第6話 条件付きだけど行ける事を話にいこう
ロゼ姉様の承諾を得たので、僕は竜人君達の下に行く事にした。
リリムの案内で僕と何故かイザドラ姉上が付いてきた。
「ふふ~ん、リウイと旅行に行くのは初めてかもしれませんね~」
楽しそうに鼻歌を歌いながら僕の後ろを歩く。
ああ、憂鬱だな。一日中抱き締めるんだろうな。
で、嫌がると鬱陶しいと思える位にしょんぼりするんだよな。
「リウイ様。顔色が悪いようですが。大丈夫ですか?」
「ああ、うん。大丈夫」
超が幾つも付く過保護の姉と暫く行動を共にすると分かって、テンションが上がる訳がない。
「はぁ、心中お察しします」
「ありがとう」
君も負けてない位に粘着質だけどねと思うが口には出さない。
言っても改める事しないだろうしね。
「此処です。此処に竜人という渡来人が居ます」
リリムがある部屋の前に止まる。
しかし、どうやってそんな情報を得たんだ?
気になりはするが、すんなりと教えてくれる気がしないな。
「リウイ様。どうぞ」
まぁ、今はそんな事よりも竜人君の方が大事だ。
リリムの事は頭の何処かに追いやり、僕はドアをノックした。
『誰かな?』
「竜人さん。リウイです。話があって来ました」
『ああ、リウイ殿か。少しお待ちを」
そう言って直ぐにドアが開いた。
「わざわざのお越し感謝します」
「いえ、そんなに離れてはいないから大丈夫です」
とは言ってもどの部屋に居るのかは言っておいて欲しかったとは思う。
「どうぞ。中へ。丁度、黒川と龍月とディアナが居ますので」
「それは好都合ですね。では」
僕はそう言って部屋に入る。その後を当然の様に姉上とリリムが続く。
部屋に入ると、備え付けのソファーに座っている黒川君達が居た。テーブルにある皿の上に乗っている菓子を食べながら何かを話していた。
部屋に入って来た僕達を見るなり、菓子を食べる手を止めた。
「うっす。お前、確かリウイだったよな?」
「はい。その通りです」
「話をしたメンバーの中で一番若いのが来たな。もしかして、年下だから貧乏くじでも引かされたか?はっははは」
黒川君はそう言って僕の背中をバシバシと叩く。
あまり力を入れてない様だが、地味に痛いな。
「無礼者。それ以上の狼藉は許しませんよ」
「不敬罪で殺されたいのかしら?」
そんな声が聞こえたと思ったら、姉上は黒川君の頭をアイアンクローをして、リリムは短刀を首筋に突き付けていた。
って、姉上は既に力を込めて今にも黒川君の頭を握り潰しそうだ。リリムの短刀は既に皮膚が切れているのか、血が流れていた。
「ストップ、ストツプ‼ 二人共、止めてくれない!?」
「「ですが」」
「止めてくれるかなっ。これじゃあ、話も出来ないからっ」
二人に止める様に強く言うと、二人は渋々だが手を引っ込めた。
「ああ、いてて、この世界に来て、それなりに身体能力が高くなったと思ったけど、今の二人の動きは全然見えなかったぜ」
ポケットからハンカチを出して、血が流れる首に当てて止血する。
「あなた。今、背中を叩いたの人は魔族の王族なのよ。馬鹿なの? ああ、ごめん馬鹿だったわね。本当に馬鹿に着ける薬はないわね」
綺麗な見た目で凄い毒を吐くディアナさん。
まるで、猫を被るのを止めた椎名さんみたいに見えるのは顔立ちが似ているからか?
「馬鹿は死んでも治らない。良い言葉ね」
おお、龍月さんも強烈な毒を吐いた。この二人、毒舌家だな。
「お前等、もう少し俺の事を気遣っても良いと思うが?」
「「何故、そんな事をしないといけないの?」」
二人にそう言われて、黒川君は落ち込んだ。
何か可哀そうに見える。
「ところで、リウイ君はどのような用で来たのかしら?」
「ああ、実はそちらの提案の事で話があって」
僕は空いているソファーに座ると、当然の様に姉上は隣に座り僕の後ろにリリムが立った。
いじけている黒川君を無視して、竜人君達は対面のソファーに座る。
「では、提案通りに公都と廃都にも行くと良いのか?」
「はい。条件付きですが」
「条件?」
「それはどんな?」
「第一に僕が案内役をするという事。第二に途中副都に寄る事、第三に」
僕は隣に居る姉上を指差す。
「僕の姉のイザドラ姉上も付いて行くと言う事です」
「その三つの条件に従うのであれば、案内してくれると」
「はい。そういう風に話を纏める事が出来ました」
まだ、ユエ達を説得終えてないが、出立までに説得できるだろう。
「ふむ。少し考えたいので返事は後日という事で良いか?」
「問題ありません」
ユエ達の説得もしないといけないからな。丁度いいと思いながら了承した。




