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第10話 新旧幼馴染の対決

 ティナが不機嫌そうな顔で僕達を見ていると、何か思い至ったのか気持ちを落ち着かせる為に深く息を吸って吐きだした。

「ティナ?」

「……其処の女、あたしと勝負しなさいっ」

「「はい?」」

 勝負? まさか、戦うと言うのか?

 正直に言って、止めた方が良いと思うのだけど。

「ふ~ん。面白い事を言うのね。わたしと勝負? わたしに勝てると思っているの?」

 マイちゃんは明らかに、ティナを侮った顔をしていた。

「ティナ。勝負って言うけど、何の勝負をするの?」

 勝負内容によっては、やんわりと止めさせないとなと思いながら、どんな勝負をするのか訊ねた。

「今はお祭り中だから。此処は平和的に料理で勝負よっ」

「なん、だと…………」

 マイちゃんとティナが料理勝負? これはまずい。非常にまずいぞ。

「わたしが勝ったら、リウイに身体をくっつけるのを止めてもらうわ」

「へぇ、じゃあ、わたしが勝ったらどうなるの?」

「今度から、あんたがリウイに何をしても口を出さないわ」

「あら、面白いわね。良いわ。その勝負を受けてあげるっ」

 まずい。非常にまずいぞ!

 マイちゃんはハッキリ言って、自分は料理が出来ると思い込んでいる激マズ料理を作る人。

 ティナの料理の腕は僕は知らない。

 そんな、二人の料理を食べるなんて出来る訳が無い! これは止めさせないとっ。




 と思ったけど。

 二人は『翔鵬商会』の店の台所で料理を作っていた。

 僕は必死に止めたけど、二人は聞く耳を持ってくれなかった。

「あの子、料理はそんなに得意ではないのに、大丈夫かしら?」

 久しぶりにあるティナの母親であるソフィーも手をこすり合わせてハラハラしていた。

 僕は胃薬を用意して急遽作られた審査員イスで料理が出来るのを待っていた。

 処刑台に送られる死刑囚はこんな気持ちなのだろうか?

 途轍もなく怖くて不安だ。

 そんな思いに胸を一杯にしていると、二人は厨房から覆いを被せた料理を持った皿を以って出て来た。流石に何処かのアニメの様に持っている皿が溶けるという事は無いか。

 まぁ、流石にそんなの出されたら、全力で逃げたけどね。

「出来たわ。わたしの自信作」

「ふふん。あたしの方が美味しいに決まっているわ」

 そう言って二人は睨み合う。

 マイちゃんは凄い自信満々だが、前世の時に食べさせられた料理の味を覚えている僕からしたらどうして、そんなに自信があるのか不思議でならなかった。

 ティナはソフィーの話しぶりから、料理はあまりしないのに凄い自信あるね。

「では、まずはマイカさんの料理から頂こうか」

 今、僕達が居る場には僕とマイちゃんが前世の幼馴染だと知らない人達しか居ないので、さん付けで呼ぶ事にした。

 先にマイちゃんの方を選んだのは、不味い料理を食べておけば気持ちも楽になる。万が一の可能性でティナが料理が旨い事も考えられるからな。

「ふふん。わたしはこれよっ」

 マイちゃんが覆いを取ると更に盛られていたのは、小判型に形作られた茶色の物体であった。

 赤い液体が少しだけ欠けられ、彩りに茹でた人参? とインゲン? の様な物が盛られていた。

「マイカさん。これは?」

「ハンバーグステーキ」

 胸を張るマイちゃん。

 ふむ。見た目はハンバーグだな。

 しかし、マイちゃんならばハンバーグは中に火が通ってない事も考えられるな。

「さぁ、どうぞ。お試しあれ」

 マイちゃんはそう言って皿をテーブルの上に置いた。

 僕は唾を飲み込み意を決して、ナイフをハンバーグに入れた。

 ナイフは何の抵抗もなくハンバーグに入った。

 フォークを使って断面を見ると、中までちゃんと火が通っており断面から肉汁が出て来た。

「何だ。思ったよりも美味しそうだな」

 もしかし、この千年で料理の勉強でもしたのかな?

 これなら、安心して食べられる。

 そう思いフォークに突き刺したハンバーグを口の中に入れた。

「・・・ぐふっ⁉」

 切ったハンバーグを噛んだ瞬間、言葉では形容しがたい味が口の中で溢れだした。

 まるで、口の中に爆弾と爆発された様な味だ。

 僕は口を押えて、トイレへと向かった。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………久しぶりに味わった」

 まさか、見た目はまともで味は最悪と来たか。

 これは流石に予想しなかったな。

「ねぇ、リッ君。点数は?」

「……ティナの料理を食べてから教えます」

 ティナの料理はどうなのかな? どうか、美味しい見た目で普通な味であります様に。

 そう祈っていると、ティナは覆いを取った。

 皿に盛られていたのは赤、青、白、緑、黄色、黒の六色に輝くソースが掛けられた長粒種の米であった。その米も色が白ではなく紫色であった。更に、そのソースの上には青い太い千切りにされた物が乗っかていた。

 その料理を見てソフィーは手で顔を覆った。

「…………ティナ」

「なに?」

「この料理の名前は?」

「わたしの得意料理のヴィルーヤ・ギーよ」

 ティナは胸を張って答えた。

 自信満々なのは良いが、何と言うか。うん。あれだ。

 見た目で食欲が減退するな。

 どうか、普通の味であります様に。

 そう祈りながら、スプーンで掬い口の中に入れた。

「…………あれ? 意外に美味しい?」

 一口食べてみると、美味しい事に驚く。

 甘味と酸味と塩味と辛味と苦味と渋味が見事に調和していた。

 どれかの味が一つでも強ければ、味のバランスが崩れるという味だ。

 意外にというか美味しいな。いや、普通に美味しいな。見た目はかなり悪いけど。

 そう思いながらスプーンを動かしてティナが作った物を食べた。

 皿を綺麗になるくらいまで食べると、僕は布巾で口元を拭い宣言する。

「勝者、ティナっ」

「やった‼」

「何で⁈」

 ティナは喜び、マイちゃんは信じられないという顔をしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] (๑╹ω╹๑ )流石に地球人(?)以外にケミカルキッチンメーカーはいませんね。
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