第107話 ご指名3番テーブルってか?
準備を整えた僕達は『廃都』へと向かった。
都の中に入ると、まぁ何と言うか。
外から見た以上に荒廃していた。
少し前の戦いの後もある様で、飛び散った血がまだ赤かった。
至る所に矢が突き刺さり、何かが焦げた跡も多数あった。
「此処が王都シルデアか。ふぅ、嘗ての大国の王都も年月が経ったら此処まで荒れ果てるとはな……」
第一王女であったから、アウラさんは寂寥感を込めて呟いた。
こればっかりは何とも言えないな。
「UGAAAAA」
そう思っている所にゾンビが襲い掛かって来たが。
「静まれ」
リッシュモンドがそのゾンビに向かって手を翳すと、ゾンビは大人しくなった。
そして、手であっちに行くように指示するとゾンビはその命令に従った。
「ねぇ、これってわたし達要らないと思わない?」
「確かにそうだね~」
リッシュモンドが死人を操るのを見て、フェル姉達はヒソヒソと話していた。
気持は分かる。まぁ死人の中では最上位の存在だからな。
「どうやら、この『廃都』内に居る死人達はわたしが使役できるようです」
「そう」
「ただし、あの大きな建物に居る者は別ですな」
リッシュモンドが指差した先の建物を見た。
其処は嘗て王宮があった所であった。
「あそこにいるんだ」
「どんな奴が居るのやら」
「案外、わたし達が知っている人だったりしてな」
マイちゃん達が王宮を見上げるなり、知っている場所だからか死人になった知り合いがいると笑いながら話していた。
う~ん。有り得ないとは言い切れないな。
そう思いながら、僕達は王宮へと向かった。
王宮に着いた僕達は慎重になりながら歩いた。
不思議な事に、この王宮内にはゾンビの姿が無かった。
「死人の姿が無いとは、どういう事だ?」
「どう思う。竜人」
「……流石に情報が少なすぎて分からないけど、とりあえず言えるのは。この王宮に居るのは死人を操る事が出来る高位の存在が居るって事だね」
確かにその通りだろうな。
僕達は警戒を厳にしながら部屋の一つ一つ見て回った。
そうして、残すは謁見の間だけとなった。
「残るは此処だけか」
「さて、蛇が出るか鬼が出るか」
と言いながら僕達は扉を開けた。
扉を開けると、其処は荒れ果てた部屋であった。
天井を支える柱は半ばの部分から折れており、壁紙のの至る所は剥がれ亀裂が走っていた。
床も同じようにボロボロになっていた。
部屋の奥には王が座っていた玉座があったが、其処もボロボロに破損していた。
その玉座には灰色の鎧にボロボロになった裏地が赤の黒マントを羽織ってる黒い骸骨が居た。
抜き身の大剣を杖の様の持ちながら座っている骸骨。
「………………」
骸骨の眼窩に赤い光が浮かんだ。
「あれが、此処の王宮を支配している死人か」
「中々に強そうだな」
マイちゃんとユエはその死人を見て強そうだなと思った。
そんな二人の後ろから椎名さんが顔を出した。
すると、黒い骸骨は眼窩の赤い光が強くなった。
「シイナ……」
黒い骸骨が椎名さんを見るなり力強く呟いた。
その呟きを聞いて、僕達は思わず椎名さんを見る。
「あんた、あの骸骨と知り合いなの?」
「そんな訳ないでしょうっ」
「ほれ、ご指名だ。知り合いなのだろう? 行って相手をしてこい」
ユエはあざ笑いながら行けとばかりに顎でしゃくった。
「だから、知らないからっ」
椎名さんはそう叫ぶけど。
「シイナ、シイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナシイナ」
黒い骸骨は玉座から立ち上がり抜き身の大剣を構え、僕達へと向かって来た。




