第97話 持つべきものは幼馴染
「これは……」
スクリーンに映し出された物を僕達は見た。
僕はその映し出された物を見て何なのか直ぐに分かった。
砦の様な建物だが、恐らくこれは要塞だ。
あの『廃都』がヴァベリア王国の王都であったという事を鑑みて間違いない。
名前は忘れたが、王都防衛の為に作られた物だと聞いている。
その要塞はかなり年月が経っているからか、敵の攻撃を防ぐための防壁もボロボロで色が剥げて苔も生えていた。此処にも死人が居てもおかしくないと思った。
しかし、スクリーンから映し出されている映像からは何処にも死人らしき者の姿はなかった。
「ふむ。古びた要塞という感じですね」
「何か有りそうな気がするけど、イザドラ姉さん。どうするの?」
「……とりあえず、建物の中が老朽化してないかどうかの確認をしましょう。使えるようだったら、あのどっかの国の軍が撤退するか全滅するまで、あの要塞で待ちましょう。あまりに古くて使えないのなら再利用するだけの事」
「そうね。じゃあ、調査は誰が」
フェル姉とイザドラ姉上が話している所に僕が割り込んだ。
「はいはい。僕が行きたいですっ」
手を挙げて調査したいと力強く言う。
あまり行った事は無いが、前世の記憶で覚えている所だ。
中がどうなっているかぐらい見ても良いだろう。
「「「駄目」」」
したら、この場に居ないロゼ姉様とミリア姉ちゃん以外の姉さん達が反対した。
「何があるか分からない所に、ウ~ちゃんを行かせる訳ないでしょうっ」
「全くだ」
「リウイ。貴方は自分の立場を自覚しなさい。仮にも魔国の王族なのですよ。危険かそうじゃないかの判別くらいは持ちなさい」
くっ、普段はこういう事に口出さないヘル姉さんまで反対したら何も言えないじゃないか。
しかし、此処で負けたら言い出した意味がない。
「其処を何とか」
僕が上目遣いで三人を見上げると、言葉を詰まらせる姉さん達。
「……ちょっと待ってなさい」
そう言って三人は少し離れた所で輪になって話し合った。
数十分後。
「話し合いの結果。条件付きで行っても良い事にします」
「やったっ………………条件付き?」
どんな条件だ。
僕は思わず唾を飲み込んだ。
「条件はわたし達を連れて行く事です」
「ええ~」
何で昔の記憶いある所をに行くのに、姉同伴で行かないといけないのさ。
流石に嫌だよ。
「誰か一人じゃあ駄目かな?」
「「「駄目」」」
っち、此処は仕方がない。姉さん達同伴で行くしかないか。
「ちょっと待った」
其処にマイちゃんが口を挟んだ。
「何かしら?」
「魔国の王族であられる方々が行く所ではないでしょう。それだったら、わたしが行くわよ」
マイちゃんが胸を叩いた。
「あそこは多分、昔行った事がある所だろうし、内部の構造も大体わかるわ」
「ほぅ、そうですか」
「それなら良いわね」
あの要塞の構造が分かっていると言う者が居るのなら、その者に行かせるべきだと判断する姉さん達。
「……任せても良い?」
ヘル姉さんもそれが良いと判断した様でマイちゃんに訊ねた。
すると、マイちゃんは喜色満面で答えた。
「勿論です。お姉様!」
マイちゃんの笑顔と良く分からない雰囲気に押されて、ヘル姉さんは引いた。
「お姉様の頼みとあれば、どんと大船に乗ったつもりでお任せをっ」
「では、そういう事で要塞に向かいなさい」
イザドラ姉様が指示を出した。
僕も行きたかったんだけどな~。
そう思っていると、マイちゃんが姉上から見えない位置でハンドサインを送って来た。
ぬ・け・だ・せ・る・?か
も・ち・ろ・んっと。
同じようにハンドサインを送り返した。
ゆ・え・も・つ・れ・て・く。
それは当然だろう。連れて行かないと後で何と言われるか。も・ち・ろ・んっと。
それを見て唇を尖らせるマイちゃん。
り・よ・う・か・い。
そして、ブリッジから出て行った。
さて、僕も準備するか。