第86話 お目当ての物は見つかった
船の着陸させる前に皆をラウンジに集めた。其処で僕はこれから地上に降りて探す物が居ると告げて、誰か付いて来ると訊ねるとプリアとアリアンとリリムの三人が手を挙げた。
プリアはアイゼンブルート族に会わせる為に連れて来たので勿論連れて行く。
護衛としてアリアンも連れて行く。
連れて行く事を話したら、何故か目に涙を流しながら歓喜していた。何故?
「ゆきなっち。あのアリアンの病み度はどのくらい?」
「う~ん、そうね。って、何を言わせるの。村松さん」
「いや、わたしの中でヤンデレという言葉がこれでもかというぐらいに似合っている人だから。アリアンが病んでるかどうか分かると思って」
「……ちょっと聞き捨てならない事があるけど、まぁ良いわ」
病み度って、何それ?
と思いはしたが、連れて行く事には誰も二人を反対しなかった。
その後が問題だった。二人を連れて行くと聞くなりマイちゃんが「付いて行くっ。絶対に付いて行くっ」と子供の様に駄々を捏ねるので仕方が無く連れて行く事にした。
それを訊いた椎名さんまで付いて行くと言い出した。
どうしたものだろうと頭を悩ませる。
この二人を連れて行けば喧嘩になるだろう。
かと言って、護衛をアリアンだけと言うのは戦力不足だ。
もし、連れて行かなかったら。姉上が。
「どんな所か分からないのに、供を三人だけで行かせられません。そんなに行きたいのなら、わたしが付いて行きますっ」
とか言い出しそうであった。
姉上を連れて行くぐらいなら、この二人を連れて行った方が楽だ。
そう思い僕は二人の同行を許した。
その時、後ろから舌打ちを聞こえた気がしたが気のせいだろう。
使い魔が映像を送った所から少しだけ離れた所に船を降ろした。
「良いか、リィン。危険な目にあったら、天に向かって『助けて下さい。ロゼティータお姉様‼』と叫ぶのじゃぞ」
「大丈夫。そんな目に遭う前に逃げるから」
「リウイ。危険な目に遭う前に、強力でいて実力も問題なしで貴方が最も信頼する姉である。このわたしに、このわたしイザドラを連れてくべきではありませんか?」
信頼しているのかな? う~ん、悩む所だな。
「もう、連れて行くメンバーは決まったんだから大人しく待っていてよ」
「ですが」
「はい。もう良いでしょう。もう船に戻ってよ」
船の外にまで出て見送りに来る二人。
僕がそう言っても、二人は不満そうな顔をしていた。
「じゃあ、もう行くね。後は任せたよ」
仕方が無いので強く行ってその場を後にした。
そう言えば、ヘル姉さんやフェル姉やミリア姉ちゃんは見送りに来なかったけど、連れて行く人達を見て心配しなくても良いと思ったのだろうか?
「リウイ様。どうかしましたか?」
「いや、何でもない。それよりも」
少し考えていたが、リリムに声を掛けられて直ぐに切り替えた。
そして、睨んでいる二人を見る。
「考えなし。やる事なす事裏目になる。見栄っ張り」
「ヒルの様な粘着質。悪趣味。変態。元の世界に帰ったら、即ブタ箱行きの犯罪者」
何か女の戦いを始めていた。
「どうしますか? リウイ様」
「……ほっとこう」
付いてこなかったそれはそれで良し。付いて来たらそれはそれで良しとする。
女の戦いに口を挟むと碌な事が無いと前世で体験しているので何もしないのが吉だ。
「じゃあ、行こうか。リリム。地図は?」
「此処に」
リリムは地図を広げて、指を差した。
「現在、我々が居るのが此処になります。此処から北に進んだ所に、映像が映し出された所が有ると思われます」
指をなぞらせる様に動かしながら、地図上のある所で叩く。其処が目的地の様だ。
「分かった。じゃあ、行こうか」
僕は三人に声を掛けて歩き出した。
船から離れて二時間ぐらいは経った。
日差しも風も強くないので歩くのに問題はない。無いのだが。
「この、へびもどき、…さよりおんな…、すとーかー……」
「いのしし、……たんさいぼう……むてっぽう……」
後ろの方でマイちゃんと椎名さんはま女の戦いを続けていた。
歩きながら言っているから、余計に疲れるだろうに。
その証拠に二人は息も絶え絶えで互いを罵り合っていた。
「仲が良いのか悪いのか、分からないな~」
背後で未だに続ける二人を見てつくづくそう思う。
「リウイ様は本当に度量が広い御方ですね」
「そうかな?」
「ええ、前世の頃から仕えているわたしが言うのです、間違いありません」
「だと、嬉しいな」
何でそう思うのか気になるな。
「っ⁈ リウイ様。あちらを」
周囲の警戒をしていたアリアンが指差した。
その先にはお目当ての物が居た。




