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第94話 可哀そうに

 マイちゃんがどっかの軍が『廃都』を包囲していると言うので、僕達はブリッジへと向かった。

 ブリッジでは主要メンバーが全員いた。皆は『廃都』を包囲している軍の動きが映像に映し出されていた。

 どんな状況なのか分からないので、傍に居るフェル姉に訊ねた。

「フェル姉」

「ああ。ウ~ちゃん、来たのね。今日はまだ会ってないから、挨拶のハグしましょうね」

「何で?」

「兄弟の挨拶だからよ。はい、ぎゅー」

 フェル姉は僕を抱き締めて来た。

 それを見たマイちゃん達は羨ましそうな顔をしていた。

 そんな二人を見て勝ち誇ったように笑うフェル姉。

 喧嘩を売るのは止めて欲しいんだけど。

「フェル姉。何があったのか教えてくれる?」

 僕はフェル姉から離れながら訊ねた。

「はいはい。まぁ、簡単に言うと『神聖王国』とか言う国がこの『廃都』を包囲している様なのよ」

「包囲? 何でこんな所を?」

「偵察に出した使い魔の話だと。どうやらこの都が手に入れるぞってその『神聖王国』の指揮官が意気込んでいるそうよ」

「こんな廃墟が欲しいなんて、どうしてだろうね?」

「わたしもそこまでは知らないわ。でも、何かしらの理由があるんでしょう」

 フェル姉はお手上げとばかりに両手を広げる。

 まぁ、そうだろうな。

 正直に言って『神聖王国』と言われても、何が目的で来たのか分からないからな。

「って、軍が来てるけど、この船は大丈夫なの?」

「そこら辺は大丈夫らしいわ。何でも、この船は周囲の風景と同化できる何とか機能が付いているから、今はその機能で見つからない様にしているそうよ」

 ステルス機能? もしくは迷彩機能か? まぁ、その事については後で聞くとして。今はこっちだが重要だ。

 映し出されている画像を見ると『廃都』を包囲しつつ、兵を送り込んでいた。

 上から見ると、その兵達の動きはまるで巣の中を徘徊する蟻の様であった。

「死人や死霊を警戒してだろうけど『廃都』は上位種だらけなのに、突入できるな」

「万全に装備を整えてきたか、もしくは何かしらの秘策があるのか?」

「どちらにしても、無駄な事をするわね」

 マイちゃんが可哀そうな物を見る様な目で画面を見ていた。

「何でそう言えるの?」

「秘策があろうと装備を整えていこうと、相手は死人系でも上位種なのよ。上位種の死人は殺した生者を自分と同じ死人にして配下にする事が出来る者も居るのよ。そんな所に攻め込んだら、焼け石に水みたいな事をするのと同じじゃない」

「成程。じゃあ、マイちゃんはどうするの?」

「わたしなら『廃都』を包囲して燃やすわね。死人系は上位種だろうと火に弱いから、倒す事ができるでしょう。よしんば、倒せなくても火でかなり弱っているだろうから、簡単に討ち取る事が出来るでしょうね」

「確かに、効果的だね」

 心情的にやりたくないけど。

「まぁ、こんな廃墟はさっさと灰燼した方が世の為になるでしょうね」

「それは、何とも言えないな」

 色々と思い入れがある所ではあるので、灰燼にするのは避けたいな。

 そう話していると、侵入して来た兵達が死人の上位種と遭遇した。

 それを皮切りに『廃都』の各所で戦闘が起こなわれだした。

 数の力か。それとも個の力が勝つか見ものだな。

 そう見ていると、突入した兵達が犠牲を出しつつも上位種を圧倒していった。

 全てではないが全体的に見れば戦況は『神聖王国』に有利の様に見えた。

 このまま押せば勝てるのではという所で。

 王都の中央にある建物から強い魔力を感じた。

 感じると同時に其処から黒い壁の様な物が広がって行った。

 その黒い壁はやがて『廃都』の全てをドーム状に覆った。

 それにより画面は黒いドームしか映さなくなった。

「あのドームは、何だ?」

「分かんないけど、確実に言えるのは」

「『廃都』に突入した兵達は逃げ出す事が出来なくなったね」

 あのドームはいわば檻だ。

 恐らく日光も遮っているだろう。

 そうなれば、日光に弱い死人や死霊が出て来るだろう。

「あれは魔法かな?」

「あれは闇魔法の上位に入る『(ダーク)()蝕祭(カーニバル)』ね」

「フェル姉。あの魔法を知っているの?」

「まぁね。あの中では生者は弱体するのよ。ウ~ちゃんの指摘通り、日光も遮断するから昼に活動できない死人系の者達もあのドームの中では自由に動く事が出来るわ」

「ああ、それじゃあ」

「そうね。十中八九突入した兵達は全滅しているでしょうね」

 可哀そうに。

 思わず合掌してしまった。

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