第56話 何をしたのか気になる
優雅とは言わないが、空の旅を楽しんでいる僕達。
偶に姉上が暇だからと言って、抱き付いて来るのは面倒と思いながらも適当に相手をしていた。
そうしていると内に、そろそろ公国の領地に入る所まで来た。
この世界の国は領地と領海という考えはあっても、領空というものはないようだ。
何処かの国の領地の空を飛んでも抗議とか戦闘を仕掛けるという事をしてこなかった。
偶に何処まで行くのか監視をする部隊など居たが、何処にも攻撃をしてこない僕達を見て手を出したら不味いと思ったのかそれとも何もしてこないから無視が安全と判断されたのか分からないが、少し監視すると、その後は直ぐに見えなくなった。
最初、姉上が密かに攻撃したのかと思ったが、姉上も何もしていないと言うので、向こうの判断で監視を止めたのだろうと思われた。
監視がされなくなった事について姉上に尋ねると「わたしはそんなに好戦的ではありませんよ。失礼ですね。お詫びに抱き締めさせなさい」と言って来たが、適度にあしらった。
そうしたら、拗ねて文句を言ってきたが無視した。
それと「このまま公国に行っても問題ないでしょう。文句を言ってきたら戦争をすると言って脅せば良いでしょうし」
暴論過ぎると言って却下した。
そろそろ、村松さんが何かするのだろうと思い、村松さんの下に向かう。
「ああ、此処に居たんだ」
村松さんを探していると、ラウンジで茶を飲んでいた。
一人ではなくラミティーナさんと椎名さんと一緒に。
異色な組み合わせだな。変な事になってないのは、村松さんのお蔭か、それともラミティーナさんの話術が巧みだからか。
そんな思いを抱きながら、僕は三人の下に行く。
「あっ、リウイ君」
笑顔で振り返る椎名さん。
僕、後ろに居たのにどうして分かったんだ?
って、ああそうか。ラウンジの鏡に映ったのか。
いやぁ、良かった。半径数キロ内に入ると気配で分かるとか言われたら、正直どう反応すれば良いのか分からなかったからな。
「どうかしたのですか?」
「ああ、ちょっと村松さんに話があって」
僕がそう言うと椎名さんは面白くないという顔をするが無視する。
「ほぇ、わたし?」
何の用だろう?という顔をしている。
「あの、例の件はどうなったの?」
「例の件?」
首を傾げる村松さん。
おいおい。あそこまで自信満々に言っておいて、何もしてないとかないだろうな。
「この、船の件で」
「・・・・・・ああ、それね」
今分かった様な顔をする村松さん。
どうか、何もしてないとか言わないでください。
「この前、手紙を出したから大丈夫だよ。このまま副都の傍に降りても問題ないから」
「なん、だと・・・・・?」
手紙一つで問題ないって、何をしたんだ?
「何をしたか知りたい?」
ニヒヒと笑いながら訊ねる村松さん。
僕が首を縦に振るが。
「着いたら分かるよ~」
と言って意地悪そうな顔で笑いだした。
むうう、余計なにをしたのか気になるな。
でも、とりあえずこのまま副都に行っても問題はないのだろうと判断する。




