第79話 何もしてないよ⁈
僕達はアリアンの部屋へと向かう。
途中、外から凄い戦闘音が聞こえて来たが無視する。
そうして歩いているとアリアンの部屋の前に着いた。
少しだけ部屋のドアが開いていた。不用心だな。
そう思いながらドアをノックしようとしたら。
『ふっふふふ、どうせ、わたしは役立たずの魔獣ですよ……』
何か部屋から聞こえた声に思わず耳を疑った。
「今、凄い事を言わなかった?」
「しっ、とりあえず聞いてみよう」
僕達は少しだけ開いている耳を向ける。
『…………』
『ふふふ、慰めてくれるの? ありがとう。でも、良いの。こんな契約して何の役に立たない魔獣の事なんか慰めなくても……』
『…………』
『そうかもね。でも、我が主はケンタウロスには乗るのよ? それなのに、わたしには乗らないのよ。どう考えても役に立っていないでしょう?』
『……』
『ふふふ、所詮、麒麟と言ってもその程度なのよね~』
独り言ではないな。
機械音が聞こえて来るので、恐らくプリンツスエンアーヌルことプリアと会話しているようだ。
「おい。随分と病んでないか?」
「うん。かなりヤバイね。鬱病っていうぐらいにヤバくない?」
僕もそう思う。
「……何が不満なのだろう?」
「先程から乗るとか言っていたが。お前、契約しているのだから騎乗しているのか?」
「いや、全然」
あんなに綺麗な人に騎乗するとか正直、嫌なんだけど。
「それじゃない?」
「ええ、そんなわけ……」
開いているドアの隙間から部屋の中を見る。
そして、部屋の中を見て後悔した。
部屋の中にある壁という壁に何かの文字が書かれていた。
何と書かれているか分からなけど、その文字の色があまりに赤い。
その赤さはまるで血の様であった。
部屋全体が文字が書かれていて赤いので恐怖した。
そして、思わず顔を引っ込んだ。
「どうかしたのか?」
「いや、その、何と言うか。独創的な部屋? かな」
僕の要領が得ない言葉にユエは首を傾げていたが、村松さんは気になったのか隙間から室内を見ると目を剥いた。
「いや、あれは独創を通り越してヤバイでしょう」
「……お前、何かしたのか?」
「いや、何もしてないっ」
「本当か?」
「本当だよっ」
変な事はしてないし。酷い扱いもしてない‼
「むしろ、何もしてないから。あの子は病んでいるじゃないの?」
「それだっ」
村松さんの言葉に正解とばかりにユエが頷いた。
「? どういう事?」
「あまりに何もしてないから、色々と考えて答えが出ない袋小路に迷い込んで病んだという事だ」
「・・・・・・・マジで?」
「恐らくとしか言えんがな」
ユエの分析なのであながち外れてはいないだろう。
これは連れて行ってもいいものか?




