第9話 ああ、そう言えばそうだった
僕が竜人君を連れて行く事に、ユエ達はかなり不本意そうであったが諾してくれたので、一安心だ。
これで出立の準備が出来たら副都に寄って公都に行き、それから廃都に行く。
その後の事は竜人君達が決める事だ。
元の世界に戻るのか、それともこの世界に居るのか。
名前は忘れたがこの国の一番偉い魔術師の人が召喚魔法と共に送還魔法も記した魔術書を持っていた。
王都を脱出する際に、その魔術書を王宮図書室に持ち出し忘れた様で、竜人君達が図書室を探し回って見つける事に成功したので帰る方法については問題ない。
なので、問題は行く手段だ。
この国は四方を海で囲まれた島国だ。
船を乗り継いで行くという方法はあるが、あまりに時間が掛かるしそこから陸路で副都まで行くのかと思うと気が遠くなりそうだ。
どう考えても数ヶ月は掛かる行程だ。どうしたものか。
「リウイ。何を悩んでいるのですか?」
考え事に集中したいから半ば無視していた姉上が声を掛けて来た。
一人で考えても仕方がないし、姉上に話すか。
この姉は普段は凄い残念ではあるが、地頭も良いし頭の回転も速い。
良い知恵を出してくれるかもしれない。普段の行動を鑑みるにあまり期待しないが。
「竜人君達を連れて行く方法をどうしたらいいかなと思って」
「何だ。その事ですか」
相談された事があまりに些末な事と言わんばかりな態度を取る姉上。
その態度を取るのを見るに、何か考えでもあるのだろうか?
「簡単な事です。あのシイナという者は龍に成る事が出来るのですから、あの者に頼んで龍の背に乗って副都に行けばいいのですよ」
・・・・・・それは無理だろう。
龍月さんが天城君の姪っ子というだけでどうも嫌っている様だ。それに龍は滅多に自分の背に乗せる事はしない誇り高い魔獣と聞いている。
椎名さんも多分そうだろうな。
仮に僕が頼んでも引き受けてくれるかそうか分からないな。
「多分、無理だと思う」
「でしょうね」
姉上の言葉を聞いて、首を傾げる。
「龍は誇り高い魔獣です。自分が認めた者以外は決して背に載せないと言われています。多分、リウイが頼んでも無理でしょうね」
「じゃあ、何でそんな事を言ったの?」
「冗談です♪」
笑顔でそう言う姉上。
その顔を見ると、真面目に相談した僕が馬鹿みたいではないか。
心の中でそう思っているのが顔に出たのか、姉上は慌てて謝りだした。
「ごめんなさい。笑えませんでしたね。じゃあ、本当に良い手がありますよ」
「どんな手?」
今度ふざけた事を言ったら、暫くの間、口を利かないでやる。
「この国に飛行艇がある事は知っていますね」
「うん。というか、それでこの国まで運ばれたし」
「その飛空艇を一隻貰って副都に行けば良いのですよ」
「う~ん。成程」
悪くないな。問題は。
「貸してくれるかな?」
仮にも軍事機密なんだから貸してくれるかどうか分からない。
「貸すでは無く、貰うのですよ」
「貰う⁉ それってつまり」
「一隻ぐらい良いではないですか」
「いや、駄目だと思うけど?」
「大丈夫ですよ。リリアンの娘の婚約者になるのですよ。翻せば、いずれは王国の物すべてが貴方の物になるという事ですよ」
「そ、そうなるのかな?」
極論過ぎる気がする。
「兎も角、飛空艇で向かえば問題ないですから、それで行きましょうね」
「は~い」
姉上と一緒か。面倒な事をしないように注意しよう。




