第113話 さようなら。そして久しぶり?
そう話し合っていると、黒い髑髏の天城君が端から白くなっていった。
「これは」
『こやつの魔力を吸っていたのだ。この髑髏が完全に白くなった時にはこやつは成仏するであろう』
「そうか……ああ、何か気持ち良いな」
天城君は特に暴れる事も恨み言を言う事なくしみじみと呟いていた。
「このまま成仏しても良いの?」
「ああ。というか、もう椎名さんに振られた事を受け入れないとな」
振られた事を認めるのと成仏するのは違うと思うけど、まぁ良いか。
「成仏したら、俺は何になるんだろうな?」
「さぁ、其処までは分からないけど」
記憶を持って生まれ変わるのか。それとも記憶など無くして生まれ変わるのかは分からないけど、とりあえず言えるのは。
「次の生はもっと長生きできると良いね」
「はは、確かに」
そう話している間も髑髏は白くなっていく。
そして、髑髏が完全に白くなると天城君の眼窩にある明かりが小さくなっていった。
「これでお別れだな」
「そうなるね」
「椎名さんを幸せにしろよ。後真田たちも」
「……善処するよ」
正直手に余りそうと思うけど。
「はは……じゃあ、な…………」
そう呟くと同時に明かりが消えた。
そして、髑髏が灰になっていった。僕はアンゼリカを鞘に納める時には完全に灰だけになっていた。僕はその場でしゃがむと灰を持ち上げた。
白くサラサラとした砂の様になっており、手から零れ落ちると光に当たって半透明に輝いていた。
まさか転生してかつての同級生の成れの果てを看取るとは思いもしなかったな。
「ウ~ちゃんっ」
そう叫び声が上がると同時に後頭部に柔らかい物が当てられ顔に手が回されて抱き締められていた。恐らく結界は解けてフェル姉が抱き付いたのだろう。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫」
フェル姉が心配でしているのは分かる。けど、力を緩めて欲しい。
後頭部に胸が当たって顔がきつく締められているので居るので気持ちいいけど苦しいとしか思えなかった。
「ぬぅ、わたしが先に抱き締めようと思ったのに」
「此処は姉君に譲るのが一番だろう」
「ぐぎぎ、確かに……」
「何だ? 歯ぎしりする程に仲が良いと思っているのか? 蜥蜴女」
「五月蠅いわよ。腹黒半端女」
後ろからマイちゃん達が何か言っているが気にしない気にしない。特に椎名さんとリリムが喧嘩腰に話しているが聞こえない聞こえない。
「無事で良かったね~」
フェル姉の腕で見えないがミリア姉ちゃんが僕の身体を叩いて何処も傷が無い事を確認して頭の頭頂部を撫でた。
「あ、あの、すいません……」
何か竜人君が気まずそうに声を掛けて来た。
「どうしたのですか?」
一応敬語で話しかけた。フェル姉の拘束は解けないので何処にいるのか分からないが。
「先程の天城さんとの会話から、リウイさんはその、猪田さんの記憶を持っているという事でしょうか?」
「ああ、それは」
どう説明したら良いかな? 最初から説明するのも面倒なんだよな。
どう話したら良いかなと思っていると天井が崩れ出した。
「「「うわああああああああっっっ⁉」」」
同時に男性の声が三つほど聞こえて来た。
何事だ⁉と思いながらもフェル姉が瓦礫を除ける為に動いた。
その動きが止まると、僕はフェル姉の拘束から抜け出して誰が落ちて来たのか見た。
「いたた、久しぶりに来てみたら、何だ。この荒廃ぶりは?」
「此処がヴァベリア王国の王都なのか? 間違った所に転移した訳ではないよな?」
「それは無いだろう」
其処に居たのは僕の記憶の中に比べると些か年を取った西園寺君達が居た。




