの、何故か目に沁みた。

 僕達は生唾を飲み込んだ。それは美味しい料理を食べれるからでは無く、意を決したからだ。

「魔国とは土地も違うからか、調味料も違っているので味も少し変わっているのは許して下さいね」

 激辛料理しか作らない人が言うとシュールな気がする。

 姉上は蓋を開けると、其処から強烈な匂いがした。

 強い辛い匂いがすると同時に、美味しい匂いも同時に醸し出した。

 ただ、辛い匂いを出すだけでは無く美味しい匂いもするのが質が悪いんだよな。

 僕がそう思っているの気付かず、姉上は深めの皿に料理を持った。

 レードルから皿に盛られる料理の色は白だった。

 それを見て、僕達は首を傾げた。

 姉上が作る料理はいつもは赤か赤茶色なのに今日は白だからだ。

「はい。どうぞ」

 姉上が僕達の前に料理を置いた。

 僕達は皿を覗き込んだ。

 白い液体の中に色とりどりの野菜が浮かび、その中に火が通り茶色になった大きな肉の塊がドンと存在を主張していた。

「ささ、熱いうちにどうぞ。リウイはあ~んしてあげますか?」

「いや、要らない。姉上」

「何かしら?」

「この料理の名前は?」

「これですか。魔国で私が良く作っていた。シチューですよ。肉は名前は聞いていませんでしたが、牛の魔獣の肉だそうですよ」

 は~ん。成程。所謂ビーフシチューって事か。

 僕の前に置かれた時も相変わらず辛い匂いがする。これは相当辛いな。

 折角、姉上が作ってくれたのだ食べないと駄目だよな。

 それに一度、食べるのを拒否したらいじけて後始末が大変だからな。

 そんな思いをするぐらいなら、食べてきつい目に遭う方がマシだと思いながら、僕はスプーンで汁を掬い口の中に入れた。

「……あれ? 甘いぞ」

 一口食べて甘い事に驚いた。

 甘いと言っても、果物や菓子の様に甘いという訳ではなく、ほのかに甘いのだ。

 それでいて塩味も存在する。

 普段と同じく辛みが先に来ると思い食べていたら、甘いので驚いてしまった。

 姉さん達を見ると、同じ気持ちなのか驚いていた。

 これはあれか。土地が違うから、味付けも変わったのか?

 そうだったら嬉しいぞ。

「姉上。今日の味付けは、いつもより…………ふぐっ」

 甘いと言おうとした瞬間、口内に辛味が走った。

 焼ける様に熱く痛いとさえ思った。

 その辛味は喉も襲いだした。

「~~~~~~~~」

 あまりの辛さに喉を抑えて悶える僕。

 涙を浮かべる目で姉さん達を見たが、どうように喉を抑えていた。

「み、みず…………ぐはっ」

 ロゼ姉様が慌てて水を飲んだが、余計に辛味が強くなったのか苦しみ始めた。

 前世で唐辛子の辛み成分は脂溶性だから水を飲んでも辛味が消えないとかいうけど、異世界でも同じなのだろうか?

 そう思いながら、僕達は悶える。

「…………う~ん。やはり、土地が違うからか。辛味が一味足りませんね。今度、本国から取り寄せましょうか」

 姉上はイマイチな顔をしていた。

 何で、僕達が辛くて悶えているのに、この人は平然としているんだ?

 毎度毎度の事だけど、不思議に思う。

 その後、ソフィーはこの事態を想定していたのか凄く甘くしたアイスクリームを持って来てくれた。それとシチューを交互に食べた事で何とか食べきる事が出来た。

 リウイ達が食堂で悶絶している頃。

 食堂のドアに耳を当てて中の様子を窺うマイカ達が居た。

「嫌な予感がしたから付いて行かなくて良かった……」

「料理で悶絶するって初めて聞きました」

「リウイ様。お許しください。不甲斐ない我が身を、どうかご勘弁を」

 アルネブは手を組んで謝罪していた。

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