第59話 浦島太郎とは言わないけど、何か似たような気分だ。
「まったく、普段から落ち着きがない子だと思いましたが。ここまでするとは」
「・・・・・・すいません」
姉上が腕を組んでティナを叱っていた。
叱られているティナも今回は自分が悪いと分かっているので、言い訳も何も言わないで叱られている。
しかし、ティナもタイミングが悪いよな。
まさか僕達が悶絶している所に姉上達が来たのだからな。
悶えている僕達を見て、姉上が。
『な、何事です⁉ 平和なはずの街中で可愛い弟と妹の様に気に入っている子が悶えているなんて、病気? 誰か、医者を連れて来てなさい‼』
若干混乱していると思われる姉上であったが、どうして悶えているか一緒に付いてきたリリムが説明すると、直ぐに落ち着いてティアを叱りだした。
僕は叱られているティナを見ながら、腹をさすっていた。
「大丈夫ですか? 何処か痛めたりしていないですか?」
「・・・・・・」
リリムとプリアは腹をさすっている僕を見て心配してくれた。
「ああ、大丈夫。そんなに痛いというわけではないから」
当たった時は気を失いそうだったけど、今はそんなでもない。
「あ、あの、イザドラさんをあのまま怒ったままにさせて大丈夫ですか?」
叱られているティナを見て、竜人君が怯えながら訊ねて来た。
「いや、叱っているだけだから特に問題ないと思うけど?」
「えっ、でも、あの人。龍になってハノヴァンザ王国を攻め込んで来た人でしょう。あのままだったら、怒りのあまり龍になったりとかしないのですか?」
怒りのあまりに龍に変身するとか、姉上もしたことないんじゃないのか?
というか、姉上の姿を見るなり竜人君達がビクビクしているけど、どうして?
「姉上が何かした?」
「なにかって、あの知らないのですか? 僕達が王宮に引きこもる前に龍と戦った事」
「・・・・・・ああ」
そう言えば、そんな話があったっけ。
渡来人と戦ったのかと姉上に訊ねたけど。
『いえ、知りませんよ』
と言って来た。
恐らく、戦ったと言う記憶が残らない程に竜人君達があっさりと負けたから、記憶に残っていないのだろう
まぁ、負けた竜人君達はこれでもかと言うぐらいに心に刻まれたようだけど。
「大丈夫だよ。別にそんなに怒っている訳ではないから」
「分かるのですか?」
「うん。まぁ、家族だし」
というよりも、本当に怒っている時は尻尾で地面を叩いているからな。
今は尻尾で地面を叩いていないので、そんなに怒っていないようだ。
まぁ、ティナの事を気に入っているのもあるだろうな。
「という訳で、今後から気を付ける様に」
「はい。分かりました」
ようやく説教が終わったようだ。
「ティナ。店が移転したって聞いたけど、何処にあるの?」
「ああ、案内するわ。けど、その前に」
ティナは僕の傍に居るラミティーナさん、プリア、竜人君達を見る。
「この人達。だれ?」
ああ、其処から説明しないといけないのか。
「歩きながら説明するから、とりあえず、店に案内して」
「む~、ちゃんと説明しないさいよ」
僕は道すがら、副都に戻ってくる前に事を大まかに簡潔に分かりやすく説明した。
ラミティーナさんの立場と身分の事を説明すると、機嫌が悪くなるティナ。
しまいには、僕の尻を蹴って来た。何故?
ティナの案内の元、僕達は移転した『翔鳳商会』の店にきたのだけど。
「これは、また・・・・・・」
目の前にある店も大きかった。
何階建てのビルだと思われるぐらいの高さだ。そして、かなり広かった。
東京ドームとは言わないけど、国立競技場ぐらいの広さはあるんじゃあないのか。
ぼくの店に間違いはない。何せ、ユエから貰った看板が飾られているのだから。
驚くのは、其処だけは無い。その店の周りにも建物があったが、其処にも看板と同じマークが刻まれていた。
何の建物かは外からは分からないが、明らかに『翔鳳商会』に関係する建物だという事か分かる。
「・・・・・・ティナさん」
「なに? どうかしたの?」
「この区画に建っている建物は全て『翔鳳商会』に関係する建物という事でしょうか?」
「何を言っているの。そんなの当たり前でしょう。何の為にあのマークが付いていると思っているの?」
何を言ってるのだろうという顔をするティナ。
いやいや、僕が王国に連れていかれて、半年も経ってないんだよ。それなのに、区画を買い取る程の成長をするとか、普通に有り得ないでしょう。
僕が居ない間に何があった?




