天城の心境
天城視点です。
オレが馬に乗り、戦場に向かっている最中に、敵の奇襲部隊が襲いかかって来た。
敵は鬼の姿をした一団で、共に戦場に向かう部隊と共に迎撃した。
オレは何人かの鬼を切り倒し、敵に倒されそうなクラスメートや部隊の人達を助けながら、奮戦した。
そんな戦闘中の最中で、突然甲高い音が聞こえてきた。
鬼たちはその音を聞いたら、オレ達に背向けて逃げ出した。
それを見たオレは、ここで見逃したら後々大変な事になると思い、皆に声を掛ける。
「敵が退いた。追撃するぞ!」
オレは馬を駆って、逃げる敵を追いかける。其の後を何人か続いた。
(何で、他の皆は付いてこないんだ?)
オレは馬で駆けながら思うが、後から付いて来る奴らも居るだろうと思い、オレは馬で駆ける。
そうして駆けていると、敵の背中が見えてきた。
「敵が見えた。このまま追撃して、敵を壊滅させるぞ!」
「「「おおおおおっ‼」」」
オレ達はそのまま敵を追いかける。
敵もオレ達が迫って来るのを分かったのか、走る速度を上げた。
だが、鬼の足が速くても、馬の足には敵わないようだ。段々、距離が迫ってきた。
後もう少しで、追い付くという所で、前方の道の左右に林があったが、敵はその林に逃げ込まず道なりに進む。
オレの剣が敵に当たる所まで近付き、振りかぶった瞬間。
ベキ、ベキベキベキッ!
オレの目の前に大きな木が倒れだした。
いきなり目の前に木が倒れたので、馬が驚いた悲鳴をあげながら前足を上げた。
前足をあげるので、オレは落馬しそうになったが、太腿に力を入れて馬体を締め付けて落ちないように頑張った。
馬が落ちついてきたようで、前足を下ろしその場を歩き回り興奮を冷ます。
オレは木が倒れた先の敵がもう見えない所まで行ってしまったので、もう追撃は出来ないと思った。
仕方がなく、戻ろうとクラスメート達に声を掛けようとしたら。
ベキベキベキッ‼
そんな音を立てながら、おれ達の後ろに木が倒れただした。
「これは⁈」
「敵の罠だったのか⁈」
「まずい。前も後ろも塞がれて、逃げる事が出来ない!」
オレ達は、道を塞がれ立ち往生してしまった。
それを見計らうかのように、火矢が飛んで来た。
狙いは適当だったので、オレ達には当たりはしなかったが、辺りの木に当たり燃えだした。
火は直ぐに燃え広がり、前後左右火の海だった。
「グガガガ、マンマト掛カルトハ、愚カナ人間共ダ」
矢が放たれた方向から、黒いローブを着たゴブリンが姿を現した。
「ゴブリンだ!」
「ローブ着ているぞ。もしかして、魔法が使えるのか?」
ゴブリンを見て、クラスメート達は自分の得物を構える。
俺も武器を構える。
「ググググ、引ッ掛カッタノハ、男ダケカ。女ガ入レバ楽シメタガイナケレバ、コノママ嬲リ殺シニシテヤルワ」
ローブをを着たゴブリンが手を挙げると、隠れていたゴブリン達が現れた。
そして、声をあげて襲いかかって来た。
オレ達も迎撃したが、敵の人数が多く辺りが火の海だったので、熱気で動きが阻害される。
「ぐわぁっ」
「ぎゃっ」
敵の数に押され、二人程やられ地面に倒れる。
だが、敵はその倒れたクラスメート達にも襲いかかり、何度も持っている得物で突き刺す。
「お、お前等ぁ!」
オレはクラスメート達を嬲り殺しにしているゴブリンに攻撃する。
その攻撃をくらいゴブリン達は倒れるか避けるかどちらかだった。
オレは倒れたクラスメートに駆け寄る。
「大丈夫か、しっかりしろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
オレが揺すっても反応もなく、目に光がなかった。
それでも、俺は何度も揺する。
「グギャアアアアッ!」
「っ、しまっ」
注意がそれて、敵の接近を許した。
(こんな所で、あの人にこの気持ちを言う事無く死ぬのか・・・・・・)
オレの中にある、一人の女性の気持ちが走馬灯のように振り返させる。
―――いつも遠くから見ているだけだった。
―――その綺麗な笑顔がオレの心を鷲掴みにした。
何時からだろう。その人を目で追うようになったのは。
いくら目で追っても、この気持ちは届かない事は分かっているのに、それでも目で追ってしまう。
何時だったか、冗談交じりで聞いた事がある。どんな人が好きですかと。
彼女ははにかみながらこう語った。
『う~ん、優しい人かな』
優しい人と言われて、オレはクラスメート達に男女問わず優しく接してみた。
中には、生理的に嫌な奴もいたが頑張った。
だが、そうゆう事をしても、その人はオレを見る事はなかった。
どうしたら、あの人は俺の気持ちに応えてくれるだろう考えていたら、一人の女が俺に近付き、こう囁く。
『天城、あの女が好きでしょう?』
『なっ、何を言っているんだ?』
『隠さなくていいから、そこでさ取引しない?』
『取引?』
『そう、あたしの取り巻きになってよ』
『何で俺がっ!』
『あんたは顔が良いから、あたしに近寄る蠅を追い払う役をしてほしいの』
『俺のメリットはなんだ?』
『あたしと親しくしていれば、あんたが狙っている人を落とすきっかけを作れるかもしれないし、あたしも手助けをしてあげる』
『・・・・・・本当だろな?』
『嘘だと思うなら、この話はなかった事になるだけよ』
そう言われて、俺は即答でそいつの取り巻きになる事に決めた。
『その話、受けてやる』
『取引成立ね』
『よろしく頼むぜ。真田』
『そっちこそ』
俺は真田と手を組んで、その人が俺の事を好きになるように頑張った。
だが、成果は一向に出ない。
悩んでいたら、クラスごと異世界に転移された。
そして、俺は思った。
(この世界で頑張れば、あの人もオレの事が好きになるかもしれない!)
そう思ったオレは、頑張った。
お蔭で、この国でも強力な武具を手に入れる事が出来た。
これで戦争で戦果をあげれば、きっとあの人もオレの事を見てくれると思い、敵の追撃をした。
結果、敵の手に掛かる所だ。
(せめて、死ぬ前にこの気持ちを伝えたかった・・・・・・・・椎名さん)
迫る敵の剣。周りのクラスメート達は、俺を見て何か叫んでいるかが聞こえない。
あと少しで敵の剣がオレの身体を切り裂くと言った所で。
「グボオオオッ!」
ゴブリンの身体に矢が刺さった。
「えっ?」
「生きていたか、天城」
その声は、西園寺!
俺は声をした方を見ると、竜騎兵団の人達と共に西園寺の姿を確認した。
「さい、おんじ?」
「諸々の事は後だ。今、助けてやる」
西園寺が剣を振りかぶる。
「『真空斬り』」
声と共に剣を振り下ろすと、剣から風が生まれ火を吹き消した。
よし、火が止んだ。これで逃げれる!
「皆、撤退だ!」
「ググググ、逃ガスナ。殺セ!」
オレともう一人を殿にして、残りは倒れたクラスメート達を背負ってもらい、西園寺達が居るところ向かってもらう。
竜騎兵団と西園寺が俺達の撤退を援護してくれた。
そのおかげで、敵は撃退できたが、オレと一緒に殿をしてくれたクラスメートが、敵の毒矢に当たり死んだ。
亡くなったクラスメート達の名前は次回の話で出ます。




