第52話 騙された⁉
試運転も兼ねた『門』の魔法を起動させて、そのままハノヴァンザ王国に帰還する事にした僕達。
母さん達については後で姉上に頼んでどんな様子か見に行ってもらおう。
で、『門』を起動させた。
「じゃあ、お預かりしますね」
「はい。お願いします」
僕の傍にはプリアが居る。
先程、ケニギンにプリアを貸してくれないかと頼んでみた。
ケニギンも外の世界を見るのは良い経験になるだろうと言う事で快諾してくれた。
プリアとケニギンは意識が繋がっているという話しだから、プリアが見たものはそのままケニギンも見る事が出来るという事になる。
また、『廃都』の近くには獣のアイゼンブルート族が居るという話が出ている。
ケニギンであれば話が通じる可能性もある。
「では、プリンツスエンアーヌル。無理はしない様に」
「・・・・・・」
ケニギンがそう言うと、プリアは分かったと言わんばかりに頷いた。
話したい事を終えたようで、ケニギンは僕を見る。
「その内喋れるようになると思いますので、その時は字を教えてあげて下さい」
「分かりました」
「リウイ。そろそろ」
姉上が準備が出来た様だ。
「じゃあ、また今度ね」
「お会いできるのを楽しみにしております」
ケニギンに別れの挨拶をして、僕達は『門』を潜った。
『門』を潜ったが、予想通りというか当然というか誰も出迎えに来なかった。
忙しいから仕方がないか。
兎も角、当初の予定は完了した。
「お疲れさまでした。リウイ様」
「ラミティーナさんもお付き合いして頂きありがとうございます」
「いえ、お気になさらずに。では、わたしはお祖母様に報告しにいきますので、これで」
ラミティーナさんが一礼して離れて行った。
ラミティーナさんが離れると、今度は姉上が近付いて来た。
「お疲れさまでした。リウイ。後はわたしの方で片付けておきますから、出立の日まで自由にしていいですよ」
「うん。分かった」
姉上がそう言うので、後の事は姉上に任せてとりあえず今、椎名さんがどうなっているのか知りたいので、僕はユエが居る所に向かった。
僕達はユエが居る部屋へと向かう。
その部屋の前に着くと、ノックすると。
『誰じゃ?』
この声は姉様? どうしてユエの部屋に?
気になるが答えないとな。
「僕です。リウイだよ」
『おお、リィンか。帰って来たのじゃな。入るが良い』
部屋の主はユエだと思ったが、そんな事よりも椎名さんがどんな状態か聞かないといけない。
そんな思いで頭が一杯だった。
ドアを開けて部屋の中に入ると。
「やぁ、リウイ殿。お早い御帰りであったな」
「手紙を出したのは、五日前であったな。ふむ、この方法では着くのが早い用じゃな」
「そうでしょう。どうです。魔国でも導入しては」
「ふむ。検討はしてみよう」
「ありがとうございます」
和やかに商売の話をする二人。
あれ? 何か二人共、随分と余裕そうだ。
「・・・・・・姉様」
「何じゃ?」
「椎名さんが今にも暴れそうな位に気が立っていると手紙に書かれていたのだけど、本当なの?」
「ああ、あれか。あれはな、・・・・・・嘘じゃ」
「嘘⁉」
「ちょっと、リィンを驚かそうと思ってな。ほっほほほ」
「上手く来ましたね」
ユエも楽しそうに笑い出した。
 




