閑話 不本意な同盟
今回は第三視点です
イザドラとの話を終えたユエと椎名は、部屋を出て空いている部屋に入った。
「「・・・・・・・・・・・・」」
二人は部屋に入っても一言も話さない。
時折、足を組み替えたり使用人に頼んだ茶を飲んでいた。
二人は目を合わせないで無言でいた。
「・・・・・・なぁ、椎名」
黙っているのが耐えられなかったのかユエが口を開いた。
「なに? 張さん」
「このままでは、リウイに好意を持つ者が軒並み増えそうではないか?」
「そうね。わたしとしてはわたしだけ見て欲しいとは思うけど、リウイ君はどうも気が多いようだから」
「気が多いか。あいつの場合、優柔不断だと思うがな」
「リウイ君は博愛主義だから仕方がないわ」
「ふん。しかし、このまま増えて行くのを見ているのも面白くはないとは思わないか?」
「其処は同感ね」
「しかしだ。わたしの長年の付き合いから言わせてもらうが、あいつは優しいから増える事はあっても減る事は無いだろうな」
ユエは断言した。
「それに昔に加えて、眉目秀麗と言える。前は前で腹を弄ったりして遊べたんだがな」
「前世の姿はポヨンポヨンしていて、頬を突っつきたくなったわね~」
椎名は前世のリウイの事を思い出したのか頬を赤らめる。
龍に生まれ変わっても、こいつの性根は変わらないなと思うユエ。
しかし、次の言葉を聞いて耳を疑った。
「まぁ、リウイ君の身体は何時でも見ようと思えば見れるのだけどね」
「っ⁉ どういう意味だ?」
「ああ、ごめんなさい。何でもないわ」
椎名は失言だと言わんばかりにに口を塞いだ。
それを見てユエは確信した。
「お前、やはりノブの遺体を隠し持っていたなっ」
「・・・・・・別に良いでしょう。あの時のわたしの力じゃあ、あの封印は解けなかったのだから、だから管理することにしたのよ」
「貴様がわたし達が長年掛けて探していた物を管理しただとっ」
ユエは血管を浮き上がらせる程の怒っていた。
そんなユエを見ても椎名は平然としていた。
「それは、貴方達がわたしの所に来なかっただけでしょう。真田さんが設立した傭兵部隊もわたしの所に来てないから知らないのも無理ないけど」
「・・・・・・まぁいい。今はそれよりも大事な事がある」
(後で椎名が居た山に人を送り込んでリウイの前世の遺体を回収させよう)
ユエがそう思う中。
「大事な事? 何かしら?」
椎名は微笑みながら別の事を考えていた。
(多分だけど、わたしが居た山に人を送り込むでしょうね。後で防衛手段でも考えておこうかしら)
「此処は協力体制を築こうではないか」
「協力? わたしと張さんが?」
椎名は意味不明な言葉を聞いたような顔をした。
「そうだ。わたしの故郷風に言えば呉越同舟というやつだ」
「ふ~ん。そう」
椎名は少し考え、手を差し出した。
「良いわ。リウイ君を振り向かせる為に協力してあげるわ」
「そうか。よろしく頼む」
ユエも手を出して握手した。
微笑みながら握手する二人。だが、此処の中では。
(今はこいつと手を結んで、少しでもノブの心をわたしに向く様に仕向けて、完全にわたしに虜になったら、こいつと手を切れば良い。くくく、その時を楽しみにしていろよ。椎名)
(まさか、不倶戴天の敵と思っていた人と手を結ぶなんて、世の中分からないわね。でも、それは今だけ、リウイ君がわたしの虜になったら、その時は・・・・・)
協力体制と結び微笑む二人。心の中では相手を出し抜く気満々であった。




