第87話 理解不能
見つかると襲われる可能性も考慮して、僕達は一旦小高い丘に身を隠した。
そして、アリアンが指で示した先を見た。、指差した先には、金属の身体を持った獣が居た。
それはメタリックな身体に赤く塗装されていた。口から尖った前歯が二本生えており顔も猫の様な形をしていた。大きさは普通の虎ぐらいの大きさだな。
武器などは付いてなく、前世の映画で見たアニマトロニクスみたいな感じではなく、ただ、前世の動物の形をした子供の玩具が自由に動いていた。
「見た感じ〇ランス〇ォーマーじゃないね」
「う~ん。あれよりも動物的だね。どちらか言えば、〇イドに近いな」
「なに、それ?」
マイちゃんが分からないのか訊ねて来た。
「何と言うか、金属生命体だけど、〇ランス〇ォーマーよりも動物みたいな感じの生物」
「ふ~ん。あれがアイゼンブルート族の一種?」
「だと思う。だよね? プリア」
僕がそう尋ねるとプリアは肯定と言う意味を込めて頭を下げた。
これで間違いないと分かったが、しかし、あの獣は何をしているんだ?
あの牙を生やした猫の様な者は顔を下げて何かを飲んでいた。
その飲んでいる液体は黒くドロドロした液体であった。
「コールタールかな?」
「でも、アイゼンブルート族は何も摂取しなくても行動できるって聞いたけど。どういう事か分かるプリア?」
分からないので、とりあえず同族のプリアに訊ねようと後ろを見ようとしたら、メタリックな蜥蜴の顔が映った。
近くで見ると、メタリックだなとか。二足歩行だけどティラノサウルスみたいに、顔の部分がデカくて前足の部分は小さいなとか。人が乗れるぐらいの大きさだなと色々と思ったが。口に出たのは
「…………ぎゃああああああっ」
思わず映画みたいに叫び声であった。
「Gaaaaaaa‼」
僕の叫び声に合わせて、その蜥蜴も咆哮を上げる。
「迂闊っ。此処まで近付くまで気付かなかったとはっ」
「此処の所、デスクワークばかりだったから勘が鈍ったかしらっ」
蜥蜴の咆哮を聞いてアリアンとリリムは戦闘態勢を取る。
マイちゃん達も武器を構えようとしたが。
その蜥蜴が口を開きだした。口内に赤い光の様なものが集まっていた。
「っ、まずい。退避‼」
僕がそう言うと、リリムがプリアを脇に抱えてその場を離れた。
少し遅れて僕達も離れた。
そして、直ぐに蜥蜴の口内から赤い光線が横に走った。
砂塵が上がって直ぐに爆発音が聞こえた。
その砂塵の中を僕達は走り出した。
隣にいるマイちゃんが興奮しながら肩を叩きだした。
「ねぇねぇ、りっ君っ。今の見た? 今の見た?」
「見たけど、何?」
「口からビームだよ。口から。凄くないっ⁉」
「凄いと言えば凄いけど、今、そんな事を言える状況かな?」
「うわぁ~、わたし。生で口からビームを発射する生き物?を見るのは生まれて初めてだよっ」
「前世の時に一緒に竜が火を噴いたのは見た事があると思うけど。 同じようなものでしょう。そんなに興奮するものかな?」
「あれは火であって、ビームじゃない。だから、ノーカウント」
「その感覚が良く分からないな~」
どっちにしろ口から噴いているのは変わりないと思うのだけど。
「えっ? いつ、二人で竜が火を噴く所を見に行ったの? わたし知らないのだけど?」
「ふふ~ん。そんなの椎名が知る分けないでしょう。皆にバレない様に二人きりで行ったんだから」
「な、なななんですってっ⁉」
何時の間にか僕の左隣に並走している椎名さんが驚きの声を上げた。
そして、僕を挟んで二人で睨み合った。
「この状況でふざけていられるとは。我が主とご友人方は剛胆なのか? それとも状況を理解できない程に周りが見えてないのか?」
僕の後ろで走っているアリアンはボソリと呟いた。
「流石はリウイ様です」
リリムは称賛するが、何で?としか言えない。
「二人とも。言い争いは後にして、今は十分に距離を取ってあの蜥蜴?みたいな物と戦わないと……って、あれ?」
「どうかしたの?」
僕が足を止めたので皆追い越したが。マイちゃんだけ戻って来た。
「いや、ほら、あれ」
僕が指差した先には破壊された丘があった。
先程の蜥蜴のビーム攻撃で破壊されてはいるが、辛うじて形は残っていた。
既に砂塵は収まっており視界はクリアになっていた。
それで、破壊された丘で先程攻撃した蜥蜴が倒れているのが見えた。




