第111話 まさか話せるとは思わなかった
「本人に聞くって言うけど、どうやるの?」
アンゼリカを見ながら訊ねると、アンゼリカは自信満々に答えた。
『なに、簡単な事だ。我をあの骸骨にさせば一時的に正気に戻させる事が出来るのだっ』
「ふ~ん」
『何じゃ、その薄い反応は。もっとこう『おおお~』とか『凄いっ』とか言わぬのか?』
「実際出来るか所を見てないから分からないし」
『ぬう、我が主は冷静じゃな。まぁ良い。ほれ、さっさと刺してくるが良い』
「……刺して呪いとか憑いたら捨てて良い?」
『主よ。我の事が嫌いか? しまいには泣くぞ』
剣が泣くとか、刀身から水が出るの?
前世で読んだ小説に出て来る妖刀みたいだな。
・・・・・・いや、この剣も魔剣だから妖刀と似たようなものか。
『何をブツブツ言っているんじゃ?』
「いや別に」
そう答えながら、僕は囲まれているアマギの元に向かう。
「ウ~ちゃん?」
「リウイ、どうしたの?」
「ちょっと試したい事があって」
「大丈夫なの?」
「問題ないから」
「……まぁ、良いわ」
フェル姉がアマギの頭から足を退けた。
「ありがとう。フェル姉」
そう言って僕はアンゼリカを抜いて突き刺した。
髑髏であろうと容易に貫くアンゼリカ。
すると、黒かった髑髏が徐々に白くなっていった。
「ガ、ガガガ………………俺はいったい……?」
「何か記憶が戻っている?」
『正確に言えば、記憶を呼び戻しているが正解じゃな」
「成程。それではアマギ。わたしが誰か分かるか?」
今まだ黙ってついて来たアウラ王女が口を挟んで来た。
「あ、アウラ王女? あれ? 僕はどうして話す事が出来るんだ?」
おお、何か生前の記憶が戻ってる。
これもアンゼリカの効果か?
「こいつ。生前の記憶が戻ったぞ」
「別に戻らなくても良いのに」
「・・・・・・」
「どうした? 椎名。耳を塞いで」
「こいつの声を聞きたくないから」
椎名さんが指で耳を塞いでいるのを見てユエが訊ねると、嫌そうに口を開いて教えてくれた。
その声が聞こえたのか、アマギが明るい声を出した。
「椎名さん。其処に居るのか? ああ、綺麗だな。……うん? どうして、視界がこんなに下なんだ?」
「今頃気付くかな。まぁ、天城君らしいけど」
「何を言って……天城君?」
「お久しぶり。君が殺した猪田だよ」
「な、何でお前が此処にっ」
「まぁ、色々あって。君も色々あったようだね」
「そうだっ、お前の使い魔が偽造した映像を皆に見せた事で、俺は、俺は・・・・・・あれ? どうして、俺は生きているんだ?」
どうやら今の自分がどんな姿なのか分からない様だ。
「マイちゃん。手鏡貸して」
「はい」
マイちゃんは僕に手鏡を貸してくれた。
「これが今の君の姿だよ。天城君」
「…………あ、あああ」
鏡に映る自分の姿を見て震わせる天城君。
まぁ、気持ちは分かる。
僕も記憶が戻ってそんな姿になったら、成仏したくなるからな