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第93話 着きはしたけど

 船に揺られて進む事、数日。

 何の障害も無く進めたので特に問題はなかった。

 そして、ようやく『廃都』が見える所まで来た。

「此処が『廃都』か」

「言葉通りに廃墟した都だな」

 ユエと一緒にラウンジから下を見ると、城壁も街も壊れたままであった。

 それでいて、至る所に死人や死霊が徘徊していた。

「まだ、昼だというのに。死人と死霊が動いているとは」

 確かに、死霊系の魔物はどちらかと言えば夜に動く。

 それは殆どの種は日の光に当たると浄化するか弱体するからだ。

 一部では太陽光に当たっても何ともない種も居る。例えるのならリッシュモンドもしくは上位種だ。

「昼でも活動しているという事は、つまり上位種だな」

「だろうね」

 しかし、こうして都を見てみると、よく分かった。

 間違いなく此処はヴァベリア王国の王都だ。

 荒廃しているが、何年も住んだ都だ。見間違える事は無い。

「前世とは言え、長く暮らしていた所が荒廃しているのを見ると、流石に心が痛むな」

「そうか? わたしはそうは思わないが」

 ユエは何とも思っていない様に呟く。

「栄枯盛衰。諸行無常という言葉がある様に、この世に永遠など無い。だから、千年経てば荒廃するのも仕方がない事だ」

 ユエは下を見るのを止めると、僕を見た。

「わたしは人では無くなった。お前も転生して魔人になった。どうだ? 十分に移り変わっていると言えるだろう」

「確かにね。でも、生まれ変わっても僕の事を分かってくれて嬉しかったよ。ユエ」

 正直な話、話しても信じて貰えるかどうか分からなかった。

 だから、僕だと分かってくれて嬉しかった。

「~~~……ふん。当然だろう」

 ユエは顔を背ける。

「子供の頃から惚れて、今でも惚れている男の事を忘れる事など出来る訳が無いだろう。馬鹿」

 何か小声で言っているけど良く聞こえない。

「え? 何んか言った⁉」

「何も言ってないわ‼ たわけっ」

 ユエは怒ったように声を上げると、僕の両耳を引っ張った。

「相変わらず、お前の耳の難聴さには呆れて怒りすら浮かばんわっ」

「いだだだだだ、怒っていないのに、どうして、耳をひっぱるのっ⁉」

「自分の耳に聞けっ」

 ユエは気に障った様で僕の耳が伸びるのではと思うぐらいに引っ張る。

「いってえええええ」

 痛みのあまり僕が叫んでいると、ラウンジのドアが開いた。

「ねぇ、何かって、ユエ⁉ 何をしているのっ」

 ドアが開いた先にはマイちゃんが居た。

「リッ君の耳を引っ張って何をいているのっ」

「こいつの耳が良く聞こえる様に矯正しているんだっ」

「いやいや、そんな事をしてもりっ君の難聴は良くならないから。寧ろ、後五~六回転生しないと治らないからっ」

「それは酷い!」

 僕の耳はそんなに悪くないっ。

「って、それよりも、マイちゃん。何の用で来たの?」

「うん? ああ、何か『廃都』の周りをどっかの軍が包囲している事を伝えよう来たんだよ」

「どっかの軍?」

 何じゃ、そりゃ。

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