第108話 ・・・・・・もしかして
手に持っている剣を振りながら襲い掛かって来る黒い骸骨騎士。
狙いは椎名さんだけであった。
他の者達には目もくれず、椎名さんに攻撃している。
「シイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナ」
「ちょっ、わたしは貴方の事とか知らないわよっ」
黒い骸骨騎士の攻撃を愛用の大型ナイフで防ぐ椎名さん。
「おお~、頑張っているな」
「やれやれ、そこ。右、下、左を狙うと見せかけて首狙いっ」
ユエとマイちゃんは離れて観戦していた。マイちゃんに至っては応援までしていた。
「何をしているの?」
「何って、相手が弱るのを待っているだけだよ」
「ついでに恋敵を消す良い機会もとい、あいつの鼻っ柱を折るには良いと思ってな」
凄い物騒な事を言っているのは気のせいだろうか?
「いや、助けようよ」
「要らないだろう」
「そうそう。あれで頑丈だし強いから」
気楽な二人だな。
まぁ、気持ちは分かるけどね。
「大変だ。助けないとっ」
「今、助けます。叔母さんっ」
竜人君達は襲われている椎名さんを助けようと黒い骸骨騎士に攻撃を仕掛けた。
「ジャマヲスルナ」
黒い骸骨騎士は剣を振るい竜人君達を吹っ飛ばした。
その衝撃で壁に当たり痛みでうずくまっていた。
ユエは竜人君達の傍にいく。
「……打ち身だけのようだ。このままじっとしていれば直るだろう」
「う、ううう、まさか。こんなにつよいのがいるなんて……」
竜人君達は思っていたよりも弱い事に驚いた。
「弱いわね~。もう少し厳しく鍛えたほうが良いようね」
「う~ん。確かに」
フェル姉達は思ったよりも弱い竜人君達に呆れながらも訓練を厳しくしようと話していた。
呑気に話しているけど、椎名さんは大丈夫かな。
そう思いながら見ていると、何か黒い骸骨騎士の攻撃を防いでいた。
様子見という感じで防いでいるな。でも、相手は死人だからな。長期戦は不利になると思うな。
「しかし、あの骸骨騎士の声。何か聞き覚えがあるんだよな……?」
初めて会う筈なのに、何故か聞き覚えがある声なので首をひねる。
「ああ、リッ君も。実はわたしも」
「ううむ。そう言われてみると、確かにな」
僕のつぶやきを聞いたマイちゃん達も首を傾げながらも同意した。
どういう事だろうか?
僕達は揃って頭を傾げた。
「シイナ、シイナシイナシイナ。オレハ、オレハ。ワルクナイ、オレハワルクナイオレハワルクナイオレハワルクナイオレハワルクナイ。ゼンブ、アイツガ、アイツガワルインダ!」
何か黒い骸骨騎士が椎名さんを攻撃しながら、自分が悪くないと言い出した。
人間であれば情緒不安定と言えるが。死人の場合は、何と言うのだろう? 通常かな? それとも暴走? 何と言えばいいのかな?
「ゼンブ、ゼンブアイツガワルインダ。………………イノタガ」
最後の一言を聞いて、マイちゃんは僕を見た。
いや、まさか。でも、話を聞いた感じだと、もしかして。
「…………天城君?」
信じられない思いで呟いてしまった。
まさか、そんな事が有り得るのか? いや、死人は生前に恨みを晴らすために蘇ると聞いた事がある。
そう考えれば、有り得ないとは言い切れない。
僕の呟きが聞こえたのか、黒い骸骨騎士は攻撃の手を止めて、僕を見た。
「………………イノタ、イノタイノタイノタイノタイノタイノタイノタイノタ」
今度は前世の僕の名前を呼びながら僕に向かって来た。
この反応。もしかして、本当に天城君なのか⁉




