閑話 地獄の猛特訓 前
今回は龍月視点です
あれは、この船に乗る数日前の事だった。
わたしがディアナと話をしていると、魔人族と思わる人が来た。
「ロゼティータ殿下が御呼びです。ご案内します」
というので、わたし達はその人に付いて行った。
その人の案内で付いて行くと、先に西園寺君と黒川君が居た。
「おお、来たか」
「これで全員ね」
「さてと、頑張らないとね」
「まぁ、死んだ所で特に問題ないですけどね」
「姉さん。それは酷すぎると思う」
案内された所にはリウイさんの姉さん達が勢ぞろいしていた。
何事だと思いながら、わたし達は西園寺君達の側に行く。
「さて、時間も限られているので本題に入るのじゃ。はっきり言うが、お主らがこの王国から出て目的する場所に行くのは弱すぎて無理じゃろう」
分かっては居たけど、バッサリとそう言われると清々しいとさえ思える。
「ですが。船での移動ですので」
「その船の移動ですら魔物は寄って来る。その時、お主らよりも強い者が側に居るとは限らん」
ロゼティータさんの正論に西園寺君は黙った。
「とは言え、妾達の可愛い弟が行動を共にするのに死なれては、あやつも寝ざめが悪かろう。という訳で、妾達がお主達を鍛えてやろう」
う~ん。確かにこの人達は強そうだから鍛えてくれたら生き残る可能性はあがるだろう。
特にイザドラさんという人はかなり強い。
……うっ、そんな事を思ったからかあの時の事を思い出しそうになった。
あの時は本当に死ぬかと思った。
「それは助かります。僕達も自信があったんですが、井の中の蛙だと思い知りました」
「殊勝じゃな。なに死ぬような目にはあわぬから大丈夫じゃ」
死んだら鍛える事も出来ないのだからその通りだろう。
なら、大丈夫だろうと思ったこの時に自分。
もし、過去に行く事が出来たら、この時に自分に出会い殴ってでもこの訓練に参加させない様にしただろう。
「では、行くとしようか」
そう言ってロゼティータさんが手を翳すと、空間が歪み黒い穴が生みだされた。
「魔力で亜空間を作った。この中で訓練を行う」
「成程。激しい訓練で周りの被害を生まない様にですね」
「これは凄いな。後で作り方を教えてもらおう」
西園寺君と黒川君はどんな訓練を受けるのか楽しみにしながら、その空間の中に入って行った。
ロゼティータさん達もその後に続いて入って行く。
わたし達も後に続いてその空間の中に入って行った。
穴を潜ると、其処は何も無い白い空間だった。
思ったよりも広く天井も高かった。
何も無い事を除けば、畳何千万枚はありそうな位に広かった。
此処で訓練するのかと思っていると、床から何かがせり上がって来た。
せり上がって来たのは色々な武器が入った入れ物であった。
「その中から好きな物を選ぶが良い」
ロゼティータさんがそう言うので入れ物を見て、武器を選んだ。
西園寺君は無難な剣を。黒川君は槍を。ディアナは杖を。わたしは弓を手に取った。
「選んだな。では、始めるとしようか」
そう言って前に出たのはヘルミーネという女性だった。
何時も目付きが鋭いので近寄りがたい雰囲気だ。
「まずは、わたしがお前達の実力を見る」
そう言ってヘルミーネさんは手を翳すと身の丈以上の大剣が現れた。
そして、その大剣を振るうと風と共に風切り音が聞こえた。
正直に言って、その風で吹き飛ばされるそうになった。
「さぁ、来い」
「行くぞっ。皆」
「ああ、これも強くなる為だ」
「じゃないと、生き残れないだろうし」
「同感」
内心、もう帰りたいと思いながらもわたし達はヘルミーネさんに向かって行った。