第77話 そろそろ『廃都』に向かいますか
幼馴染の意外な趣味に驚きはしたものの、ようやく店は僕が暫く居なくても差し障りない位に営業が出来る様になった。
そろそろ約束した『廃都』に向かうか。
その事を話したいので、マイちゃん、ユエ、椎名さん、村松さんの四人を呼んだ。
「リッ君。今日は何の用で呼んだの? もしかして、わたしとの婚約発表⁉」
「違います」
僕が指摘すると、マイちゃんは不満をたれた。
「では、いよいよ、わたしの店と正式に合併して共に商人の中の商人である商人王になる事を決意したのか?」
「それも違います」
何だよ。その商人王って? 海賊王のパクリか?
それを訊いたユエは「冗談だ」と言うが、目が笑っていなかった。
本気で言っていたのかな?
「じゃあ、リウイ君が何処かの国を征服したいから、わたし達を呼んだの?」
「それも違う」
確かにこのメンバーに声を掛けたら国を征服する事は出来るだろうけど、そんな事をするつもりはないから。
「じゃあ、あれかな。わたし達の中から本妻を選ぶ為に呼んだの?」
村松さんの言葉にマイちゃん達が互いを牽制しただした。
「それも違うからっ」
「嘘嘘。本当はあれでしょう。西園寺君達の子供達が言っていた『廃都』に行くために呼んだんでしょう」
「そうだよ。分かっているのなら、そう言ってよ」
「えへへ、ごめん~」
舌を出して笑う村松さん。
あざといなと思いつつ話を続ける。
「あの空中戦艦に乗って『廃都』の近くまで行って、其処から徒歩で『廃都』に入るのだけど、四人はどうする?」
「どうするって?」
「付いて来る?」
「「「「勿論」」」」
即答か。まぁ、予想はしていた。
姉さん達は多分全員付いて来るな。後はうちから連れて来るのは、リッシュモンドと誰にしようかな。
まぁ、おいおい決めるか。
「話はそれで終わり? じゃあ、リッ君。聞いても良い?」
「何を聞きたいの?」
「わたしとは何度か会っているのに、どうして教えてくれなかったのかな~」
マイちゃんは笑顔を浮かべているが、目が明らかに不満そうな色をしていた。
「教えても信じてくれた?」
「う~ん。半信半疑」
「だろう。だから言わなかったんだよ」
「う~む。確かにそうかも」
マイちゃんは難しい顔をした。
「クスクス。姿形が変わったぐらいで分からないなんて、幼馴染にと言っても所詮はその程度ね」
椎名さんが嘲笑しながら言う。
それを訊いたマイちゃんはムッとしたが、直ぐに涼しい顔をした。
「ふっ、そうよね。自分は『友達』どまりだけど、わたしは『幼馴染』だからね。あんたが知らない事をそれこそ沢山知っているわよ。まぁ『友達』どまりのあんたに話すつもりはないけどね~」
それを訊いた椎名さんは目が爬虫類みたいな目になった。
「喧嘩を売っているのかな?」
「ああ、ごめんね。そんなつもりはなかったけど、そう取ったのならごめんなさいね~」
椎名さんが立ち上がると手で表に出ろとジェスチャーした。
それを見たマイちゃんは笑顔で頷いて立ち上がった。
そして、二人は部屋から出て行った。
「……止めた方が良いかな?」
「放っておけ、これから暫く行動を共にするのだ。ガス抜きぐらいしてもいいだろう」
ガス抜きか。そんな軽い感じかな?
「それよりも、選ぶ者達を良く選んでおけよ。旅の最中にしょっちゅう喧嘩が起こるのは面倒だぞ」
「……善処します」
「善処では無く対処しろ」
「‥…はい」
ユエにそう言われて僕はそうとしか言えなかった。




