天城から見た戦場
天城視点です。
オレは戦場になるハーバーラル平原で敵と対陣している。
今にも戦端が開かれそうだ。
オレが居るのは、右の陣だから、右翼と言われる所にいる。
この陣には、クラスメート達が全員揃っている
周りを竜騎兵団の兵士で固められている。これで敵陣に突撃しても、周りの兵士に守られながら攻撃をすると言う事だ。
更にオレの傍には西園寺が居る。
オレが暴走したら止めるストッパー役としているそうだ。
この場にいるだけで分かる。空気がピリピリしている。
今にも戦争が始まりそうだ。
そんな緊張感の中、敵陣から歓声があがる。
歓声があがる敵陣から、一人出て来た。
騎乗しているのは、角が生えた馬だ。恐らく魔物だろう。
その魔物に乗っているのは、鎧を着た鬼だ。
肌の色が俺達に同じで、鎧も日本の甲冑に似ている気がする。
「我こそは鬼人九氏族が一つシュテン家の流れを汲むシュポン家の一子、ゼツキ・シュポンなり。尋常に一騎打ちを申し込む!」
名指しじゃない一騎打ちか、いったい誰が出るのだろう?
そう思っていたら、こちらの陣からも一人出て来た。
「わたしは、竜騎兵団副団長シャダム・フレイムだ。お前の相手はわたしがしよう!」
亜竜に乗ったシャダムと名乗った男性が、曲刀を構える。
対するゼツキという鬼も、自分の武器である金棒を構えて、馬を駆けさせる。
その動きを見てシャダムも亜竜を駆けさせる。
お互いの武器がぶつかり合う距離まで近づくと、互いの武器をぶつけた。
その際に生まれる金属と金属がぶつかる音を周囲に響かせながら、一合、二合、三合と互いの武器をぶつけ合う。
火花を散らせながら、戦う二人|(一人と一鬼?)その戦いに見惚れる両軍の兵士達。
やがて、その永遠のに続く一騎打ちも終わりを告げる。
シャダムの持っている曲刀が、ゼツキの金棒をまともに受けて刀身が砕け散った。
それを見たゼツキはニヤリと笑い、金棒を振り上げる。
シャダムの頭を狙いつけて振り下ろした。
(やられるっ⁈)
クラスの皆も見ている兵士達もそう思い、目を閉じる。
だが、金棒はシャダムの頭に当たり事はなかった。
振り下ろされた金棒が、シャダムの頭の上あたりで止まっている。
いや、止まっているというよりも、止められているというのが正しいようだ。
シャダムの周りを、緑色の風が覆いシャダムを守っている。
その風に守られながら、シャダムは折れた剣の刀身に手を添える。
「『風よ。我が剣となれ、風の刃』」
そう唱えると、折れた刀身に風が集まり緑色の刃になった。
シャダムはその剣を振り下ろした。
ゼツキもその剣を金棒で防ごうと構える。
その魔法の刃が金棒にぶつかり防いだと思ったが。
次の瞬間、風の刃は金棒をすり抜けてゼツキの身体を右肩から左わき腹まで袈裟切りにした。
「ば、ばかなっ、ふせいだ、はずっ⁉」
「風に実体はない。無い物を防ぐことは出来ん」
そう言って、シャダムは剣を振り上げて、ゼツキの首を切り飛ばした。
血の花を咲かせるゼツキの身体は、馬から落ちる。
シャダムは剣を掲げながら、勝ち名乗りをする。
「ゼツキ・シュポンは、このシャダム・フレイムが討ち取ったっ!」
そう叫んだ後、少し遅れて味方から歓声があがる。
逆に、敵陣から怯えた悲鳴をあげる。
「いまが、好機。中央、突撃せよ!」
竜騎兵団の軍団長、・・・・・・・名前はなんだっけ?
う~ん、思い出せない。後で聞けばいいか。
その軍団長が中央の陣取る軍に突撃命令を出した。
中央の竜騎兵団は、突撃をしながら陣形を組み変える。
この形はまるで、矢ののような形だな。
対する敵は陣形も組まず、隊列を組まないで突撃してきた。
その無秩序な突撃の前に、竜騎兵団の矢のような陣形で組んだ突撃の前に簡単に蹴散らされた。
その一撃でも敵は十分に統制は乱れ、軍隊と言えなくなっているのに、突撃した竜騎兵団は向き直って、二度目の突撃を繰り出す。
その突撃がとどめとなり、鬼人族軍は壊滅状態になった。
「よし、両翼を前進させろ!」
軍団長がそう命じたので、左翼とオレ達がいる右翼が前進を始める。
右翼の動きに合わせて、オレ達も動く。
左翼も右翼も敵に突撃するというよりも、ゆっくりと整然と進んでいる感じだ。
既に敵は散り散りになっているので、もはや突撃ではなく掃討戦に移行していると思った方が良いようだ。
(オレの活躍の場はなかったか・・・・・・・・)
馬を進ませながら、空を見上げる。
今頃、思い人はどうしているだろう?
(まぁ、前の訓練で凄まじい実力を持っている事が分かったから、大丈夫だろう)
物思いにふけていたら、突然目の間に矢が飛んで来た。
慌てて避けたようとしたが、肩に当たってしまった。
「ぐわっ!」
「天城、何をぼけっとしている。今は戦争中だぞ。気を引き締めろ!」
「す、すまない」
自分の不注意なので素直に謝り、肩に刺さった矢を抜いて、その矢を捨てた。
だが、矢を抜いて直ぐに眩暈がして、意識が朦朧としだした。
「・・・・・・ぎ・・・・・どうした? あまぎ」
西園寺の声が遠くに聞こえるようになった。
そして、馬の振動で落馬してしまった。
少しの揺れで、落ちる事はなかったのだが、何故か今はそうなった。
「おい、天城、しっかりしろ!」
「今の矢はもしや・・・・・・この矢には毒が塗られているぞ!」
「衛生兵、衛生兵!」
その声を最後にオレは意識を失った。
次は椎名視点の予定です。




