第115話 噂をすれば来た
「ふむ。成程」
「猪田が死んで魔人族のリウイに転生したか」
「転生先は魔人族の王の息子。全員腹違いだが姉は五人。兄は十五人いるか」
僕の事を聞いた西園寺君達は唸りだした。
気持は分かる。僕も本当に転生するとは思わなかったからな。
「まぁ、色々と言いたい事はあるが。とりあえず言えるのが」
斎藤君が僕の頭を乱暴に撫でる。
「羨ましいな。こんちくしょうっ、死んで前世の記憶を持ったまま転生して、魔人族になって腹違いで美人な姉が五人もいるとかっ」
「いや、そうでもないとよ?」
正直に言って扱いが面倒な人達だらけだし。
そう思っていると、フェル姉が僕の頬を引っ張る。
「ふぇるねえ?」
「今、何か変な事を思わなかった?」
勘が良い人だと思いながら首を振る。それを見てフェル姉は手を離した。
「良いじゃねえか。こんな綺麗な姉ちゃんが五人も居てと言うか、何が不満なんだ?」
「いや、斎藤君。これで大変なんだよ。色々と」
「あははは、あたしは別にそんな迷惑をかけていないと思うけどな~」
「わたしもそうでしょう」
ミリア姉ちゃんとフェル姉はそうだけど、他の三人はな。
「まぁ、御二方はそうでも後三人は」
リリムが僕の心境を代弁する様に言うと、フェル姉達は納得した顔をした。
「あ~、あの三人はね」
「一名迷惑をかけている自覚は有るだろうけど、残りの二人は掛けている自覚無いでしょうね」
フェル姉の例えが的を射ているな。
「その三人って?」
「長女のロゼティータ。次女のイザドラ。四女のヘルミーネだよ」
「ちなみに、前者がヘル姉。後者がロゼ姉とイザ姉だよ」
ああ、確かに。否定できないな。
「そんなに大変なのか? そのイザドラさんとロゼティータさんとやらは?」
金さんが口を挟んできた。僕が扱いが面倒と言うのでそれだけ大変なのか気になっている様だ。
「簡単に言うと、ロゼティータ姉さんは過保護。イザドラ姉さんは過保護を通り越して溺愛?」
「超が幾つもついた溺愛だよね~」
「どうしよう否定できない」
フェル姉達の評にぐうの音も出なかった。
「どんな人なんだ?」
そう訊かれて話そうとしたら、天井が轟音を立てて破壊された。
何事だと思いながら僕達が身構えていたが、天井の破片は落ちて来る事は無かった。
そして、直ぐに大きな蜥蜴の様な顔が覗き込んで来た。
「なあっ‼」
「何だ。こりゃあっ」
「俺達が戦った四天王よりも強いようだな。この蜥蜴の様な生き物はっ」
その蜥蜴を見るなり、西園寺君達は得物を構える。その獲物の形が前世の記憶に残っていた形に居ていたので、恐らく元の世界に戻る時に記念か何かで持って来たのを使っているという所だろう。
逆にフェル姉達は呆れたように溜め息を吐いた。
「うわああああああっ」
「やべ、やべええ」
「にげなちゃあ、ころされる……」
「だめ、あしがうごかない……」
竜人君達がその蜥蜴の顔を見るなり恐慌しながら逃げようとしているが、腰が抜けたのか上手く動けていない。
そんな怖い目にあったの? この人に。
そう思いながら見ていたが、直ぐに目を蜥蜴の方を向けた。
『ああ、リウイ。其処に居ましたか』
その蜥蜴が僕を見るなり声を掛けて来た。
蜥蜴が僕の名前を言うので西園寺君達は思わず僕を見る。
「……姉上。船で待っていると言っていたじゃないですか」
『あまりに長く待たせますので、心配できちゃいました』
そう言って舌を出す姉上。
姉上の頭から小さい影が降りて来た。
「おお、リィン。無事で何よりじゃな」
姉上の頭から降りて来たロゼ姉様が僕の身体をに何処か傷が無いか調べる様に触れ回る。
「ロゼ姉様。どうして此処に?」
「イザドラが行くと聞かなくてな。何があっては問題だと思い、妾も付いて来たのだ」
じゃあ引き留めてよと思うのは僕だけだろうか?
「やった。あたしの勝ち」
「むぅ、ヘルミーネも来ると思ったのに、残念」
そこ姉上達が来るかで賭けをしないでよ。