第96話 何かある
「リウイ様。何時頃『廃都』に向かうのですか?」
「う~ん。そうだな。とりあえず」
僕は改めて画面を見る。
其処には『廃都』を未だに包囲している『神聖王国』の軍が映し出されていた。
かなりの数の兵を突入させているのに、未だに死体の回収や包囲を解いて撤退する素振りを見せなかった。
これからまた突入するのか。もしくは撤退するのか。
それが分からないと行動がしづらい。
なので、それが分かるまで待機するのが良いだろう。
「とりあえず、あの『神聖王国』の軍が撤退するか全滅するまで待機だね」
「分かりました。ですが、その間暇ですが。どうしますか?」
「そこら辺を歩いて、何かあるか調べるよ」
「今からですか?」
「そうだよ」
「どうやって地上に降りるのですか?」
「う~ん。とりあえず、誰かの手を借りる」
それを訊いたリッシュモンドは顎を撫でた。
「わたしは構いませんが、姉君に一言言ってからしたほうが良いと思います」
「ええ、良いよ。別に」
何でそんな事まで言わないといけないんだよ。
というか、そんな事を言ったら付いて来るに決まっているだろう。
「しかし、言わないと後々面倒な事になりますよ」
「……言われてみると確かに」
昔、勝手に出て行ったら凄い大事になった事が何度もあったからな。
「しかし、この場合、誰に言うべきか」
イザドラ姉上とヘル姉さんは却下だな。言えば絶対に付いて来る。
フェル姉とミリア姉ちゃんは面白そうと言って付いて来るので却下。
残るはロゼ姉様か。
う~ん。この人の場合、何だかんだ言って付いて来る気がするんだよな。
こう考えると、誰に言っても駄目な気がしてきた。
どうしたものか?
「リウイ? どうかしたの?」
考えている僕にヘル姉さんが声を掛けて来た。
「……いや、何でもないよ。うん」
僕は今考えていた事を悟られない様に笑顔で答えた。
「? そう。ならいいけど」
僕の顔を見て、少し首を傾げたヘル姉さんだが、僕がそう言うので大丈夫だと思い離れた。
危ない危ない。
人が良いヘル姉さんだから誤魔化せたけど、これで他の姉さん達だったら追及されてボロが出ていたかも知れないな。
「うん? これはいったいなんだ?」
ブリッジに詰めている人が意味深な声を上げた。
「どうしたのです?」
「イザドラ皇女殿下。実は、周囲に放っている使い魔が妙な建物を見つけたと報告が」
「妙な建物?」
「はっ。今、映像を出します」
先程まで『廃都』を映していたスクリーンが映像が切り替わった。
其処に映し出されていたのは建物であった。
普通の建物ではなく、砦の様な建物であった。