第2話 初対面の人は皆そう思う
イザドラ姉上とマイちゃん達の戦は熾烈を極めた。
具体的に言えば『廃都』が吹っ飛び更地と化してしまった。
それで勝敗は引き分けとか有り得ないだろう。
……あの世でバァボル陛下に会う事があったら謝ったほうが良いかな? 貴方が治めていた国の王都を姉と友人が更地に変えましたって。多分、怒るだろうな。
そんな事を思いながら僕達は船に戻った。
派手に暴れた事で気が済んだのか四人は大人しくなった。
「っち、これを機に滅殺できると思っていましたが。想定以上に力があったようですね」
「まさか、手加減抜きで戦っても勝てないなんて」
「やはり一番の障害はイザドラ義姉君か」
「ふむ。非常に不本意でしたが、お前達と組まないと負けていたでしょうね」
四人は歩きながらそう言っている。何かまた理由づけてやりそうな空気だ。
その時は止めないと駄目だろうな。
「大丈夫か? 竜人」
「……死ぬかと思った。川向こうで死んだ祖父ちゃんが手を振っているのを見て慌てて戻る事があったよ。父さん」
「落ち着け。恐怖のあまり混乱するのは分かるが、正気に戻れ。お前の父方と母方の祖父母は皆ピンピンしているぞ」
竜人君は死にかけた事で走馬灯でも見たのかな?
しかし、死んでいない人を川向こうで見るとかどれだけ混乱しているんだ?
「良く生きているな。俺ら」
「何度も瓦礫に押し潰されそうになったわね……」
黒川君とディアナさんは生きている事に喜んでいるというよりも不思議そうであった。
龍月さんも呆然としていた。
まぁ、天城君の事を聞いてショックだったんだろう。これに関しては何も言えないな。
そう思いながら歩いていると、乗って来た船が見えた。
「船? 飛行船か?」
「双胴船って奴だな。しかし、デカいな」
「この船一つで国を落せそうだ」
西園寺君達が僕達が乗って来た船を見上げながら呟く。
「リウイ。この船に乗って行くのか?」
「そうだよ」
僕がそう言うと感歎の息を吐く西園寺君。
そして、僕達は船に入るとヘルミーネ姉さんが出迎えた。
「帰って来たか」
そう言って皆を見て、何処も怪我を負っていなさそうなのを確認してから僕を見る。
「何処も怪我は無い?」
「無いよ」
ヘル姉さんは本当に怪我がないのか触って確かめつつ訊ねた。
それで、何処も怪我がない事を確認しつつ僕の頭を撫でる。
「良し」
そう言ってヘル姉さんは嬉しそうに微笑む。
「……なぁ、あの顔、凄く怖くないか?」
「ああ、まるで腹を空かせた獣が獲物を前にして笑っている様な顔だな」
「今にも襲い掛かりそうだな」
「と言うか、あれは笑っているのか? 本当は嫌々だが姉としての立場的に弟の事を気遣わないと駄目だと思って無理矢理相手をしている感じがするが」
「斎藤もか。俺もだ」
「しかし、リウイが慕っている姉だから悪い奴ではないと思うが」
西園寺君達はヘル姉さんの笑顔を見てヒソヒソと話していた。
ああ、見慣れていない人からしたらそう思うよね。
仕方がないと言えばそうだけど、何とも言えないな。




