第11話 幼馴染が汚い大人になった
「やった。勝った勝ったっ」
ティナは料理勝負に勝った事を跳び跳ねる位に喜んでいたが、そんなティナの肩にソフィーは手を置いた。
ティナは肩を叩かれたので、そちらに顔を向けるとソフィーの顔を見てギョッとした。
ソフィーは笑顔だが目が笑っていなかった。
「お、おかあさん……?」
「……今日ほど、貴方に料理を教えなかった事を恥ずかしいと思った事は無いわ」
「いや、でも」
「これが人様に出して食べさせる料理と言えるの?」
「え、でも、美味しいし。リウイも美味しいって」
「美味しい以前に、こんな見た目が悪い物を人様に出してはいけないでしょうがっ」
「ひいい、ごめんさないっ」
「今日という今日は許しません。人様に出しても問題ないの見た目で美味しい料理を作れるようにみっちり仕込むわっ」
「ちょ、りうい、たすけ」
「ごめん。無理」
「は、はくじょうものおおおおおぉぉぉぉぉ…………」
ソフィーはそう言ってティナの手を取って台所に引き摺って行った。
ティナは助けを求めたが、僕は笑顔で手を振った。
まぁ、ソフィーの言う通りだ。今回は僕が食べるだけであったが、これで他の人が食べる事になったらティナの評判が悪くなるからな。
これもメイドの仕事だと思って耐えて欲しい。
「……これはあれね。試合に負けて勝負に勝ったって奴?」
「知らないよ」
マイちゃんがそう訊ねて来たが、僕には分からなかった。
「まぁ、良いわ。とりあえず、リッ君。買い物の続きをしよう」
「……暇だから良いか」
「ちょっと、それはあまりに幼馴染甲斐がないんじゃない?」
前世なら分かるけど、今世で言われてもな。
ぶっちゃけ、今の僕は前世の記憶を引き継いでいるだけだから、幼馴染でも何でもないんだが。
敢えて言うのなら友人?かな。
「とりあえず、買い物に付き合いなさいよ」
そう言ってマイちゃんは僕を抱き締める。
「う~ん。何かリッ君のお姉さん達が抱き締めるの気持ちが何か分かるわ~」
「ちょっ、良いの。さっきの勝負に負けたのは変わりないんだから、くっつくのは止めないと駄目だよ」
「ああ、それね。あのティナって子が居る前はくっつくか無いわ。あの子が居ない時にくっついても良いでしょう」
うわぁ、屁理屈をこねて来たよ。この人。
「良い大人が屁理屈をこねるなよ」
「千年も生きていると、一つ分かった事があるわ」
「それはなに?」
「屁理屈も一つの方便」
それは要するに嘘をついても良い言う事だね。
汚い大人みたいな事を言うな。
「そ・れ・よ・りも。早く買い物に行こうよ」
「はいはい。分かりました」
マイちゃんが引っ張るので僕は付いて行く事にした。
一応、護衛としてアルネブとアマルティアを連れて行った。
丁度祭りが行われていると言うので、買い物は問題なかったが。
「ふふふふふふ」
「くくくくくく」
「ふふん」
何か三人が笑いながら目で牽制していた。何故?