第114話 無情なる時の流れを感じる
「と、父さん⁉」
「西園寺の小父様。どうして此処に?」
竜人君とディアナさんが西園寺君達を見るなり驚きの声を上げた。
「おお、お前達。此処にいたのか?」
西園寺君が竜人君達を見るなり驚きながらも無事な姿を見て安堵していた。
「おっ、竜人達が居るようだな」
「良かった。無事で」
そう安堵の声を上げるのは声と顔からして斎藤君と遠山君のようだ。
・・・・・・うん。顔は前世の記憶通りだけど。
「斎藤。前髪が後退したな」
「金さんも何か薄くなってるね」
「何で、西園寺君だけ、昔と変わらないんだろうね」
マイちゃん達は西園寺君達を見てヒソヒソと話していた。
うん。僕もそう思った。
西園寺君は顔は二十代にしか見えない。髪はフッサフサだし何処かのアイドルかと言っても良いだろう。
反対に斎藤君は前髪が後退し、額が広くなっていた。
こちらは、まぁ良い。遠山君の方は全体的に髪の毛が薄くなっていた。
所々、地肌が見えるのは年齢の性だと分かるのだけど、物悲しい気持ちにさせる。
高校時代はあんなにフサフサだったのにと思ってしまうが、これも時の流れだと思うと何も言えなかった。
「誰かしら?」
「多分、あのタツヒト達の知り合いじゃない。あのサイオンジって人とタツヒトも顔が似ているし」
「親子かしら?」
「だと思うよ」
西園寺君達を見たフェル姉達は警戒していたが、見ている内に竜人君達の関係者だと分かり警戒を解いた。
いやぁ、こうして会えるとは思わなかったな。昔の記憶のままでいてくれたら良かったけど。
「まさか颯馬君にもう一度会えるとは思わなかったわ」
「俺もだ。雪奈。しかし、お前達」
西園寺君はマイちゃん達を見ると目を見開いていた。
「歳を取った様に見えないが。何かしたのか?」
「まぁね」
「わたしは転生する魔法道具で種族が変わり、舞華とセナは不老になる魔法道具で歳を取らなくなった。椎名は龍を千切っては投げ千切っては投げ、その上生き血を啜り空腹を満たすために龍の肉に喰らって龍になったのだ」
「成程」
ユエの説明に深く納得する西園寺君。
「違うからっ」
「そうなのか? お前の事だからそれぐらいしそうな気がするが」
「颯馬君? わたしの事をどういう目で見ているの?」
「犯罪を平然と行う突撃暴走ストーカー女」
即答する西園寺君。
その評価に僕達は思わず吹いてしまった。
「く、くくくく、流石はサイオンジ。見事と言えるほどにピッタリな評価だ」
「ふふふ、言えてるな」
リリムもアウラ王女も西園寺君の評価に爆笑していた。
「ああ、そうだ。お前の部屋に仕舞っていた秘密のデータと貯蔵していた物は俺が責任をもって処分したからな。安心しろ」
「何で、そんな事をするのよっ。集めるのに苦労したのにっ、あっ、でも、もう帰る気ないからあっても邪魔になるか。でも、こうして会えるのなら持って来るぐらいの事をしても良いと思うわっ」
「無理言うな。あの時はもう、お前に会えないと思ったからな。だから、処分したんだ」
「あ、あううう…………。こんな事なら音声データだけでも普段から持っていれば良かった……」
な、何の話をしているんだろう。
聞いていると、何故か寒気を感じるのは何故だろう?
「どったの? リウ」
「何か寒気が……」
「あらあら、じゃあ、お姉ちゃんがギューしてあげるね」
フェル姉が僕を抱き締めてきた。
「それで、張。さっきから気になっているんだが」
西園寺君が僕達を見る。
「其処に居るアウラ王女とリリムが居るのは、何かしらの理由があって居るのは分かるが。あちらの方々は見た所、魔人族の様だが。何で此処にいるんだ?」
「あ、ああ、それはな」
ユエが僕を見るなりハンドサインを送って来た。
し・よ・う・た・い・を・お・し・え・て・も・い・い・か・?
ハンドサインで聞いて来たのは、確認の為だろう。
も・ち・ろ・ん。
と僕が返すと、ユエが僕を手招きした。
フェル姉の腕の中か出てくると、ユエの傍に来た。
「こちらはわたし達で言う逃げた魔人国の王統を継ぐ王家の十六番目の皇子のリウイ殿。そして、我らが親愛なる友人の猪田信康の記憶を持っている者だ」
「「えっ、マジで⁉」」
「……詳しい話を聞こうか」
西園寺君達は話を聞く体勢を取ったので、僕も詳しく話す事にした。