第29話 僕の身内はそんなに見合いをさせたくなかったのか?
幸い椎名さんの暴走はそれなりに離れていたので、気付かれる事なくラミティーナさんを連れて別の中庭へと移動できた。
全く、姉上にも困ったものだ。
大方、椎名さんの暴走でお見合いをぶち壊して、そのまま婚約の有耶無耶にさせるつもりだったんだろう。
こっちにも事情があるのだから、こちらの事も考えて行動してほしいな。
と言ってもそんな事お構いなしか。
「こちらの中庭は少し趣が違いますね」
ラミティーナさんがそう言うので、庭を見てみると確かに違った。
先程まで居た庭は隅々まで手入れされた綺麗なお庭。
花も咲き頃の花だけあった。
この庭はと言うと手入れされているが、必要最低限の手入れしかされていないという感じであった。
石畳も剥がれている所があったり、壁の塗装も塗りかけの所もあった。
生えている木も加工すれば食べる事が出来る物ばかりだ。
何だ。此処は?
籠城になっても食べれる木を置いている庭なのか?
そう思っていると、向こう側の壁が派手な音を立てて壊れだした。
「何だ?」
「何事でしょうか?」
驚く僕達。其処に。
「どうした。クソ親父。しばらく見ない間に腕が落ちたのではないか?」
「戯言を。少し様子見を見ていたら調子を乗りおって」
突如として母さんと御祖父さんが戦いながら、この庭の中に入って来た。
「・・・・・何をしているんだよ。あの二人は」
頭が痛くなりそうだ。
「はぁ、ラサツキ家の家族交流はあのような事をするのですね」
「違います」
あんな家族交流を会うたびにしていたら、身体が持たないから。
「はああああっ」
「ふんんっ⁈」
周りが見えていないのか、二人は僕達に気付く事なく戦闘を続けていた。
これは止めるのは無理そうだな。
そう思っていると、ラミティーナさんが前に出た。
「家族でどんな交流するのは構いませんが、周りに事を気にしながらして欲しいですね」
そう言ってラミティーナさんは懐から何か取り出した。
それは何かの棒の様であった。
「起動」
何かを起動させるキーワードを言うと、その棒が変形しだした。
次の瞬間、棒がライトセイバーになった。
「おおおおっ」
「あの、そんなに珍しいですか?」
思わず声を上げると驚くラミティ―ナさん。
「すいません。初めて見る武器だったので」
「そうですか。でも、これは武器と同時にある物を起動させる鍵なんですよ」
「鍵?」
何かを起動させると言ったが、何を起動させるんだ。
「では、いきます」
ラミティーナさんがライトセイバーを振るいだした。
よく見ると、何かの陣を描いているようだ。
「『我が声に応えよ。降魔よ。此処に来たりて、我が意に従う軍となせ。 魔軍招来』」
詠唱を唱え終ると、陣が大きくなって其処から何かが出て来た。
それは手だが、生物の手では無く無機物で作られた手。
まるでゴーレムのようだ。
そして、出て来たのが人型の人形であった。
アイゼンブルート族に似ているけど、ちょっと違うな。
その人形が数十体でた。
「行きなさい」
ラミティーナさんがライトセイバーを振るうとその人形達は母さん達に向かっていった。




