第103話 口止めするの忘れていた
アウラ王女を加えた僕達は戦艦に戻ったのだが。
「このおお戯けがっっっ‼」
戦艦に戻るなりロゼティータ姉様のお叱りを喰らった。
出る時にミリア姉ちゃんに見つかったのが悪かった。
恐らくミリア姉ちゃんが皆に僕達が戦艦から出て行く事を話したのだろう。
じゃなかったら、バレる訳が無い。
ミリア姉ちゃんもロゼ姉様に怒られてる僕を見て手を合わせて謝っていた。
口止めしなかった僕が悪かったので、怒るに怒れない。
「好奇心が強いのも程があろうが、お前は自分の立場というものが分かっておらんのか。王位継承権を破棄したとは言え、お前はれっきとした魔国の王族なのだぞっ。常日頃から王族らしい振る舞いをせんか!」
「はい。反省してます」
「本当か?」
「本当に反省しています」
そう『反省』はしている。今度はバレない様に口留めとか怒られない様に誰かの手を借りよう。
「その顔。反省している様には見えぬのだが?」
「姉様。それは気のせいです」
僕がそう言っても訝しむ姉様。
流石に元義理の姉?にこれ以上恥ずかしい所を見られるのは恥ずかしいのだけど。
「イノ、ではなかったリウイは普段からああなのか?」
「毎日とは言わないけど、何だかんだ言ってあの長姉のロゼティータさんに叱られているわ」
アウラ王女がマイちゃんに話しかけていた。
僕の今の姿に余程、違和感を感じているようだ。
「姉さん。それぐらいで良いじゃないですか。もう許してあげて良いと思います」
「イザドラ。お前がそうやって甘やかすから、リウイは好き勝手に行動する様になったのだぞっ」
「別に良いじゃないですか。リウイらしくて」
「お前もリウイも王族としての振る舞いを」
「此処は魔国ではないのですから。そんなに目くじら立てなくてもいいでしょう。それに」
イザドラ姉上がアウラ王女を見た。
「どうやら、客人が来たようですから、醜態を見せるのはそれぐらいで」
「むっ。それもそうじゃな」
イザドラ姉上にそう言われてロゼティータ姉様は咳払いをしだした。
ほっ。助かった。
「リウイ」
「はい。何でしょうか。姉上」
イザドラ姉上に声を掛けられると返事をすると、無言で頬を引っ張られた。
「あひふね?」
「わたしも勝手に出て行った事を許した訳ではないんですからね」
「ぼめんなざい」
目を潤ませて謝った。
「……ハグをさせてくれた許してあげましょう」
「あい」
ごねても頬を引っ張られ続けられるだろうと思い、僕は両手を広げた。
すると、姉上は頬から手を離して僕を抱き締めた。
「むふぅ~。リウイは抱き心地が良いですね~」
デレデレした顔をする姉上。
その顔を見てアウラ王女は今度はユエに話しかけた。
「あの女性もリウイの姉なのか?」
「ええ、リウイの五人いる姉の中で一番溺愛している次姉のイザドラ殿です」
「で、溺愛? あれは、溺愛に入るのか? わたしから見ると溺愛を通り越して甘い空気を大量生産するカップルの様に見えるのだが?」
「…………魔人族と人間族との愛情表現の違いと考えれば良いと思います」
「いや、あれは……」
「ちなみにわたしの見立てでは、あのイザドラがアウラ王女の妹君のセリーヌ王女の生まれ変わりでは?と見ております」
「な、なにっ、セリーヌのっ」
アウラ王女は驚愕して改めてイザドラ姉上を見た。
「…………そう言われてみると、何処か似ている様な気がしてきた。気の所為か?」
「さぁ」
距離があるから、何を話しているか分からない。何の話をしているんだ? すっごく気になるんだけど。