西園寺から見た戦場PART2
西園寺視点です。
「この大馬鹿野郎ッ!」
俺は救援が間に合った天城達を連れてその場を離れて、部隊が居た所まで戻るなり、天城を思いっきり殴った。
天城は頬を殴られた事で、後ろに吹っ飛び倒れる。
「な、なにをする⁈」
天城の口元から血が流れるが、そんな事を気にもとめないで、俺は倒れた天城の胸ぐらを掴む。
「お前の考えなしの行動でお前が死ぬのは勝手だが、俺達を巻き込むなっ」
「巻き込んで何かいない。オレはただ、敵を追撃しただけで」
「まだ、言うかっ!」
俺はまた天城の頬を殴った。
殴られた天城は、何で俺が殴られるんだ? という顔をしている。
(こいつ、自分がした事が分かってないなっ)
なら、これ以上殴っても無意味だと思い、俺は手を放して指で死んだクラスメート達の遺体を指差す。
「大桃将也、青山達也、柳楽利明、この三人はお前の無謀な追撃に付き合って、死んだ奴らだ」
三人は魔法適性がなく、職業は前衛職だ。
大桃は重戦士、青山は鎧騎士、柳楽は剣闘士だった。
白兵戦が出来ないわけではないのだが、初めての戦争に参加したのだから、訓練通りの動きが出来る訳ない。こいつのように自分勝手に動けるのがおかしい。
「お前の自分勝手な行動で、あいつらは死んだんだ‼」
「ち、違う。あいつらは、敵の罠に掛かって」
「その罠に掛かる様な、無謀な行動をしたのは、誰だ!」
「っつ、それは・・・・・・」
「今度から、無謀な行動は控える事だな」
俺はそう言って、天城を見るのを止めて、死んだクラスメート達の元に行く。
その周りには、クラスメート達が涙を流して悲しんでいる。
俺は死んだクラスメート達の元に寄る。
死体を回収する際、俺が目を閉じさせたので、三人の顔には苦悶な表情を浮かべていない。
手を伸ばして、大桃の髪をある程度まとめて一房にして切った。
残りの二人も同じように髪をまとめて切る。
三人の髪を、別々の紙で包んだ。その紙に三人の名前を書く。
「皆、離れろ。こいつらの死体を焼く」
それを聞いて、皆は驚愕した。
天城が俺の肩に手を掛ける。
「ち、ちょっと待て、西園寺、死体を焼くってどうゆう意味だっ‼」
「死体を王都に帰還させたら、この部隊の戦力が低下する。無論、俺達も同じだ。だから、この場で焼くだけだ」
「いや、三人が死んだのはオレの所為だ。ここはオレが責任を持って遺体を王都に運んで、それからお前等と合流すればいいだろう」
「・・・・・・・お前は、馬鹿か? そんな事が出来るわけないだろう」
「オレなら出来る‼」
「その自信が何処からくるか知らないが、手を放せ」
「西園寺!」
「皆、どいていろ『|フォル(火よ、)|ブレイズ(起これ)』
クラスメート達はどけたのを見て、俺は炎の魔法を発動した。
地面から噴き上がった炎は、三人の遺体を包み込み骨すら焼き尽くす。
やがて、炎が消えると、後に残ったのは遺体が燃えた時に生まれた影だけだ。
強い風が焼けた肉の臭いが、俺の鼻に漂う。
(この臭い、忘れはしないっ)
俺は心にそう誓い、まだ泣いているクラスメート達に出発準備を済ませるように促す。
天城は俺を睨んでくるが、何も言ってこない。
自分の行動であいつらが死んだのだ。言える事がないのだろう。
天城の視線を無視して、俺は出発の準備を済ませた。
その後の道のりは、敵の襲撃を受ける事無く、順調に進み。
戦場と予定されている所に、すんなりと先遣隊と合流出来た。
次の天城視点でこの話は終わりにします。




