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閑話 バレンタイン

 今回は第三者視点です

 これはまだ猪田達が元の世界に居た頃。


 二月十四日。

 今日という日は女子はウキウキし、男子はソワソワする日。

 元々この日はローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌスの記念日であった。

 それを第二次世界大戦後まもなく、流通業界や製菓業界によって販売促進のために普及が試みられ日本社会に定着したのだ。

 そうであっても女子達は自分が好意を持つ男子にチョコレートを渡すのが通年行われた。

 今日はチョコを渡すのは当たり前であった。

「「「………………」」」

 学院の教室にある信康の席を囲むようにユエ、椎名、真田の三人が顔を突き合わせて睨んでいた。

 その手には可愛らしいラッピングされた包みがあった。

 当然、その包みの中にはチョコが入っていた。

 どうして、三人が顔を突き合わせながら睨みあっているのは自分のチョコを信康に渡し一番最初に自分のチョコを食べさせる為だ。

「ふっ、マイ。お前の持っているチョコは随分と小さいが、もしかして手作りか?」

 ユエが真田が持っている包みを見て掌に納まる程度の大きさなのでもしやと思い訊ねた。

 訊ねられた真田は胸を張りながら答えた。

「当然でしょう。ノッ君に渡すチョコなのだから、わたしが作らないとっ」

「おお、それは怖い怖い。お前が作るチョコは忽ち劇物に様変わりだからな」

 ユエはおどけた様に言う。

 それを訊いた真田は顔を顰めた。

「どういう意味よ?」

「お前が作る料理は劇物にしかならないだろう? 違うか?」

 ユエがそう言うと、真田は言葉を詰まらせた。

 ユエが言う通り真田が料理をすると倒れる料理しか作れない。

 流石に目玉焼きやおにぎりといった物だけは倒れはしないがまずかった。

「それは怖いわ。そんな毒物を猪田君に食べさせるなんて、とんでもない幼馴染ね」

 椎名は嘲笑する。

「ふんっ、それを言うのならあんたのチョコは何よっ。チョコレートじゃなくて、ケーキじゃないっ」

 真田が言う通り椎名の手の中にあるのはチョコレートではなくチョコレートケーキであった。

 大きさからカップケーキの様だ。

「別にバレンタインだからと言ってチョコレート以外を渡したら駄目という事はないでしょう。何の問題はないわ」

 そう言って自信満々にカップケーキを見せる椎名。

「ふん。そのケーキ。本当にケーキの材料しか入ってないのだろうな?」

「どういう意味かしら? 張さん」

「お前の事だから、ケーキの材料以外の物も入ってそうだからな」

 ユエの指摘に椎名は内心、ビクッとした。

 実はケーキの材料以外に精力剤が入っていた。

 効果が表れる時間は既に計算済みであった。その時間頃に猪田を元に訪ねて色々とする予定であった。

「その顔、本当に何か入っているの?」

「……まさか。それよりも張さんのその手のは凄いわね」

 椎名はユエの手に持っている物を見る。

 それは三人の中で一番大きな包みであった。

 そして、一番豪華にラッピングされていた。

「これか? 当然だろう。わたしの知る限り高級チョコレート店で其処で一番高くて量が有るチョコレートにしたんだ」

 ユエは笑みを浮かべる。

 自分のコネで手に入る中でも特に高いチョコレートを持って来たのだから当然であった。

「いやね。金でしか自分の好意を伝えられないというのは」

「本当だよね。幼馴染として有り得ないわ~」

 二人は呆れた様に溜め息を吐く。

「ふん‼ お前等の様に得体の知れない物よりも遥かにマシだ!」

「「「……むぅ」」」

 睨み合う三人。


 教室の外では猪田は教室の中を見ていた。

 猪田が内心、怖くて入れないと思っていた。

「どったの?」

 其処に村松が猪田に声を掛けた。

「いや、教室の中で何と言うか凄い事になっていて入れないんだ」

「そうなんだ。あっ、そうだ」

 村松はそう言って鞄に手を入れて何かを探る。

「はい。チョコ」

「ああ、ありがとう」

 村松はラッピングされた包みを猪田に渡した。

 義理チョコだろうと思いながら貰う猪田。

 実は村松はチョコは一つしか作っていなかった。

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