第92話 紆余曲折あったが
「このような大きな蜥蜴モドキなど飼えるかっ。今すぐあった所に返してくるのじゃっ」
僕達はMRー001を連れて船に戻ると、僕達を出迎えたロゼティータ姉様達がMRー001を見るなりギョッとして、直ぐにどうして連れて来たのか理由を話した。
理由を聞き終えると、身体をプルプルと震わせたと思ったら怒声を上げた。
「え~」
「え~、ではないっ。こんな物を連れて帰って飼えると思っているのか?」
「いや、飼えると思ったから連れて帰って来たというか」
「こんな巨大な物を何処で飼うのじゃ⁉」
姉様は指差すMRー001は目分量なので詳しく図ってはいないが二メートルぐらいはあるからな。
確かに、この大きさの動物?を飼う場所となると大変かも知れないけど。
「別に飼う場所ぐらいなら作ればいいし。それぐらいの金なら用意できるから」
「……それはそうじゃが」
姉様は何故か猛烈に反対してくる。何故?
何だかんだ言って僕に甘い人なのに。
「ふふ、ロゼ姉さん。リウイがペットを飼うぐらい別に良いではありませんか」
其処にイザドラ姉上が微笑みながら口を挟んで来た。
「しかし、イザドラよ」
「ふふふ、姉さん。リウイがペットを飼う事にそんなに反対なのは何故なんです?」
「それは、こんなに大きな物を飼うなど難しいから」
「嘘ですね」
姉様が話している最中に姉上は嘘と断言した。
「何じゃとっ⁉ どういう意味じゃ?」
「ふふふ、わたしは貴方の妹ですよ。ですから、姉さんの考えなどまるっとお見通しですっ」
「なにっ」
「本当はリウイがペットを飼って、姉さんの相手をしなくなるのが嫌だから反対しているのでしょう?」
姉上はニンマリと笑いながら言う。
ははは、まさか、そんな子供じみた理由で反対なんて。
「何を言っとるんじゃ。この弟馬鹿の愚妹は。妾がそんな事を思う筈はなかろうて。ほんにお主は残念なのじゃ」
呆れた様に言う姉様。
だが、僕は見逃さなかった。片眉が揺れている事を。
本人は自覚してないけど、実は姉様は嘘を付いている事がバレたら片眉を動かす癖がある。
何だ。結局はペットを相手にしていて僕が姉様の相手をするのを疎かにするのが嫌だから、飼うのを反対しているだけか。
この人も本当に残念だな。
……いや、違うな。僕の姉さん達って皆、残念だ。
内心で溜め息を吐いていると、姉さん達が一斉に僕を見た。
「な、なに?」
「いや……別に」
「何か、こう言われた気がして」
「あたしも~」
「姉として少々聞き捨てならない事が言われた気がしたのですが」
「うむ。妾もじゃ」
「き、気のせいだよ……」
くっ、勘が良いな。
流石は僕の姉と言う所か。
「姉様。ペットの相手ばかりじゃなくて、姉様の相手をするから飼う事を許可してよ」
「う~む。そう言うのであれば良いじゃろう……って、違うわっ。妾はリインの今の現状の事で」
「姉さん。言質は取りましたよ」
姉上は口を三日月の様な形にして笑った。
「ち、ちが、違うのじゃ。妾は別に、リインの事を思って」
「はいはい。分かりました、ところで、リウイ」
「はい?」
「飼うのは構いませんが、ちゃんと面倒は見る様に」
「はい」
「よろしい。では、御褒美にハグをしてあげますね」
そう言うなり姉上が抱き付いて来るので、僕はマイちゃんの後ろに隠れた。
「もう、どうして逃げるのですか?」
「そういう気分だから」
「成程。つまりは、わたしとくっつきたい気分だという事ね」
マイちゃんは僕を抱き付いて来た。
「うわぁ、なに、このプニプニの肌。むぅ、う~ら~や~ま~し~い~」
「ちょっ、止めて」
僕に頬ずりするマイちゃん。
「ぬぐぐ、この泥棒猫が」
何か姉上が凄い怒っているけど無視だ。
「……今日はいい天気ね。邪魔な虫を潰すには絶好の日だわ」
「心の底から不本意ですが、今日だけは貴方に協力してあげるわ。龍モドキの女」
何か椎名さんとリリムが凄い物騒な事を言っている気がする。
「良いか、お前が我が主を乗せる事はあるかも知れないが、あくまでも騎獣としてはわたしの方が先輩なのだから、わたしを敬う様に」
「uuuuuuu」
何かアリアンがMRー001に対して、何か先輩風をふかしているけど、君が獣の姿になっても乗りたくないな。
「さぁて、疲れたから部屋で休みましょうか」
「賛成っ」
「妾も一眠りするか」
「え、いや、その、良いのかな?」
「良いの良いの」
って、フェル姉たちがこの場から逃げ出した。
待って。この状況を収拾できる人達が居なくなると困るのだけどっ。
うん? 姉上が足を止めて僕を見た。
口パクで何か伝えている。
ま・か・せ・た。
え、えええっっっ⁉
その後、筆舌で表す事が出来ない事が起こったが、船自体に損傷はなかった。
そう船自体は。
そんな事はあったが、僕達は改めて『廃都』へと向かう。




