第5話 差があり過ぎじゃない?
龍月さんの話を聞いた僕は流石にやり過ぎだと思い姉さん達を呼ぶ。
「それで、何の用じゃ? リィン」
「もしかして、わたしに甘えたくなりましたか?」
そう言って僕の頭を撫でる姉上。
ここまでは、まあいつも通りだ。
「何か用があって呼んだと聞いているけど」
「何かしらね」
「リウ。何の用?」
姉さん達は何の用で呼ばれたのか分からず首を傾げていた。
「……あのさ、竜人君達の事だけど」
「あの者達がどうかしたのか?」
「今日は訓練が休みにしておりますが?」
「その訓練がさ、流石にきつ過ぎると思うんだけど」
生き残るためにするのは分かる。とは言え、それでトラウマを植え付けるのはやり過ぎだと思うのだだけど。
「そうか?」
「別に普通じゃない?」
「時間がないから、ちょっと濃縮にしているけど、死なない様にはしているよ~」
濃縮? 死んでも構わないの間違いでは?
「流石にわたし達と一緒に居て死んだら、後始末が面倒おほん、もとい寝覚めが悪いのでどんな戦場でも生き残れるぐらいに鍛えましたよ。むしろ、感謝して欲しいぐらいです」
今、面倒くさいって言ったぞ。この人。
「兎も角、妾達は強くなるために鍛えただけじゃ。多少きついかも知れんが、あやつらは生きておるから問題なしじゃ」
「隕石を落すとか。百人規模の集団が数十日掛けて狩る魔物を一日で倒させるとか、龍の姿で追いかけっことか、どう考えてもきついを通り越してやり過ぎだよ」
僕が苦言を呈すが、姉さん達は首を傾げる。
思わず、溜め息が漏れた。
「……僕が強くなりたいから訓練してって言ったら、同じ事をするの?」
もしやと思い訊ねた。
姉さん達も意外に厳しい所があるからな。訓練の時は厳しくするのだろうな。
僕がそう言うと、姉さん達は顔を見合わせる。
「「「「「まさか」」」」」」
そんな訳ないだろうという顔をする姉さん達。
って、何でだよ。
「リィンが強くなりたいというのであれば、訓練はするが。タツヒト達にした様な事をする訳なかろう」
「同感です」
「何で、弟を苛める必要がある?」
「可愛い弟なんだから、厳しくはするけどちゃんと飴を与えるわよ」
「そうそう。可愛い弟なんだから、一肌も二肌も脱ぐよ」
…………それを竜人君達にもして欲しいんだけどな。
言っても「家族じゃない者に、そんな情けを掛ける必要ないだろう」とか言うだろうな。
「ちなみに、僕に訓練がしたいと言ったら何をさせるの?」
「そうじゃな。妾の場合はまずは瞑想をさせる。そして、自分に出来る事、出来ない事を自覚させて、出来る事を徹底的に伸ばす。そして、適度の休憩時間を入れるじゃな」
龍月さんの話じゃあ、休憩時間は食事時間の三十分だけって言っていたな。
何か、僕の場合だと甘くないか?
「わたしの場合でしたら、素振り百本を十セット。初級魔法を時間を設けて行使させますね。強くなる為に必要なのは技、身体能力云々よりも精神力です。訓練とは集中力を絶やさずに行う事が肝要ですからね」
ふむ。龍月さん達にした訓練に比べると優しいが、これはこれで重要ではあるな。流石はイザドラ姉さんだ。僕には砂糖よりもだだ甘だが。訓練は厳しくする様だ。
「素振りが一セットと魔法の行使が終る度に三十分の休みを取り、全て終わると何処か怪我が無いか調べてあったら治して、その後はマッサージまでしますね」
……感心した気持ちを返せ。
「ヘル姉さんは?」
「わたしの場合は…………えっと、とりあえず、素振りをして変な所が無いか指導するかな?」
何故、最後が疑問形になるんだ?
何かそんな言い方をされると、イザドラ姉さんよりも甘い訓練をしそうな気がして来たぞ。
僕はフェル姉を見ると、フェル姉はニコリと笑う。
「わたしの場合は隠れるのありの追いかけっこね。それで捕まえたら、気が済むまでギューとして、そしてまた追い駆けっこをして捕まえてギューと抱き締めるって所ね」
普段と変わりない気がするな。
しかし、これはこれで脚力とか鍛えられそうな気がする。
「あたしはね。両足を折って、牙も爪も剥いで戦う事が出来なくなるまで弱らせた魔物を連れて来て倒させるね」
何か肉食獣の親が子供にする狩りの訓練みたいな事をするな。
でも、一番訓練ぽく見えるな。
「それで、リィン。今の話を聞いて、もし訓練をするのであれば、誰の訓練を受けたいのじゃ」
そう訊いたロゼ姉様も皆もワクワクしながら、僕の答えを待っている。
「……ミリア姉ちゃんかな」
聞いた感じ、一番訓練ぽいし。
「「「「何故?」」」」
姉さん達は僕の答えが気に入らないのか訊ねて来た。
僕からしたら、姉さん達の方にどうしてと訊ねたいのだが。




