第90話 付いてこないでよ
ユンケルの動きに合わせてMRー001は僕達の方へと動く。
近付く度に地面が揺れが強くなる。
そして、ユンケルが僕達の前まで来ると停止した。
ユンケルを摂取していたMRー001は僕達を見るなり、ユンケルを飲むのを止める。
「UGAAAA」
威嚇の様な声を上げる。
警戒されていると見るべきだろう。
リリム達は戦闘態勢を取るが、僕は手で制した。
「まぁ、見ていて」
僕は両手を広げてMRー001に近付く。
手を広げたのは敵意が無い証拠を示す為だ。
「GAAAA」
MRー001は咆哮するが、僕は構わず近付く。
「ああ、大丈夫でしょうか?」
「リウイ様なら大丈夫よ。貴方も自分の契約主を信じなさい。それに、万が一の事があったら……だけよ」
ソワソワしているアリアンをリリムが宥める。
というか、後半の所が良く聞こえなかったけど、何と言ったのだろう?
気になるが、此処は目の前の事に集中しよう。
「GAAAAAAAA……GRU⁉」
咆哮していたMRー001であったが、突如悲鳴の様な声を上げると震えだした。
何だ? 何か居るのか?
振り返ったが、マイちゃん達しか居ない。
別に何もいないけどなと思っていたら、僕達の少し後ろにある岩陰からヘルミーネ姉さんが見えた。姉さんは岩陰から顔を出してMRー001を睨んでいた。
ああ~、成程。それで悲鳴の様な声を上げたのか。納得。
僕の視線に気づいたのか、姉さんは慌てて岩陰に顔を引っ込んだ。
だが、僕の事が気になったのか直ぐに顔を出した。
船を出る時に会わなかったのは、もしかして付いて来るつもりだったからか?
どうして、僕の姉さん達は僕に対して凄い過保護なのだろうか。
一度聞いてみたいけど、皆して「可愛いから」とか言いそうな気がするので止めよう。
そんな事よりも、今はMRー001の方が先だ。
ヘル姉さんの眼光に怖気ついた様で、頭を下げて震えていた。
「KUrrrrrrrr……」
怯えた様な声を上げるのを聞いて、頭を撫でた。
「よしよし。大丈夫、怖くない。怖くないよ」
僕はそう言って撫でても、怖いのかビクビクと震えていた。
これはかなり怯えているぞ。仕方が無いな。
僕はMRー001を撫でるのを止めると、ヘル姉さんの下に向かった。
「うん?」
「あの」
「どちらへ?」
リリム達が声を掛けて来たが、今は相手する時間も惜しいので無視した。
ヘル姉さんは僕が近づいて来るのを見て顔を引っ込めた。
多分、僕が近づいて来たからパニックしているな。
そして、岩陰に覗いた。
「ヘル姉さん」
「……り、リウイ。奇遇ね。わたしは散歩をしていただけよ」
「散歩、ねぇ~」
ヘル姉さん。嘘を付くのなら、目を合わせてから良いなよ。
更に言えば、姉さんの傍に部下の『死神騎士団』の人達が居るんだから。
顔見知りであるヨシュアさんも居たので直ぐに分かった。
「散歩なのに、どうして部下を連れているの?」
「~~~~~~♪」
出来もしない口笛を吹いているフリをしながら、顔を反らすヘル姉さん。
いい加減、白状すれば良いのに。
……待てよ。ヘル姉さんが居るという事は、他の姉さん達も居るのでは?
そう思い改めて周りを見た。
すると、僕から少し離れた所にある別々の岩からフェル姉とミリア姉ちゃんの姿が見えた。
恐らくそれぞれの岩には自分の部下達が居るのだろう。
何で付いて来るのかな?




