閑話 惚れた弱みだね
セナ視点です。
リウイ君の二番目のお姉さんの介入により、わたし達は不本意だけどリウイ君が西園寺の坊ちゃんたちを連れて行く事を承諾した。
話し合いが終り、わたし達は部屋を出てチャンチャンが使っている部屋で話す事にした。
と言っても話す内容は無い。どちらかと言えば、チャンチャンの不満を聞くだけだ。
「ちいぃ、ノブの奴。生まれ変わってから、悪知恵が働く様になりおって・・・・・・」
部屋に入ると、椅子に座り親指の爪を噛むチャンチャン。
承諾した事が途轍もなく嫌だったのか、爪を噛む顔はとんでもなく不機嫌そうであった。
幾つになっても治らないね。嫌な事があると爪を噛む癖。
「まぁまぁ、決まったものは仕方がないじゃん。チャンチャン」
「分かってはいる。分かってはいるが、どうにもな・・・・・・」
頭では理解しているけど、心は納得してないって感じだね。こりゃ。
「って言ってもさ、先に認めたのはチャンチャンなんだよ。それなのに文句を言うのはどうかと思うけど」
「あの状況では誰かが先に折れるしかないだろうが。でないと、手切れでもされたら」
「まぁ、そう言われたらそうだね」
リウイ君本人を危険な所から遠ざける為に言って、その本人から縁を切られたら阿呆としか言えないしね。
「あいつはあそこがどれだけ危険な所か知らないから言えるんだ」
「ああ、うん、そうだね」
廃都。
元ヴァベリア王国の王都だった所。
国や人によっては『黄墟の都』ともいう。
廃墟な事と都の至る所にパイライトという見た目は金に似た鉱物で作られた事からそう言われている。
その都には様々な死人が混在しているだけではなく、獣の姿の鋼の魔獣が存在している。
生者が一歩でも踏み込めば二度と生きて帰る事は出来ない死の都。
そんな所に物見遊山気分で行きたいと言う者が居れば、自殺願望者としか思えない。
昔、何処かの国がその廃都を浄化ししかる後に領土にしようと攻め込んだ。神官戦士を中心にした精鋭軍を派遣したが、結果は軍の約半数を失うという結果となった。
それ以来、どの国もその廃都を攻め込もうという国は居なくなった。
廃都にあると思われる秘宝を求める冒険者。廃墟に居る死人達を浄化しようとする神官達などが毎年の乗り込むが、殆どの者達が帰らぬ人となる。
その為、廃都の死者は年々増えているのではと噂されている。
その証拠に廃都付近では都を出て徘徊する死人が頻繁に目撃されている。
「・・・・・・でもさ」
「何だ?」
「無理に駄目と言って縁を切られるよりも、一緒に行って行動を共にすれば、危険でなくなると思うよ。わたしは」
「・・・・・・ふん」
顔を背けるチャンチャン。
横顔しか見えないけど縁を切られるぐらいなら一緒に行った方がましだと書いてあった。
お互い面倒な人に惚れたね。
そう思い微笑んだ。
「何だ。その生暖かい目は?」
「べつに。ただ」
「ただ?」
「ただ、わたし達が好きな人って人が良いからほっとけないんだよね」
「・・・・・・そうだな」
同意とばかりにチャンチャンは優しく微笑んだ。




