第6話 ちょっと副都に寄ろうか
竜人君達の訓練と言う名の地獄から助け出す事は僕には無理だった。
心の中で謝りつつ、僕はブリッジへ向かう。
ブリッジでは艦長席にイザドラ姉上が足を組んで座っていた。
その座っている姿ですら様になっているのは美人だからだろう。この人、僕に係わらないと冷厳ながらも優秀なんだよな
ブリッジのクルーたちも同じ思いなのか、少しも不調も変化を見逃さないとばかりに仕事に専念していた。
聞きたい事があったので来たが、聞いても大丈夫そうだな。
「姉上」
「ああ、リウイ」
姉上はそう言って椅子から立ち上がり僕の所まで来た。
「どうしたのです?」
「ちょっと聞きたい事があって」
「良いですよ」
そう言って僕の両脇に手を入れて持ち上げると、そのまま艦長席に戻った。
先に自分が座り僕を膝の上に乗せた。
身長差があるのは分かるが、何か子供扱いされているな。
「それで聞きたい事は何ですか?」
「うん。この船の補給の事だけどさ」
「そうですね。そろそろ、何処かで物資から何からの補給をしたいと思っていました」
「それでさ、公国の副都に行かない」
「あそこですか。確かに補給するのであれば、あそこが一番ですね」
「でしょう。それに店がどうなっているのか気になるし」
久しぶりに戻ったら、店が無くなったという事はないだろう。
そんな事が起こったら、報告が来るはずだ。
「ふむ。我々もハノヴァンザ王国以外で交流を持っている所はないですし。良いと思います」
母方の祖父の関係で『八獄の郷』と交流を持っているので、交流を持っていないと言えるのは分かるけど、ハノヴァンザ王国の場合は侵略しているの間違いじゃないのか?
「ふむ。リウイの言う通りですね。流石はリウイですね~」
そう言って僕を抱き締める姉上。
この頃、ジタバタ暴れると余計に拘束されると分かり暴れないで姉上の好きにさせて飽きたら離れる様にする事にした。
「そう言えば、姉上。前々から思っていた事を聞いても良い?」
「何です?」
「姉上はマイちゃん達がどうして嫌いなの?」
「そんなのリウイに近付いて来るからに決まっているでしょう」
即答で言ったよ。この人。
「じゃあ、能力的にはどうなの?」
「そうですね。まぁ、人間にしては出来る方と言えるでしょう。あの龍モドキと蝙蝠女とハーフ天魔も中々出来るでしょう」
龍モドキは椎名さんで、蝙蝠女はユエだとすると、ハーフ天魔はリリムだな。
「個人的にはあのセナという子の事を気に入っていますね」
「へぇ~」
この人でも気に入る人とか居るのか。
「あの者達の間隙を縫うように動き自分の損をしない様に考え行動し、普段はおチャラけた雰囲気で誤魔化して居ますが、その内には中々に闇を持っているのを気に入りました」
「やみ?」
そんなのある様には見えないのだけどな。
僕の前世からの付き合いだが、姉上が言う「闇」など見た事がないのだが。
何か、そんな事を言われると気になって来たな。